「日の名残り」ボタンの掛け違い | できれば本に埋もれて眠りたい

「日の名残り」ボタンの掛け違い

イシグロカズオ日の名残り
周囲の人やネットで見ていても「日の名残り」の評価がだいたい高いので驚いています。
読み方が悪かったのでしょうか。
なんの前情報もなく読み始め、執事の回顧録のような話と分かるといつのまにか、ロアルト・ダールの「あなたに似た人」のような痛烈な一撃があると思っていました。
実は、巨万の富を蓄えているとか。スパイであるとか。裏社会の権謀により主人を支えているとか。陳腐ですが。

その一貫して抑えた語り口調もたくらみがあってやっているに違いない。
そう、思っていたのですが・・・。

内容は、正当な執事と大英帝国の落日とほのかな恋を書いたものでした。
最後まで。

悩んでいます。

執事の実直な性格を通して描いた、人生の機微に通じたハートフルな小説か

大英帝国の夕日・本当に信じることができる執事・仕事人のこだわり・仕事人のふと見せる人間性などを描いたエンターテイメントか

実は、最後までたくらみをみせず、あえて退屈な執事をエンターテイメントに仕上げた非常に意地の悪い作品か

いや、もしかしたら、その3つをあわせたものかもしれない。

村上春樹にしてthe Novelといわしめたスコット・フィッツジェラルドのたとえば「グレート・ギャッツビー」が、理解できないように(「理解」といっている時点で間違っているような気がする)この作品もその範疇にはいるのかもしれません。

そういえば私は人生に美しさを求めたことはさほどないような気がします。
そういった部分に焦点を当てた小説なら、なるほど奇妙な違和感も理解でします。

最近思うのは、人によって求めるものが生来違うのだな、ということです。
たとえば、私自身には、本能の次に強い欲求は「知りたい」ということかな、と思っています。
それが人によっては「美」であったり「和」であったり、同じ気持ちはもっているものの、優先順位が違うのかなと。

ただそこに決定的な断絶があるわけではなく、優先順位の問題であるとも思うので、いずれ違うものも楽しめるのかな、と淡い期待も寄せています。

まだ時間がかかりそうですが。