6500km、1年の脱走
脱出記
スラヴォミール・ラヴイッツ
- スラヴォミール ラウイッツ, Slavomir Rawicz, 海津 正彦
- 脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち
第2次世界大戦勃発直前、ポーランド人の主人公はでたらめなスパイ容疑でソビエトに捕まり、シベリア送りになります。そこからの脱走の様子を描いたノンフィクションです。
凄まじいのは、収容所までの移動と脱出後の軌跡。
まずヤクーツク周辺の収容所までの移動は、極寒のシベリアを囚人服1枚で列車で、トラックで、歩きで行い、労働力として使える囚人の選別していました。
脱落するような弱い労働者はいらないということです。
その想像力の欠如が招いたような選別方法は、当時のソビエトの否人間性の一端を垣間見た気にさせられます。
そして脱走。
パンと手製ナイフと斧の頭のみの脱走で、ユーラシア大陸を縦断し、インドを目指すのです。
この、狂気ともいえる脱走を行う決断のバックボーンを考えると寒気がします。
脱走は何人かの仲間で行います。
みなで知恵を出し合いながら、途中魚をとり、シカを捕まえ皮をなめしたりしながら、国境へ。
そして十分な準備も認識もないままゴビ砂漠越え、ヒマラヤ越え。
そしてついてに訪れる・・・。
どんな冒険家も夢想だにしない、恐ろしい旅程です。
脱走した本人の筆なので、文章が上手いわけでもなく、結構さらっと日々のことが書いてあるのですが、無事インドについた跡、病院で精神的にまいってしまったり、さらに生涯に渡りその傷を背負ったりで、書いてある以上に本人がダメージを受けているのが分かります。
はじめはこんな環境でも人は生き延び前に進むことができるんだ、と簡単に考えていましたが、読んでいくうちに極限状態で傷ついてしまう精神のことを考えてしまうと、やっぱり無事じゃすまないのだな、と思い、今更ながら人をそういった目に合わせる体制や人に、怒りを感じました。
読みながらも読み終わった後も、もし自分だったら脱走したのだろうかと、ずっと考えていましたが、どうでしょうか。