ただマイヨ・ジョーヌのためでなく | できれば本に埋もれて眠りたい

ただマイヨ・ジョーヌのためでなく

自転車ロードレースで現在最強の王者といわれているランス・アームストロングの自伝。

まず、タイトルがいい。英文タイトル(It's Not About the Bike)もいいが和文もいい。
このタイトルと「僕は癌になることとツール・ド・フランスに優勝することを選ぶのなら癌になることを選ぶ」との筆者の言葉がこの本を端的に著しています。

鼻っ柱の強いテキサスの自転車小僧が、がむしゃらに自転車に乗り、レースに勝ち始め、自分の黄金期を迎えようとしているのを感じたときに自分が末期癌であることに気づきます。
化学治療を始めますが、体と精神に深いダメージを負うことになります。
それは、自転車しかない自分なのに、その自転車をあきらめるほどのダメージでした。
しかし、徐々に快復していきやがて自転車レースの最高峰「ツール・ド・フランス」を目指すようになります。

レースに向けての練習中、ただ毎日練習し、自分の力を感じていく日々、そのシンプルな生活様式に、彼は今までに感じたことのない充足感を得ます。

私はその雑念のない、一事に専念するシンプルなライフスタイルが実に魅力的に思えます。
人生は厄介な雑事の連続です。
それを、シンプルなライフスタイルに集約すること。
1つの目標ですね。

その後のランス・アームストロングは鬼のように強くなります。
本には競技中の駆け引き(スタジオジブリの「アンダルシアの夏」の原作者黒田硫黄はロードレースのことを「意地悪な大人のレース」といっています)やトップになる条件についてもかかれていて、単にロードレースの入門書としても十分面白く書かれています。

この本は、王者ランス・アームストロングへの興味ではなく、癌への興味ではなく、シンプルな生活の素晴らしさを言いたくなって、書評を書き始めた本でもあります。

シンプルな生活は、才能ではなく、成功への手段ではなく、生活していく上での方法であり目的なのかな、と思うこのごろです。