だれが自分をほどくのか/赤目四十八瀧心中未遂
赤目四十八瀧心中未遂
車谷 長吉
- 車谷 長吉
- 赤目四十八瀧心中未遂
落ちぶれて大阪の尼崎に流れ着き、そこの安アパートで焼き鳥用の串を作る内職で糊口をしのぐ主人公。
女主人は因業だったり、まわりは連れ込み宿だったり、住人は彫師がいたり、美しいがやさぐれた女性がいたり。
そんな場末まで流れてきたのは主人公が自分との折り合いをつけられないせいで、「今の自分でいいのだろうか」という不安に付き合って、大学まで出たのにサラリーマンをやめ流浪し、金がなくなると他人の紹介されるがままに流れ流れて今の状況に落ちいった、そんな感じです。
この日本文学の私小説のオーソドックで書き尽くされたテーマをあえて今書いているところが新鮮です。
けして自分への自意識は捨てらず、外に変化を求め、変化が起こるための「なにか」が起こることを期待して、この苦境でさらに混乱の方向へ歯車は回っていきます。
はたからみると好き好んでの自作自演の自縄自縛状態で、どこをとっても救われる要素はありません。
しかしオーソドックスな自意識を扱いながらあまり深みは感じられないためかえって読みやすくなっており、ストーリーもそれなりにあるためリーダビリティはこの手の本にしては良好です。
車谷センセイの入門書にはいいのかもしれませんね(他の作品はあまり読んだことがありませんが)。
この自意識過剰のダメッぷりの底がどうなるか、興味があります。