これは、以前出版された自伝作『ハイスクール1968』(新潮社)の続編にあたる。前作をとても面白く読んだのにも関わらず、その続編が出ていることには全く気づかずにいた。さっそく購入して読んだところだ。
前作の『ハイスクール』は彼の高校から大学入学までの話なのだが、そこに出てくるのは、およそ自分の身の回りにはいない(そして、自分自身もまったくそんな人間ではない)ような、早熟で(多少、自意識過剰ぎみともいえるが)、勉強もでき、読書家で、仲間も多い高校生であった。自分には足元にもおよばないほどの読書量、見た映画の本数も半端ではない。そして、その克明な記憶・記録にも驚かされる。また、高校からして進学校なので、当時の同級生たちもその後、多くが各界で活躍する有名人となっている。当時の進学校に通う高校生たちがどんな"生態”だったのか、ということへの関心も手伝ってとても興味深く読んだ。
もともと四方田犬彦の本は、好きだったのでほかにもいくつか読んでいたが、この『ハイスクール』は特に面白かった。今回読んだ『歳月の鉛』はその続きで、著者が大学に入学してから大学院を出るまでの話だ。
読み終えて、どうして自分はこの2冊の本を面白いと感じたのか考えてみた。もちろん、当時の著者の考えや世相などがわかって面白い、というのもあるのだが、一番大きいのはこれだ。色々な本や人名、映画などの固有名詞が出てくるから。そういった固有名詞を知るだけでも、面白いのだ。その大半を、知識不足の自分は知らないのだが、そういう世界が広がっているということを垣間見られるだけでもとても面白い。そして、自分もこの先読んでみたいと思うのだ。まぁ、言ってしまうと単純に「自分のあたまがよくなったような気がするから」だ。
大学院を出たあと、日本語講師として韓国の大学へ赴任するのだが、もしさらにこの次回作が書かれるとしたら、この部分から始まるのだろう。それもまた、読んでみたい。
今回、内ゲバについて書かれている部分があるが、どう考えてみても、大学構内や"キャンパスライフ”謳歌中に殺人やリンチといったことが入り込んでくるような状況を、自分の学生時代を振り返ってみても想像できない。
初めて四方田犬彦の本を読んだのは『大好きな韓国』(ポプラ社)か『ソウルの風景』(岩波新書)だったと思う。NHK教育で「大好きな韓国」というのをやっていて、四方田を知ったような気がする。自分も韓国に滞在していたことはあるが、日本と韓国を行き来する女性の中に化粧を"日本風”"韓国風”と変えている人がいるのには驚いた。自分も女性だったら、ちょっと試してみたいと思った。
読んだ本がみんな面白かったわけではない。『人間を守る読書』(文春新書)は、彼が色々な媒体に書いた文章を集めたものだということを知らずに読み始めたこともあるが、読書が「人間を守る」ものなのだ、ということには特に言及がなかった。ただ、ひとついい言葉を覚えた。中国の古い言葉だという。
「三日本を読まないと、下に棘(とげ)が生える」
この感覚は理解できる。この表現も、うまい。