突然変異は塩基配列に生じた変化であることが分かった。たとえばサハラ砂漠以南の中央アフリカでは、人の赤血球を鎌状に変化させる突然変異が知られているが、この突然変異遺伝子は正常な遺伝子の塩基配列の中のただ1個の塩基の変化、すなわちAがTに塩化したことによって生じた突然変異であることが明らかにされた。塩基の置換と呼ばれる。

 塩基が欠落することによっても突然変異が起こる。塩基の欠失と呼ばれるが、置換と違ってその影響は塩基以降にあるコドンの読み枠をすべて変えてしまう。たとえば・・・・CAA・AAA・CAA・AAA・・・・によって指定されるアミノ酸はグルタミン・リジン・グルタミン・リジンであるが、ここで2番目のコドンAAAの3番目のAが欠失すると、・・・・CAA・AAC・AAA・AA・・・に変化し、合成されるアミノ酸はグルタミン・アスパラギン・リジンに変化する。もちろんこれ以降のコドンも変化する。欠損と逆に新たに塩基が付け加わって生じる突然変異、塩基の挿入と呼ばれるが、この場合も欠失同様、それ以降のコドンの読み枠を変えてしまう。

 塩基配列に生じた事故は、通常DNAの修復メカニズムが働いて修復される。しかし異変がそのまま次の世代に伝えられることもある。このほかに転移因子が染色体のある部位から別の部位にジャンプし、そこに割り込んで塩基配列を乱し、突然変異を誘発することも知られている。

 既存の遺伝子と塩基配列が高度に類似している領域がゲノムの中に存在することも明らかにした。相同性が明確に認められるにもかかわらず、遺伝子としての機能を失っている。偽遺伝子と呼ばれている。その多くは遺伝子が重複複製した結果生じたものである。哺乳類の嗅覚器官にはにおい物質を受容するたんぱく質があるが、このタンパク質の遺伝子にはたくさんの偽遺伝子が存在し、霊長類ではその数1,000個にも及ぶ。極端な場合はゲノム全体が複製され、重複して存在することが見出されている。重複が新可児重要な役割を演じる可能性も考えられる。生物は遺伝子の重複前の機能を維持しつつ、重複した遺伝子で新しい突然変異を試行できる。塩基配列の重複はヒトでがゲノムのおよそ5%に及ぶ。

 

 ゲノム解析は、注目する遺伝子の塩基配列を比較することによって、種間の類縁関係を推定することが可能になる。A種とB種の注目する塩基配列がただ1か所だけ違って、一方C種の塩基配列にはA,B領主と異なる塩基が3個あるとしよう。これからA種とB種は比較的最近、共通の祖先種から分岐した近縁種であること、またC種はA種とB種が分岐する前にA,B両種の共通の祖先から分岐したことが推測される。

 

 

 同一のアミノ酸を指定するコドンが複数存在する。そのためコドンの塩基に置換が起こった場合でも、それがアミノ酸の置換を引き起こさない同義的置換が多数存在する。したがって表現型が同じ個体同士の間でも、DNAの塩基配列レベルに違いが存在することは珍しくない。マウスとショウジョウバエ、両社にHox遺伝子と呼ばれる遺伝子が共通していることが分かっている。体軸に沿っていくつかの組織や器官を、一定の方式にしたがって形成することにかかわっている重要な遺伝子、脊椎動物と無脊椎動物の共通の祖先から分岐したことを示す。

 アミノ酸と遺伝子の塩基に起こる変異は確率的現象であるがゆえに、変異塩基の数が多いほど、その種と種が分岐したあとの経過時間が長いことになる。

 

 

 生体膜に分布するシトロクロムCというタンパク質は、エネルギーの代謝などにかかわる重要なタンパク質で多くの動物に広く共有されている。つまり比較する動物の分岐後の時間が長いほど、両社のシトクロムCのヌクレオチド置換数は多くなる。タンパク質の機能は、その個体にどれくらい重要な効果を及ぼすかによって置換率、つまり分子進化速度が異なる。一般にその効果が大きいほど進化速度は遅くなる。異変個体の生存或いは生殖に与える影響が重大であるほど、その変異は自然淘汰によって排除される可能性が高く、その変異タンパク質が自然淘汰によって排除された場合、突然変異は起こらなかったと認識され、それに基づく推定進化速度はその分遅くなる。一例をあげれば、10億年あたりのアミノ酸置換速度は、血液タンパク質のフィブリノチドで9.0個、インシュリンで1.0個、シトクロムCで0.3個である。極めて重要な機能を担っているヒストンⅣというたんぱく質ではその値は0.006個である。

 

 脊椎動物の初期胚発生、魚類から両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類の多様な分類群に驚くほどよく似た発生過程を認めることができる。鰓裂(さいれつ、えらの原理)、尾など。これらの事実は魚類から始まる全脊椎動物が、鰓や尾をもつ共通の祖先に由来することを示す有力な系統発生学的証拠である。

 ショウジョウバエでは受精卵の発生は卵のどちらが前(頭)でどちらが後ろ(尾)か、決定から始まるが、これは母性効果遺伝子と呼ばれる遺伝子によって決定される。ついでギャップ遺伝子、ペアルール遺伝子、セグメントポラリティ遺伝子と呼ばれる遺伝子が次々に発言して胚は頭部、胸部、腹部の3つの部分に分節化される。その後各部の分節はさらに進み、胸腹部は最終的には11の体節に分節が形成される。このあと各体節は、それぞれの部位に特徴的な体節へと分化する。このような体節の特殊化を誘導するのがホメオティック遺伝子。ショウジョウバエでは、ホメオティック遺伝子はアンテノペディア複合体とバイソラックス複合体と呼ばれる2つの複合体を形成して存在する。例えばバイソラック複合体の中のUbxと命名された遺伝子が突然変異で後胸に発現すると、平均棍に代わって翅が発生する。その結果後胸は中胸化し、2対4の翅をもつ双胸(バイソラックス)のハエが発生する。同様に頭部のアンテノペディア(Antp)複合体の中のアンテノペディア遺伝子に突然変異が生じると、触覚が足に置き換わり、頭部に足が生えたハエが発生する。

 ホメオティック遺伝子の多くが他の多くの遺伝子の発現を制御する位置にあたる調整遺伝子である。下層に位置する複数の遺伝子の発現を促したり或いは抑制する遺伝子。ホメオティック遺伝子は海綿動物を除くすべての動物に確認されている。

 

 扁形動物の単純な目から脊椎動物の高度に発達した眼まで、あらゆる種類の動物の目の形成にかかわっているパックス6遺伝子という遺伝子も明らかになっている。眼の進化は過去に1回だけ微生物において起こり、それが動物に取り込まれて最終的に現在の無脊椎動物と脊髄動物の目に進化した、と考えている。

 

 1900年当時、北米の西部中央の平原には、およそ1億羽ものソウゲンライチョウが生息、1990年にわずかに50羽未満。DNAを比較したところ、遺伝的変異のほとんどが失われ、遺伝的多様性が著しく減少していることが分かった。

 たとえば、100頭の個体からなるある動物の集団で、個体の10頭に2頭の割合で遺伝的変異が存在するならば、この集団には20個の変異が存在することになる。この集団の個体数が10頭に急減したとしよう。これに伴って遺伝的変異も2個に急減する。つまり大半の対立遺伝子は失われる。またこれに伴ってごく少数の対立遺伝子の手段における頻度は急増し、場合によってはその集団の唯一の対立遺伝子となることもありうる。ビン首効果(ボトルネック効果)として知られている。人間でいえばたとえばアメリカのキリスト教の一派であるアーミッシュ派のように特定の進行に対する想いから、少人数の集団が他との社会的交流を断ち、このような場合もビン首効果と同じく任意の対立遺伝子の頻度が急増することがある。人間の場合のビン首効果は特に創始者効果と呼ばれる。その結果偶然的に頻度が増加した対立遺伝子は世代を超えて継承されていく。ビン首効果による任意の対立遺伝子の頻度増加は進化とみなされる。このように偶然による対立遺伝子の頻度変化は遺伝的浮動と呼ばれる。

 

 静岡県の三島市にある国立遺伝学研究所の木村資生(もとお)、ヘモグロビンのアミノ酸配列、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ、ウサギなどをアミノ酸の置換数を種間で比較した。その置換速度をDNAの塩基(ヌクレオチド)の置換速度に換算し、それからゲノム全体で1塩基が置換するのに要する時間は平均でおよそ1.8年と算出。哺乳類の進化の中では、平均してわずか2年弱で1個の塩基が他の塩基に置き換わるというこの進化速度は驚くべき速さである。それまで塩基の置換は大まかに見て300世代に1回と推定されていた。哺乳類の一世代の時間を平均4年とすれば1200年位相当するが、木村が得た進化速度は異常な速さであった。

 自然淘汰によって後代ではその対立遺伝子は検出されない。その結果塩基の置換速度は実際よりも遅く見積もられていたことになる。木村は自分が得たヌクレオチドの早い置換速度は、これらのムクレオチドの置換によって引き起こされたほとんどの突然変異が、自然淘汰のっ選択作用をすり抜けてきたためではないだろうか、という考えに行きついた

 木村はこの有利でも不利でもない突然変異に注目し、勇利絵も不利でもないがゆえに自然淘汰の選択作用をすり抜けて後代に継承されると考えたのだ。そして中立的な突然変異が次代に伝えられるかどうかは、まったくの偶然できまる、すまり遺伝的浮動の原理に従って受け継がれるとした。偶然的な遺伝子的浮動によって生物の進化、研究者の間で肯定的に受け取られていた。たとえば前述したように、アメリカではある宗教会派の人たち、6本指の遺伝子や短い手足の遺伝子の頻度が一般社会に比べて高いことがわかっている。木村の中立説には合理的裏付けがあった。図14Eに示した遺伝暗号表で、同じアミノ酸を指定するコドンが複数ある場合、コドンの構成延期の一つが別の塩基に置換されても、それによって合成されるたんぱく質のアミノ酸配列には何の変化も起こらない。中立的変異で自然淘汰の選択を容易にすり抜けるはず。アミノ酸の置換を引き起こす塩基置換は非同義的置換と呼ばれるが、その変異がもしタンパク質の機能にとって必ずしも重要でない部位に起こった置換であれば、たんぱく質の機能は維持され、こrまた自然淘汰の選択をすり抜ける可能性がある。同義的塩基置換の速度は非同義的塩基置換速度に比べ、自然淘汰の選択を受けない分早いことが予測されるが、これはマウスとラットのタンパク質の研究で確かめられた。マウスとラットの調べた20,487個の99.8%に及ぶ。このことは、これらのタンパク質は中立進化によって進化してきたことを示す。偽遺伝子もまた、自然淘汰の対象にならないので、遺伝子の進化速度がより速いことが確かめられている。自然淘汰上の不利益をもたらす場合でも、もしその不利益が他の要因によって保管される場合は、進化しうることも知られている。大抵の哺乳類はビタミンCを自身の体内で合成することが出来る。ところが、ヒト、サル、ゾウ、モルモット、コウモリなどの動物はこのビタミンを合成できない。人ではビタミンCを合成するために不可欠な酵素の遺伝子が突然変異によって偽遺伝子化したため。実はビタミンCは果実や野菜など、人の祖先の生息環境に豊富に存在している。このためこの遺伝子欠陥はビタミンCの外部摂取によって補完される。退化して機能を失った器官では、仮に本来の機能的な形質を発言できない変異を起こしたとしても、遺伝的浮動によって維持される可能性がある。たとえば多くの動物の体表部の色や波紋などの進化にも中立進化が関わっている可能性がある。モンシロチョウもその一例、特に中央部に2つの丸い波紋は個体差が大きく、飛翔しているときは1秒間に7-8回の速さで羽ばたく、恐らくモンシロチョウでも検出無理だろう、また静止するときは背面の波紋は外から見えない。

 

 投稿論文は審査員の厳しい審査を受け、評価される。曲解に基づくコメントや嫌がらせとしか思えない理不尽なコメントがつくことも珍しくない。手ぐすね引いて論文潰しを試みる審査員がいたとしても不思議ではない。

 

 神経系、構造や器官、それらを収納する体全体の作りは体の基本体制またはボディプランと呼ばれる。動物界に認めらえれるもっとも基本的なボディプランは、二胚葉で放射相称か三杯葉で左右相称の2つしかない。前者は膣腸動物だけでその数はごく少数。一方後者はほとんどすべてを含む。三胚葉左右相称動物は口の発生過程の違いによって、前口動物と後口動物の2大グループに分けられる。わずか3つの特徴によってこれほど多くの種がくくられていることは、真に驚嘆すべきことであろう。

 

 ボディプランが出現した時期はきわめて古い、5億4500年余前のカンブリア紀以前に出現し、その後進化した動物に受け継がれてきた。

 完全変態の昆虫では後胚発生を経過する。この発生学的ボディプラン、少なくともおよそ3億6000万~3億年前の石炭期のころに遡ると推測。完全変態のボディプランは少なくとも3億年余前から変わることなく維持されてきたことになろう。

 生物のもっとも根本的ボディプランは、30数億年の過去に原核生物が誕生した時に一度だけ進化し、その後地球生物のすべてに継承され、変わることなく維持されてきたことを示唆する。換言すれば完成以来、実質的に進化を停止してきたことを意味する。

 では、動物はいかにして多種多様化したか。それはボディプランの上に付加された期間など非ボディプラン部位の多様化によってもたらされた。ではボディプランの変更は何故困難なのか、反対に非ボディプランは何故比較的容易に変化できるのか、自動車に喩えて説明しよう。車台の変更は簡単ではない、これに対し車体は可能。現生の動物は、走行機能が最大になるように技術的に磨き上げられた車台同様、そのボディプランは生存と生殖の機能が最大になるように磨き上げられていると考えられる。従ってボディプランに手を加えることは、通常生物の生存、生殖機能を減ずると推測される。ボディプランはもうひとつの生きた化石といえよう。

 

 ある種の遺伝的変異は多種の個体へと種をまたいで移動することがある。例えばメッセンジャーRNAがウイルスに取り込まれ、そのウイルスが他の個体に感染したあと、逆転写酵素によってその個体の生殖細胞に取り込まれれば、遺伝情報の水平感染が実現する。またDNAが直接的に水平感染する可能性もある。取り込まれた遺伝子が、取り込んだ側に有益であれば、その個体の適応度が上昇し、進化がおこる。

 単細胞生物で見られる遺伝子の水平伝搬のひとつは形質導入である。細菌感染性のウイルス(バクテリアファージ)が薬剤抵抗性など宿主細菌の遺伝形質を支配する遺伝子を取り込み、他の細菌に感染した時にそれを宿主細菌に持ち込むことによって遺伝子の水平伝搬が起こる。こうして薬剤抵抗性を獲得した最近は個体数を増やし、進化する。

 形質導入や形質転換が観察される単細胞生物は、地球上のありとあらゆる場所に、大量に進出している。単細胞生物で酵素を発生するなど、初期生物の進化に大きな影響を与えたシアノバクテリアという単細胞生物は、海の中に10の27乗個も生息していると推測されている。肥えた森林の土壌わずか1gの中には推定1億個の原核生物が含まれている。特に細胞間や種間の境界が今ほど明確ではなかった生命の歴史の初期においてあ、ウイルスによる遺伝子の水平伝搬に加え、単細胞間の直接的形質転換も高頻度で起こっていた可能性は十分あるだろう。

 単細胞生物は多細胞生物に比べて繁殖速度が格段に速い。条件がいいと20分に1回の速度で分裂し、1時間で最大8個に増殖する。1個の大腸菌は1日で2の72乗個もの大腸菌を生み出すことになる。この旺盛な繁殖は、その分高い頻度で突然変異が発生することを意味する。換言すれば単細胞の世界では、多数の突然変異が頻発し、大量の突然変異が常に供給されていると考えられる。

 原核細胞の時代、生物界はありとあらゆる変異を持った無数の単細胞生物で満ち溢れ、ひしめき合っていた。そしてそれら無数の単細胞生物は、やはり膨大な数のウイルスを介して互いの間で遺伝子を交換していたと考えらえれる。形質転移を通した遺伝子の水平伝搬も頻繁に起こっていただろう。このような想定に立てば、100度を超える高温や、高い酸性、あるいは高濃度の塩分環境にも耐える生物の進化も、決して特別なことではなかっただろう。

 進化にとって、形質導入や形質転換は、突然変異が生み出す変異に比べてより大きな意味を持つ。なぜなら突然変異で生じる変異はほとんど意味のない変異で、自然淘汰によって味方されるような適応的な遺伝子が生じる可能性はきわめて小さいからである。これに比べ形質導入や形質転換は、すでに機能している遺伝子を獲得する可能性がある点、注目に値する。

 

 形質導入や形質転換よりさらに進化に対して劇的な効果をもたらすのは共生である。ミトコンドリアや葉緑体のような共生体による細胞内(双利)共生である。これらの細胞器官はかつて独立した単細胞生物で、他の細胞に共生したあと、現在の細胞器官になったと考えられている。すなわちミトコンドリアと葉緑体は、そのゲノムを丸ごと保持したまま他の細胞に入り込み、そこで宿主細胞との共生関係を確立した。これによって宿主細胞は自然淘汰上、他を圧倒する有利な形質を手に入れた。

 昆虫の10%は何らかの微生物と共生している。共生微生物を収納するための菌細胞という特別な巨大細胞が発達している。菌細胞内の共生微生物はやがてそこから出て卵に入り込む。そして宿主の生殖を通し、経卵伝染で次世代の昆虫個体に移り住む。昆虫から共生微生物を取り去ると、昆虫は発育障害と増殖力の顕著な低下に見舞われる。共生微生物はたとえばビタミン類、アミノ酸、長鎖脂肪酸など昆虫に不可欠な物質を生産し、それを昆虫に提供していると感がられる。また昆虫の胚は共生微生物と共存していないと、胚の一部が欠損するが、これは共生体が胚の少なくとも特定部位の発生に不可欠であること示す。研究者の中には共生微生物が、ミトコンドリアや葉緑体に次ぐ第三の細胞器官になる可能性に期待を寄せている人もいる。

 ドウジャルダンムマムシという小さなクマムシ、ゲノムを解析したところ実に遺伝子の6分の1が他の生物からの水平伝搬によってもたらされたことが判明。16%は細菌、0.7%は菌類、0.5%は植物、0.1%は古細菌、さらに0.1%はウイルスからそれぞれ水平伝搬によってもたらされたことが明らかになった。

 遺伝子の水平伝搬は、多細胞生物の間では花粉や精子など、生殖細胞を介して行われる。多細胞生物間の遺伝子水平伝搬は単細胞生物のそれに比べれば、その発生頻度ははるかに低い。しかしそれでも植物では種間交雑は珍しいことではない。動物の種間雑種は決して珍しい事ではなく、広範囲の分類群で無視できないレベルで知られている。

 

 水平伝搬が従来考えられていたのより広くいきわたっている可能性、このことを考慮すると、系統樹の形は大きく変更を迫られる。実際アメリカの生物の教科書ではこれらを反映した新しい網目状の系統樹が採用されている。

 

 

 異種間交尾、誤りを犯すのは常に雄だった。雄が同種の雌とは異なる相手に対して交尾行動を仕掛けるのは、実効性比が雄に大きく偏っている事から容易に想像できる。オスにとって重要なことは、少しでも配偶者の可能性がある相手に対しては躊躇することなく交尾を試みることであり、そのような性質こそが雄に要求される重要な性質といえよう。子1個あたり遺伝量は0.5、この観点から見ると、同種の雌であろうと、異種の雌を介した雑種ルートであろうと構わないはず。

 

 これまで大規模な絶滅は5回起こっている。古生代のオルドビス紀末期、デボン紀末期、ペルム紀末期、中生代の三畳紀末期、及び白亜紀末期。このうち最大の絶滅は、2億5000万年前のペルム紀末期に起こった絶滅。絶滅をもたらしたのは火山の大噴火で、地球全体が寒冷化した。その結果当時生息していた海生無脊椎動物の90-96%が消滅した。また爬虫類と両生類の科の3分の2が消滅した。他の大絶滅時に絶滅を逃れた昆虫が、相当数絶滅の洗礼を受けたのはことのきだけ。動物の絶滅から回復には700万年の時間が必要だった。

 恐竜を絶滅に招いたのは、地球外から飛来した小惑星の衝突であることはほぼ確かである。6500万年前の白亜紀末期、太陽光はが長い時間遮断された。多くの生物に有害な作用を及ぼす酸性雨も降り注いだと考えられている。この結果当時の生物のおよそ半分が死滅したと推定されている。

 地球では、カンブリア紀以降、これら5大絶滅に準ずる規模の絶滅は何度も起こっている。地層に基づいて区画されている地質年代は、現在3代11紀にまとめられているが、紀の階級の下位には40世が、さらにその下位の期には実に120以上の期が認めらえている。それは地層に刻まれるほどの地学的大変動がこれだけ頻繁に起こってきたことを示している。つまり過去5億4500万年の間、地球上の生物は少なくとも475万年に一度の頻度で、絶滅の淵に追いやられる地学的変動を経験してきたのだ。これより規模が小さいが、ある種の絶滅をもたらす地学的変動は、この何百倍もの頻度で起こっていたことは間違いない。

 

 見事すぎる適応、しかしある特定の環境要因に特化することは、進化的に長期的観点から見ると問題がある。

 

 進化的に長期にわたって生き続けるのは、植物性の餌だろうと、動物性の餌だろうとお構いなしに、手あたり次第食べまくるねずみのような、一般手資源に適応した動物だろう。