本にアレンジがあってもいいと思う/【新釈】走れメロス | できれば本に埋もれて眠りたい

本にアレンジがあってもいいと思う/【新釈】走れメロス

【新釈】走れメロス ほか4編
森見登美彦


新釈 走れメロス 他四篇/森見 登美彦
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限られた範囲で人気のある森見登美彦の作品を初めて読みました。

森見が気に入った作品を自分流に書き直した短編集です。

思っていたよりもくどくなく、軽くもなく、面白く読めました。
登場人物が関連した連作となっているのも、なかなか面白かったです。

山月記
あの中島敦の名作をアレンジしたものです。
トラになる進士を京大の学生にしたもので、主人公の救われない尊大さと目指す方向の正しさに心打たれます。

藪の中
芥川龍之介の作品ですが、原作は未読です。でも大体はしっているつもりです。
内容は大きく変わっていて「視点によって物語は大きく変わる」という部分だけ同じです。
うまいことつくってありますが、こういう構造で読ませるような小説は中身が薄くなりがちなのであまり好きではありません。本編もそうでした。

走れメロス
三島由紀夫の青春物語を完全にナンセンスパロディ化。
もちろん中身はないですが、ここまでナンセンスに徹すれば面白い。
頭を空っぽにして楽しめました。

桜の森の満開の下
坂口安吾の有名作品の雰囲気を借りたある作家の出世物語ですが、森美登美彦と重ねてみることができ、なかなか興味深くあります。山月記にもうまく絡み、自分の意志ではどうにもならない自分の感じが桜の様子と合わせ静かによく冷えて書かれています。

百物語
森鴎外の原書を未読のため、よくわかりませんが夏の暑さの不快感が他の何かと結びつく感じがよかったですが、無内容といえば無内容でした。

それぞれ雰囲気もあり、なかなか楽しく読むことができました。
モリミーファンは、山月記桜の森の満開の下は必見でしょう。
作者のわなかもしれませんが、それでもモリミー本人の一部が垣間見れるような気がします。

うまいなーと思いつつ、深さや内容に疑問がもたれました。
アレンジもここまで主題を自分のものにできたら、原典と比べてどちらがいいというのも無意味なものでしょう。
森見登美彦のチャレンジ精神に拍手を送りたいと思います。

ほかの作品も読みたくなりましたが、これを読んでイメージとあまり違わなかった分、新しい本に出会えるという感じではなくなってしまい、読みたいような読みたくないような。