宮崎駿の分かりにくいすごさ
- 宮崎 駿
- 風の帰る場所―ナウシカから千尋までの軌跡
映画をみているだけでそのすごさは十分わかりますが、では宮崎駿は何がすごいのかといわれれば、これがうまく言葉にできませんでした。
映画のよさはいくらでもいえるのですが、宮崎駿の発言を聴いていると、どうも映画だけでは語れない何かがあるらしい、そう思って手に取った本です。
しかし対談というのは、作る方には簡単なのですが、読むほうにとってはある程度バックボーンがないと読めないし、対談者同士の共通理解が抜けるため、好きではないですが、こういった忙しい人の場合は、まぁ仕方がないですね。
ここでは、まだ世界の宮崎になる前からの対談が入っているため、随分泥臭いことから始まります。
社会主義のこととか、学生運動のこととか、真剣に「理想」について考えていることから
南向きの家のディテールとか、ほうきにのって空を飛ぶことのディテールことまで
色々です。
これだけではあきたらず、Wikipedia で調べると、その驚異的な
「アニメーターとしての傑出した実力に加え、圧倒的な仕事量と厳格な自己管理能力」
とあるように仕事人としても傑出した人ということが分かります。
映画だけみていると、簡単に映画をつくる才能がある人、とだけ思ってしまいますが、いろいろ調べていくと
あの作品群を作るに足るディテールを積み重ねてきた人、と評価が変わり、むしろその圧倒的な量にめまいさえ覚えます。
作品を作るたびに「欠点ばかりが目にうつる」「作らなきゃよかった」と言う人ですが、強烈な自己批判能力と次への意欲の現れなのだと思いました。また、よくこれだけの作品をつくりながら「もうこんな大変なことはやりたくない」ともよくいっています。でも毎回自分をそれほど追い込む姿勢はえらいな、と思います。
漫画家、原作家、演出家、アニメーター、監督など複数の才能を併せ持つからこそ、今の作品群には完成したことを考え、天才と呼ぶにはあまりに実務的な、総合的な才能の結集に驚くとともにその行く末にも期待したいと思います。
