つかざるをえない嘘/第三の嘘
第三の嘘
アガタ・クリストフ
- 第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)/堀 茂樹
- ¥693
- Amazon.co.jp
一応完結作です。
前の2冊を読んでから読まないと、分かりづらいと思います。
『ふたりの証拠 』の最後で読者に提示された問題
「結局、双子ではなかったのか。すべては空想なのか」
に答える本です。
解説まで読んでしまったから言えることですが、
「双子の生活、というものを作り出さなければ行きぬいてこれなかった現実」
ということが主題だったんですね。
本書では、前二作を補完するように物語が進みます。
国境を越えたリュカと、国に留まり母と一緒のクラウス。
そのリュカの越境後と、街に戻ってきてクラウスを探す物語。
リュカとクラウスの再会、そして書き手の物語
前2作からうっすらと遊離しながら物語が編まれる様子が、これまでの作品がどうして生まれてきたかが分かるようになります。
戦時という異常な状況から、戦後、そして「戦後は終わった」という時期を得るに連れて、日常は平静平穏を取り戻しながら、主人公はうまくなじんでいくことができません。
戦争という穴凹にあわせて育った精神の凸は万能ではなく、徐々にその特殊性から破綻していき、間接的にその穴凹の深さが痛切に感じられます。
鳩よ!1995年8月号のアゴタ・クリストフへのインタビューで、 佐藤亜紀が書いているように
「<いつかいた場所>への帰還が現実にある土地への帰還などではなく、「第三の嘘」そのままに、想像と現実の合わせ鏡でできた迷路を辿って、本当はいるとも思っていない、もう1人との似もつかない自分に会いに行く、悪魔のような経験であることも、そうした読者にはわかるに違いない」
と、その想像の迷路の理由を的確に言い表しています。
「悪童日記」は、センセーショナルで独自の理性的な内容で
「ふたりの証拠」は、その理性の崩壊
「第三の嘘」は、その迷路全体の構造解析
という構成です。こんな構成になっている作品なんて他に知りません。
3冊読んで、薄い批評めいた感想だけで終わらずよかったですが、食べたことのない外国料理を口に突っ込まれたような困惑が残りました。