物語がとまらないポールオースター | できれば本に埋もれて眠りたい

物語がとまらないポールオースター

ムーンパレス:青春小説。若い主人公の自分勝手などうしようもなさを、本人も恋人も誰も止められない。構成は夏目漱石の「こころ」のように破綻しているが、ポールオースターの芳醇なストーリーと「自分をハンドリングできない」というテーマが結びついた記念碑的作品。
偶然の音楽:中途半端な遺産を相続した主人公が、車と賭博にのめり込んでいく。テーマがシンプルなだけに、底の見えない穴をのぞいたような恐ろしさを感じる。
リバイアサン:自由の女神像を破壊して回る人とその周辺の話。こちらも特殊な話な分、ストーリー性は高まるが、やはり闇は深い。それは、いくら年をとっても、かわらない。

ニューヨーク3部作といわれる「シティオブグラス」「幽霊たち」「鍵のかかった部屋」は、あまりにもストーリーが進展しないので僕にはしんどい。
そのあとの喪失の3部作(とでもいうのか)のほうが、読みやすく、ずっと闇の深さと広がりを感じられる。

思うにポールオースターという人はあふれるほどのストーリー性を持ちながら、初めにそこから離れることで作家としてやっていけるかの試金石としたのではないだろうか。
最近出た「ミスターヴァーゴ」は、空飛ぶ老人と少年のめくるめくストーリーの悲しい話だ。まるで禁じていたストーリー性を解き放ったような作品だ。

この作家も新作が待たれてしかるべきだろう。
ロバート・レッドフォードあたりが「リバイアサン」ぐらい映画化しないかな。
うーん。今のアメリカじゃ、むりっぽいか。