全館まるごとが巨大な美術図鑑、大塚国際美術館 | 地球へ途中下車

全館まるごとが巨大な美術図鑑、大塚国際美術館

先日、夫と妻は親族旅行で淡路島へ行きました。そのとき泊まったのが淡路島の最南端で、目の前の渦潮・鳴門海峡を渡るとそこは四国徳島……。



ジモティのおすすめに従い、翌日は陶板名画美術館、大塚美術館を観に行きました。

敷地面積・規模の広さ、入場客の多さ、所蔵点数の多さ、作品スケールのでかさ、入館料の高さ……と、いろいろな点でびっくりさせられました……



ここは世界中の美術館と提携し、オリジナルを借りて、パネルのような陶器の板に写真転写印刷し、さらにレタッチを加えて、世界の名画を原寸大の複製・レプリカにして展示する、という美術館です。その点数1000点以上で、本物は一つもないが、我々レベルの素人が教科書で見たことある、TVで知ってるような有名な名画は、ほとんどすべてがここある……、というちょっとかわった美術館なのですね。






夫と妻はもともと絶景でも遺跡でも、ホンモノが見たい、現地で見て、空気を感じたい派です。ルーブル、エルミタージュ、ボストンへは行ったことがあります。あと、ピカソ美術館、「ゲルニカ」のある王立美術館、「最後の晩餐」のサンタマリアデグラッツエ教会、クリムト「接吻」のウィーンのヴェルべデーレ宮殿……。

単なる贋作なら、観に行く価値はない、やはり本物をみるべき、本物がもつ迫力やインパクトに直接触れるべき……と判断するところですが……、
夫と妻、自らもその業界に身をおき、日本のコンピューター解析による印刷技術、色再現や細部へのこだわり、そのレベルの高さ、ものづくりの実力、というものを知っています。それだけに、いまの日本の技術力をもってすれば、もしかして、別の意味でホンモノを超えるようなものがつくられているのかもしれない、そんな興味があったのですね。

で、行って、みた感想です。

当然ですが、やはり、これは印刷されたレプリカであり、絵画ではない、と思える作品がいつくかありました。特に絵の具の筆使いが特徴で盛り上がっている油絵なんかは、平面的な表現になるので特にそう感じました。

しかし、中世のフレスコ画のように、オリジナルが漆喰の壁に絵の具で彩飾してあるような宗教画なんかは、再現性としてはわりと十分で、これはアリかな、と思えました。



また「アテネの学堂」のような見上げるばかりの巨大な作品も、大きすぎてもともと細部にわたって見えないし、迫力満点の点、色彩の素晴らしさで見応え十分、ヴァチカンまで行かなくてもOKかも。



ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂の壁を埋め尽くす壁画を部屋まるごと原寸大で再現したホールとか、スクロベーニ礼拝堂とかこういうものも細部まで、デザインがこころゆくまでゆっくり見られる点と、やはり地震や自然災害によるオリジナルの破壊から人類共通の芸術品を守る、という意味でも有効か。



なかでも、特に人類至宝の複製保全に貢献できるかもしれないなあと思ったのが、ダヴィンチの「最後の晩餐」でした。
これは、もとが教会の食堂の壁にテンペラ油で彩色された壁画で、15世紀に描かれ、ダヴィンチのなかでも最も傷みと劣化が激しい作品として、近年、大きく修復されています。いまも人が吐く二酸化炭素でさえ劣化するので、温度湿度が厳重に管理され、人数制限して1回15分で見学します。事前予約をきっちりしていかないとすぐには見られません。(私たちはラッキーにも、3時頃に飛び込みで行き、その日の6時のグループに入れてもらえましたが……)
なので、保全性という意味からも、大塚美術館の取り組みは意味があると思います。
あたかも部屋の延長であるかのような奥行きを感じられる消失点のある遠近法で計算されて描かれていることなどが、ゆっくりと見られるのため、何度も左右に移動して見たりして、確認することができます。これは現地ではできませんでした。


しかも修復前の絵と修復後の絵を比べて見られるのは世界でもここだけだそうです……。
修復前のものは、汚れや傷みがひどいだけでなく、上から上からいろんな画家によって書き直されています。イタリアで22年かけたおこなわれた修復作業はまずそれらを洗浄することからだったそうで……


モナリザはもともと、本物のすごさは、フランスまで見に行っても味わうことができないというか、ルーブル美術館ではガラスケースに入れられて、前に鎖が張られ、いつもこの前だけすごい人だかりで、「みた」というより、遠くから「あった」という確認しかできませんでした……。
でもここなら、ギリギリまで顔を近づけてみたり、右半分と左半分の顔の表情が男性的、女性的と違うことをパンフレットで隠して見たり、下になっているほうの手の書き方で、まだ未完成だと言われているとか、詳しく観察することができます。
しかも、なんなら触ることもOKで、ノーフラッシュなら写真撮影もOK。これはほかの作品も同じです。


つまり、ホンモノから受ける圧倒的な感動は当然得られませんが、その絵にまつわる雑学やエピソードを確認したり、自分のなかでの美術の知識の整理には大いに役立つ、というおもしろさがあります。3240円は決して高くない、また行きたい、と思いました。

たとえば、ルノアールの絵は現在、パリのルーブル、オルセー、ロシアのエルミタージュ、アメリカのフリップス、と世界中の美術館に散らばって所蔵されているわけですが、ここではそれらが一堂に会して見られるわけです。テーマごとに並べてあったりします。同じ作家の作品を、描かれた年代を追って比較して見てみたり、自分なりの楽しみかたができます。館まるごとが、大きな美術辞典というか、図鑑というか、そういう見方ができるわけです。




館内は広すぎるので、ガイドツアーに入って説明を聞くのがおすすめです。



私たちも10時からトイレ休憩はさん2時間のツアーに午前中を費やして古代・中世をみて、館内のレストランでランチして、午後からも2時間、近代・現代を自分達で回りましたが、それでも見逃しているところがありました。それぐらい広いです……


海のビーナスカレー1000円


最後に、コンピュータを駆使した転写印刷で表現できないものがある、と感じたものがありました。

それは「光」や「空気感」です。
ガッカリしたのが、フェルメールの有名な青いターバンの女性。それに、フィリプスにあるルノアールのボート遊びの人々という作品。これは水面が太陽の光を受けてきらきら輝き、それがテーブルの上のワインボトルや、グラスや果物に反射して眩しい感じが油絵でよく表現されている本当にキレイな絵で妻のお気に入りでした。これはダメでした。



つまり、かたちや色彩など、数値化できるものは数値で再現できるけど、光や空気のような実態がないもの、人間の目はとらえているけれど、数値化できないものは、機械技術では再現できない、ということなんでしょうか……。

あらためて、科学のすごさと、人間のすごさ、両方に感服しました……。












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