この記事は心に風魔手裏剣のバックナンバーです^ ^
こんばんは
ayaです。
昨日応募しよう、京急沿線を舞台に物語を書いていたけど、
「街が育む世代を超えたつながり」というテーマでは
書けてない感じになったので、
メルマガに載せちゃおうと思います^ ^
金木犀 気高きひとへ〜ムアレシス
(あなたが好きです)〜
作者名 たかはしあや
金木犀 気高きひとへ〜ムアレシス(あなたが好きです)〜
著者名 たかはしあや
5月 ポツリポツリと雨が降っている。
赤い列車がゆっくりとホームに入ってきた。
そして、スーッとドアが開くとそこには
とても美しいだけど異質な女の人がいた。
どこにいくのか聞きたい気もしたが、
見ず知らずの人間にそんなこと聞かれても
困るだろう。それに、そんなことで彼女に嫌われたくないと
文章(ふみあき)は思ったのだ。
とはいえ、やはり彼女のことが気になる文章(ふみあき)は、
普段かばんにに入れていても読まない本を出し、
読んでいるふりをしながら、彼女のことをチラチラと
うまいこと盗み見していたつもりだったのだが、
電車が京急川崎のホームに入ろうとしたその瞬間に
その彼女が、少し怒った顔をして、カツカツとハイヒールの音を
させながらボクの方へ近寄ってくる。
この時はじめて、彼女がぼくの盗み見に気づいていたことを知った。
あゝボクはなんて間抜けなのだろう・・・。
あまりにも恥ずかしくてどうしたらいいのか分からないボクは
唯一知っているギリシャ語
「ムアレシス(あなたのことが好きです)」という言葉が
謝る前に出て来ていた。
するとこんどは彼女が照れてしまい、
先程の鬼の形相から純な乙女の顔に早変わりし、
言葉にならない言葉を発しながら別の車両へと逃げていってしまった。
そんな彼女が居なくなった後にはこの季節には似合わない
「金木犀の香り」がひとり残っていた。
たしか金木犀の花言葉は「謙虚」「気高い人」
まさに彼女のことだ。と文章(ふみあき)は思った。
そして、その気高き人を自分のものにしたいと
強く強く思うようになっていた。
そして、そのことに気づいた時、
文章(ふみあき)は、
自分が終点の三崎口まで来てしまっていることに驚いた。
なぜならこの街は僕が文章で生きることを選び、大好きな女性(ひと)と
分かれた街だから。だからもう、二度とこないと決めていたのになぜ僕は
ここにいるのだろう・・・。
そうか。あの列車が、「過去へとつながる役割」をしていたんだ。
そして、あの和風メーテルは、きっと・・・。
そうに違いない!!
僕が唯一愛した女性。
世界で一番大切な人。琴音に違いない。
そう思った僕は、ずっと消さずにいた
琴音の電話番号を素早く丁寧にプッシュしていた。
そして、あの歌が流れてくるのを待っていたが、
あの聞きなれた着信メロディーが聞こえてくることはなかった。
僕が聴くことが出来た声は彼女の声でなく、
無機質で冷たい「お客様のおかけになった電話番号は
現在使われておりません。番号をお確かめになり、おかけ直しください」
というあの無情なアナウンスだけ。
これを聞いた僕は、分かっていたけど認めたくなかった
現実を突きつけられ、だらしなくポカーンとそこに立っていた。
25歳という中途半端な大人な年齢の僕には
少し重い課題でどうやって先送りしていこうか悩む案件だった。
そして、
最後にこうも思った。
彼女がもうボクのものでないことは分かった。
けれど、
もう一度だけ会いたい。と毎日毎日願いながら、
毎日始発の京急に乗り、琴音に似た「和風メーテル」に
もう一度だけもう一度だけと車両を変え、乗る時間や駅を変えと
色々やってみたが、「和風メーテル」にも「元カノ琴音」にも
会えなかった・・・。
それでも文章(ふみあき)は諦めず、
1ヶ月ほどそれをしていた。
すると、母の日直前の最終列車に「和風メーテル」がいた。
なんだかとても悲しそうな辛そうな顔をしている。
僕の本当の気持ちとしては、今すぐにでも彼女の元へ飛んでいき
だいじょうぶだよ。と言ってあげたい。
そして彼女が安心してゆるめるように
彼女らしく輝けるように全力でサポートしていきたい。
そんな風に思うようになり、「彼女の足長おじさん」になろうと
決め、その為に必要なことは全てやった。
するとある日ボクの家である「ライティングハウス」231号室に
とても達筆な文字が書かれた手紙が1通届いていた。
僕は友達がいないから手紙が来るということは怪奇現象と言える。
そこで誰だろうと差出人の欄を見るが名前がない。
だが、すぐにボクはこの差出人が誰か分かったのだ。
なぜなら、この美しい文字が書かれている便箋から
「金木犀の香り」がしてきたから。
そう。「和風メーテル」からの手紙だったのだ。
そのことに気づいた僕の喜びがどんなに大きかったかは
きっと誰にも分からないだろう。
それはとても寂しいことだけど仕方がないこと。
小説家とは孤独なのだから。
しかし、ただひとつ困ったのは、
余りにも達筆すぎて肝心の内容が分からない。
しかも、僕は嫁も子供も彼女もいない身
なので、手紙を見せてなんて書いてあるのだろう?と聴くことも出来ず
困っていたら、管理人さんが定期的に行う抜き打ちチェックをしに、
僕の部屋の近くに来ているのが見えた。
普段なら如何にして切り抜けるかの方に頭をつかうのだが、
今日はいかに機嫌よく過ごしてもらえるかを考えることにした。
なぜなら、この手紙を解読してもらわなくてはいけないから。
そう思い、一番上等なお茶とお菓子を用意して、
部屋を綺麗にし準備万端にして待っていると、
管理人さんは何かを思い出したのか、
僕の部屋のひとつ手前の部屋を出たあと、
管理人室の方へ戻っていこうとしていた。
コレを見た僕は、それは困ると、
部屋の扉をバンと開け、彼女を呼び止めた。
そして、管理人さーーんと呼ぶつもりが、
琴音と言っていた。
すると彼女は驚いた顔になり、こういったのだ。
すみません・・・。
人違いですよ・・・。
私は文香です。琴音は私の姉です。
そんなに似ていますかね??
と僕に告げた。
それを聞いた時僕は全てを理解した。
あの日ボクの前に現われたのは、琴音の霊だったのだ。
なのに、あんなに生きている人間のようだったのは、
琴音の想いと琴音を愛した人たちの想いが強かったから
まるで生きているように見えたのだ。
そして、あの「和風メーテル」が自分であることを伝えるために
どうにかしてボクを京急に載せ、三崎口まで誘導したのだろう。
そして、初デートと最後のデートに行ったあの場所へ誘い
自分のことを忘れないでほしいと強く訴えたのだろう。
だけど、本当は自分はもうこの世にいない。
だけど文章(ふみあき)とは関わっていたい。
さて、どうしたものか・・・。と思案した時に
文香がきっと提案したのだろう。
お姉ちゃんに私なりきるよ。
私をお姉ちゃんだと信じ込ませて惚れさせちゃうから
だいじょうぶだよ。
でも、ほんとのこと言うと、ズルいと思う。
絶対勝てないもの。想い出には。
お姉ちゃんは卑怯よ。
いつだって必ず勝てることしかやらない。
そのくせ、自分は文香みたいにいい女じゃないからと
卑下するけど・・・。
本当はお姉ちゃんの方がモテてることも、
人気があることも知っていた。
ううん。それだけでない。
自分が1位になってしまいそうな時は
必ず裏で工作して私が1位になるようしていたことも
知っている。
だけど
知らないフリしていてあげた。
けれど
辛かった。そうされる度に傷ついた。
そんなこと知らなかったでしょう?
ビックリしたでしょう?
でも、知らなくて当然かも。
お姉ちゃんは、自分がナンバーワンになるのが怖くて
その役を私にどうやってやらせるか考えることが最優先だったのだから。
私が何をどう感じ、誰に恋し、何が好きで何が嫌いかなんかには、
これっぽちも興味がなかったでしょ?
興味があれば、私がどんな気持ちでこの28年間生きてきたか
分かるハズなのだけど・・・。
もういいわ。
幽霊に何言っても響かないから。
だけど最後にこれだけは言わせて
文章から出ていって!!
彼苦しんでるの。
新しい恋をしたいのに
私のことを受け入れたいのに
姉さんが出ていかないから
姉さんが彼を縛るから
彼が答えを出せない・・・。
ねぇ。もういいでしょ?
許してあげてよ。
愛してたんでしょ?
今でも好きなんでしょ?
だったら彼の幸せを考えてあげて
大丈夫。お姉ちゃんの分まで私が幸せになるから。
やっと勝てた
はじめて勝てた
お姉ちゃんに
ありがとう。琴音。
大好きだよ。