物心ついたらもう食いしん坊だった。

今でこそ摂生しないと命に関わるから、食べる事と同じくらい興味が持てる何かを探してるけど。

本音を言えば、食に勝るものはない。

読書も好きだけど、それは食べ物が満足にあった上での話。

そこはかっこつけずに正直に言う。

 

 

 

「次いつ食べられるかわからないからね・・・・」って常に思ってるのは、今を生きる日本人としていかがなものか、って我ながら思う。

命が危なくなるくらいの飢えなんて味わった事ないのに、いつもどこかでそう思ってる。

暫く食べられなくても大丈夫なくらい食い溜めしとかなきゃ、って気持ちがずっと消えない。

最近は朝ごはんをコーヒーだけにできるくらいには、気にならなくなってきたけど。

 

 

 

ヒッチコックは不安の強い幼少期を過ごして過食に走り、肥満児だった話を聞いた事がある。

気持ちわかるなぁ。

食べてる時って不安とか恐怖とか痛みとか、いろんな不快感が消えるからね。

夜中に食べるチーズオムレツは、一時期私の精神安定剤だった。

 

 

 

そういう事するから体壊したんだけど。

あの時暴食っていう選択肢がなかったら、私は今生きてたかな。

もしかしたら不安に押し潰されてダメだったかもしれない。

だから暴食は、すごくお世話になった事があってむげにできない悪友みたいな存在。

自分を傷めつけないストレス解消法を持ってる人は素直に尊敬するし、食べ物がなくてたくさんの命が奪われてる国がある事なんか思うと、ごめんなさい・・・・って一日ちょっとブルーになる。

 

 

 

そんな人たちが居るのに食べ過ぎで体壊したなんて、もしかしたら私は罰が当たったのかもしれない。

でも、罰が当たってもただでは起きない。

だってほら、心が穏やかなら、カリカリに焼いた厚揚げの端っこを食べてでも、人は心の底から幸せになれるって知ったから。

そういう自分で居られるように生活を調えるのが、自分にとって一番無理のない生き方だって解ったから。

 

 

 

 

 

 

 

このマンガ、何気なく読んだら涙が止まらない。

テレビ番組とか見てもわかる通り、今の日本は食べ物の話が一番罪のない、誰でも取っつける話題だと思われる事が多いのに。

みんな忘れかけてるけど、食べ物を手に入れるために、血の滲むような努力が必要だった頃があったんだよね。

 

 

 

八月に火垂るの墓とかしなくなって久しいよね。

私が子どもの頃はまだ、反戦もののドラマよくやってたよ。

戦争で痛い思いした人たちのメッセージを受け取りやすい時期に生まれて良かったと思ってる。

 

 

 

パンケーキもバナナジュースもポップコーンもタピオカも、戦争が起こったらなくなっちゃうんだよね、って。

戦争に行ってしまうお兄ちゃんを涙涙で見送る時、行ってくるねって、口に入れてもらった金平糖の味なんて、私は知らないけどさ。

選挙の時とか、だれもそんな思いしなくて済むような選択をしたいって、思わずにはいられないよ。

 

 

 

今日の晩ご飯は何にしようかな、って。

そんな事言っても、次のご飯が食べられる事を、そして何を食べるか選べる日がずっと続く事を、どこか信じてしまってる自分が居る。

それは今、実はすごく恵まれてる証拠だって事を改めて思い知らされた。

 

 

 

でも、まだ読んでもない本について、そういう説教臭い話だけされたんじゃ面白くないだろうから、ちょっと補足。

戦艦大和の中で作られてたラムネの話とか、にがりが手に入らなかった頃の豆腐の作り方とかね、物のない頃の生活の知恵みたいのも入ってて面白いよ。

人は逆境の中でも、なんとか食を楽しもうと模索してきたんだなって。

その力強さに、ちょっと勇気づけられた。