不安の強い子ども時代を過ごした。
よく居るでしょ。
大縄跳び、みんながぽんぽん入っていって跳んでるのに、まごまごしながら最後に入って引っかかっちゃう子。
私はそういう子だった。
もう少し大きくなって、私は恋をした。
バスケ部のキャプテンをしてる可愛い子で、ピアノも弾けて、成績も良くて、読書感想文はいつも入選しちゃうし、学級委員だった。
もし同じくらい私がなんでもできたとしても、この恋ははじめから行き止まりだ。
そう思っているのに、たまに彼女と一緒に帰れる日は、少しでも長く一緒に居たくて。
牛歩戦術がやめられなくて、やたらと歩くのが遅い人だと思われてた。
どうせ叶わない恋なら、って。
彼女に負けたくない一心で、寝る間も惜しんで勉強した。
努力の仕方がなんだか変だ。
グレる事もできないのか私は、と思った。
社会人になって一度だけ、彼女に会った事がある。
彼女は学校の先生になっていた。
彼女にぴったりだな、と思った。
一緒に喫茶店に入ってお茶をしながら話し始めると、彼女は契約社員として働いている私に「そんなだれでもできる仕事辞めなよ」と言った。
やっと恋が終わった、と思った。
今私は彼女がどこでどうしているか知らないけれど、知りたいと思わなくなった。
それでも学生の頃の、あの片思いの事は忘れない。
彼女が居たから勉強を頑張れた。
彼女が居たから、いろんな気持ちが知りたくて、本もたくさん読んだ。
この本を、彼女に片思いしてた頃に読みたかった。