普通の小説家への道/夢を与える
夢を与える
綿矢りさ
- 夢を与える/綿矢 りさ
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幼いときに芸能界にスカウトされた女の子が、芸能界と関係を保ちつつ順調に育っていくものの、初めて彼ができてからだんだんとバランスを壊していく、という話。
母がフランス人と結婚するためにわざと妊娠したとか、フランス人の父がずっと不倫をしていてそれが非常に年上の人だったとか、主人公の起用されたCMが、本人の成長とともにほぼ永年撮影していくというCMだったとか、要所要所に面白いところがあるのですが、ストーリーも出ている人物も想像の範囲を超えない人たちばかりで、そういう意味では何を書きたかったかよく分からなかった作品でした。
唯一、そういうものかと思ったのは、男性の性についての女性の感じ方。
思い通りにならない彼氏との間について、
「男の子の性欲は規則正しくて、尽きたと思えばまたきちんと湧いてきて、なんて安心させてくれるものなんだろう」
なるほど、うまいことをいう。
あと、相変わらずタイトルはうまいですね。
『蹴りたい背中』といい『夢を与える』といい、ちょっと違和感を与えて、読むと納得というタイトルは秀逸です。
まぁ、時間が空いたとはいえ芥川賞受賞後第一作目。
結構小さなこだわりに固執して、なんだか変な作品になることが多い受賞後第一作目、ということなのか今までの、通常の人物設定のなかであらわれるリリカルな感性(蹴りたい背中 )は影をひそめてしまったように感じました。
その路線に戻るのか、それは若さゆえということで違う路線をいくのか、ただのうまい作家になってしまうのか、これから数冊が本当の力を試されるところですね。
しかし、いまでは同時受賞の金原ひとみ にずいぶん差をあけられてしまいましたね。