初の感想文はこちら、「八日目の蝉(著者:角田光代 解説:池澤夏樹 中公文庫)」です。
こちらは昔映画化されましたね。当時CMを見て「絶対に見よう!」と思っていたため印象に濃く残っており、書店で見かけて購入した本です。(因みに映画は見逃しました←)
【あらすじ】
元恋人の子供を誘拐してしまった主人公、希和子。小さな赤子を抱えながら、様々な女性達と出会い、そして助けられながら逃亡生活を送ることとなる。希和子の願いはただ一つ、「この子と生きていきたい」それだけだった。
【感想】
こちらの作品ですが、誘拐犯である希和子編と、誘拐された子供編の二部で分かれております。
先ずは希和子編から綴らせていただきます。
ひょんなことから元恋人の子供を誘拐してしまうというなんともインパクトのある場面から始まり、その子供との逃亡生活を描いているのですが、主人公、希和子の子供と一緒に生きていきたい、子供の母親として生きていきたいという気持ちが随所に感じられますね。
すくすくと育っていく子供と過ごす穏やかな日常と、いつ自分の正体がバレて子と引き剥がされるか不安に苛まれながらの逃亡劇…その落差に読んでいる私もヒヤヒヤしながらページをめくっておりました。
逃亡劇の緊迫感もすごかったのですが、子供と過ごす日常の描写がとても穏やかで暖かく、希和子が心から子供を愛し、子どもと共にある人生を望んでいたのを感じとりました。
そしてその逃亡劇は終わるのですが、その描写が意外にもあっさりしていて読んでいた時は拍子抜けしたのですが、実際になにかが終わる時って想像よりも突然であっさりとしているのかもしれないと考えると納得いく描写だったのかもしれません。
また逃亡劇終了の場面で希和子がなにか言った描写があるのですが、それが物語りの最後あたりに出てきた時はブワッと鳥肌立ちました。(良い意味で)
そして章が変わり、誘拐された子が主人公となります。
成長した彼女は母と思っていた人との強引な別れ、実家族との軋轢、そして周りの対応と好奇な視線により内向的な性格になり、自分の人生を傍観していました。
しかし、昔希和子との逃亡中に身を寄せた場所で仲良くなった女性との出会い、そしてとある事件(といっていいのかな?)を期に、自分の過去と未来に向き合うようになります。
とあるきっかけで主人公は女性と共に過去を巡る旅に出るのですが、その道中で主人公は元母であり誘拐犯である希和子と出くわすかもしれないと思い、女性に怒りを露わにするのですが…まぁその後の展開がめっちゃ泣けます…!
ここでちょっと横道に逸れます。そしてだいぶ口が悪くなりますので苦手な方は閲覧を控えるのお勧めします。
章が変わってからなんですが、希和子や主人公の父親と母親がまぁ腹が立ちます。
希和子は希和子でしっかりしろよ、おい!!ってなりますし、父親は父親で典型的な最低男だし、母親はまぁ若干やり過ぎなところはあるけど被害者だしな…って思っていたら同じ穴の狢だしで、もう正直いって読んでいてイライラしてました。途中まで「この本私には合わなかったかも」と思いましたが、先程述べた場面読んだ瞬間、「あぁこの本買ってよかった…」「この場面を読むために私はここまで読み進めたんだ…」って思いました。
先程もその場面だけを読み返したのですが、もうボロボロ涙が出ました。
たくさんの辛い経験から諦め、他人事のように自分の人生を眺める主人公が、自分の過去と未来に向き合い、自分の人生を生きようとしていること。そしてそれ故に恐怖し当たり散らす主人公を暖かく受け止める女性…もう一つ一つの文が暖かくて美しくて涙が止まりませんわ…。
お気に入りの文を載せたいところですが、是非とも皆さん自分の目で読んでもらいたいので舌を噛み締めて自重させてもらいます。
最後に希和子と主人公は再会するのかという点ですが…ここも伏せさせていただきます。
感じ方は人それぞれですので断言はできませんが、少なくとも私はこれが一番綺麗で納得いく終わり方だと思います。
そして最後の最後まで希和子の子供に対する愛情を感じることができました。
【まとめ】
前半は希和子の子に対する愛情、そして親子二人で過ごす穏やかな日々とハラハラドキドキの逃亡劇を楽しむことができます。
後半は大人達の言動に不快感を覚えるものの、読んでいてよかったと思えるほど感動し、そして最後はスッキリする終わり方で満足いく作品でした!
映画版はどうだったかわかりませんが、私は映画を見逃して逆によかったと思えるぐらい素晴らしい小説でした!
このような良作に出会えて感謝です。
感想を書くのは初めてですので、まとまりのない文章になってしまい申し訳ございませんでした。
そしてここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。