活字中毒 -37ページ目

博士の愛した数式 / 小川洋子

事故にあってから記憶が80分しか持たなくなってしまった博士と、そのうちに派遣されてきた家政婦の心が温かくなる話です。事故にあう前の博士は数学のプロフェッショナルでした。47歳までの記憶はしっかり思い出せるから複雑な数式の話はできるのに、昨日の事はまったくダメ。というか、80分より超えてしまった過去の記憶はすべて消されてしまった状態になるんです。毎朝会うたびに「はじめまして」から始めなければいけない。家政婦が買い物に出てうっかり80分を超えてしまうと、また「はじめまして」。

そんな日常に、家政婦の10歳の息子(√:ルートと呼ばれる)が加わることになって博士の生活が変わっていきます。



80分前の記憶がなくなってしまう気持ちってどんな感じなんだろう。大切な約束をしても思いだせる保証がないから、博士はメモ紙に書いて自分の着ている洋服にクリップでつけておくんです。そうすると、絶対に目につくから。そのメモ紙の中に「僕の記憶は80分しかもたない」と書いたものがあります。このメモを見るたび、博士はどんな気持ちになったんだろう。朝、目を覚ますと昨日の記憶はまったくない状態になっているというのは、どれだけ不安なことだろう。

博士はルートをとてもかわいがります。子供は絶対に愛されなければいけない存在。ルートのためなら、数学の式で悩んでいるときでも手を止めるんです。とても丁寧に数学の宿題を教えてあげたり、様々な数式の素敵なところを話して聞かせる。

この数式の話がいたるところに出てくるんです。例えば素数、約数といった学校の授業で聞いたようなものから、フェルマーの定義、オイラーの公式 といった難しいものまで。でも、この数式が話をきりりと引き締めてくれるスパイスのような存在になっています。博士の口から語られる数式の話はとても魅力的で、本当に宝物みたい。さすがにオイラーの公式は読んでみたけどさっぱり理解できませんでした。(^_^;)

博士、家政婦である私、息子のルートの3人の心が通い合っている感じがして、とても温かく素敵なお話になってます。読み終わったあと「あぁ、いいなぁ」って思いました。今年読んだ本(とはいっても、まだ3ヶ月ですが)の中で一番よかったかも。お薦め度★★★★★ですよ。

ちなみに、読売新聞の土曜日版で連載中の「ミーナの行進」も楽しみにしている作品です。毎週読んでいるのですが、なかなかいいお話ですよ。

著者: 小川 洋子
タイトル: 博士の愛した数式

柔らかな頬 / 桐野夏生


桐野夏生さんの直木賞受賞作品です。

昔、自分の住んでいるところが嫌で家出をしたカスミ。悲しいことにその産まれ故郷である北海道で5歳の娘(有香ちゃん)が行方不明になってしまいます。しかも、不倫相手である石山の別荘に家族ぐるみで招待されているときに。

夫より不倫相手の石山を愛してしまい、一度は家族を・娘たちを捨てても良いとまで思ったのに、その後すぐに娘がいなくなってしまって動揺します。自分のせいで娘はいなくなってしまったのではないかと。死体もでてこなくて、事故なのか事件なのかわからないままカスミを除くみんなは普通の生活に戻っていくんです。カスミは娘がどこかで生きているのではないかと1人で探し続けます。もちろんこの事件をきっかけに関わった人間の生活は一変してしまいます。



以前、読んだことがあったのですが、久しぶりに読んでみたら自分にも子供がいる身ということもあって違う印象を持ちました。家族を不倫相手の別荘に連れて行き、しかも目を盗んで会っていたというのは私からすると考えられないことだと思います。子供を巻き込むのは最悪だから。ただ、実際に子供がいなくなってしまった時のカスミの気持ちは想像すると心が張り裂けそうです。一瞬でも自分が子供を捨てても良いと思ったこと、すごく後悔したと思います。子供って本当に敏感ですから、親の気持ちをすぐに察するんですよ。自分がいらないと母親に思われていると気がついてしまった子供って悲しすぎます。

カスミ自身も親に内緒で家出をし、東京へ出てきてからは音信普通仏の状態で両親がどうしているのかも知りません。本文にも出てくるのですが因果は巡るという印象もあります。娘がいなくなって初めて、かわいがっていた娘が突然いなくなるというショックを両親にも与えていたということに気がつくんですから。

結末は微妙な感じ。結局は誰が犯人なのかわからないままではあるのですが、この本はどちらかというと犯人探しよりもカスミの心の内側を書いたものなのでこれでもよいのかもしれません。どうしてもきっちりと終わらないと嫌!という方にはあまりお薦めできませんが、作品としてはとても面白いと思います。

著者: 桐野 夏生
タイトル: 柔らかな頬 (上) / 柔らかな頬 (下)

DVDで覚える シンプルヨーガLesson / 綿本 彰

ちょっと前から気になっていたヨガですが、とうとう始めてしまいました。太極拳もいいらしいと聞いていたのですが、今回はヨガにしてみました。産後の体重増加を止められず、なんと妊娠前より10kgも太ってしまった私。かなりやばい状態なので、なにかをしなければ!と切実に思っていたんです。(^_^;)

このヨーガレッスンの本はおまけにDVDがついてくるので、本で見ただけではわかりにくい細かい動きもよくわかります。本の場合はページを開いて覗きながらやらなくちゃいけないけど、DVDならテレビで流したまま行えるので楽チンです。しかも、ゆったりとした音楽も流れていて、先生の声も聞こえるし、まるでヨガの教室にいる気分になれます。

先生の声に合わせてヨガの動きをやっていくのですが、画面では上手な人と初心者っぽい人の2名が先生に指導を受けています。やっぱり初心者のポーズと上手な人のポーズってのは、まったく違うものですね。間違いなく私は初心者のポーズなんでしょう。DVDを見ながらやっていると、ちょうど良いタイミングで先生が初心者さんに「肩の力を抜いてくださ~い」とか「きつかったら手の位置を変えてみるといいですよ」とかのアドバイスを入れているんです。それがまた、私にぴったりなアドバイスで。(笑)

深呼吸に合わせてゆっくりと動くのがポイントらしいのですが、ゆっくりというのが結構きついんです。あと、昔は体の柔らかさに自信があったのですが、今は全然ダメみたい。どうやらヨガはかなり体の柔軟性と体力がないと厳しいようです。だいたい通しで見ると90分くらいかかるのですが、毎日は90分続けられないので、今の私には準備運動とレッスン1だけにしてます。それだとだいたい30分くらいかな。レッスン2に行く頃には疲れちゃうんですよ。しかも、当然2は難しくて、私にはできないポーズがいっぱいあるんです。(^_^;)

私は知らなかったのですが、この本を書いた綿本先生というのはヨガ界では結構有名な方みたいです。声のトーンも穏やかで、聞いているだけで気持ちよくなる感じの教え方ですよ。初心者の私でも簡単に理解できたので、初心者向けという意味ではお薦めかなと思います。

著者: 綿本 彰
タイトル: DVDで覚える シンプルヨーガLesson

きかんしゃトーマスのABC


我が家の息子は大のトーマス好き。しかも、最近文字にとっても興味があるみたいで、教えてあげるとアルファベットもスムーズに覚えてくれます。ということで、これはチャンス♪とこの本を買い与えてみました。

だいたいが1ページに1つのアルファベット。で、大きな写真が掲載されていて(もちろんトーマスの仲間たちです)、単語もトーマス関連なんです。だから、バーティーのBとか、エドワードのEとか、ゴードンのGなんて言いながら簡単に覚えられるみたいです。アルファベットの後半になると1ページに2つづつになっていたりしますし、すべてがトーマスに関連した言葉というわけでもないんですけどね。littleとかKindなどは、やさしいエドワードみたいな感じでキャラクターにあわせて使ってあります。

読んであげる側にもやさしく(笑)、使われている英語がシンプルなので英語に自信がなくてもまったく問題がありません。ちゃんと日本語訳も併記されていますよ。見るものを読み上げるが大好きお年頃にはぴったりだったようです。

著者: ウィルバート オードリー, まだらめ 三保
タイトル: きかんしゃトーマスのABC

チェルシーテラスへの道 / ジェフリー・アーチャー

ジェフリー・アーチャー の作品によくある成り上がりのタイプです。

主人公のチャーリー・トランパーはロンドンの下町で野菜売りの大道商人の孫で、祖父の死後に譲られた手押し車で独立して商売を始めます。夢は高級商店街チェルシー・テラスの店舗をすべて自分の物にすること。幼馴染で共同経営者のベッキーと友人のダフニに支えられながら、夢を着々と叶えていくまでの話です。

世界大戦で出征した時に人生の宿敵ともいえるガイ・トレンザムと出会い、その後の人生に深くかかわってきます。チャーリーの夢はガイ・トレンザムとその母であるミセス・トレンザムの2人に妨害をされるのですが、逆に知恵を使って相手を陥れたりもするんです。この手の作品に必ず出てくるのがライバル。今回のライバルはものすごく嫌なやつです。登場人物って結構途中からいい人に変化する場合も多いと思うんですけど、このライバルは最後まで嫌なやつでした。でも、チャーリーは負けずに夢を叶えるんです。

この作品は、様々な登場人物からの視点でつづられていて、ストーリーの同じ部分を違う目線からも書いてあったりするのでおもしろい作りになっています。まさに表も裏も見れるといった感じ。

上下巻なのでかなりのページ数ですが、あっという間に読めてしまうと思います。チャーリーの活躍ぶりを読んでいくと、本当にすかっとするんです。終わったときには「あぁ、おもしろかったー」と嫌なことも忘れて気持ちよくなれると思いますよ。何度読んでも楽しめる作品です!

著者: ジェフリー アーチャー:永井 淳
タイトル: チェルシー・テラスへの道〈上巻〉 / チェルシー・テラスへの道〈下巻〉