人の奥底にある暗い部分に触れる本

今回紹介する本は

 

なれのはて

 

「なれのはて」

著者 加藤シゲアキ

発行所 講談社

 

「こんな人におすすめ」

 

    

・現代社会の問題を本を通して見つめたい人

・家族との微妙な距離感、他の家族との違いにもやもやしている人

・自分の心の中にある醜さと向き合いたい人

・人のありのままの心情に触れたい人

・過去に起きた人々のつらさと向き合いたい人

・報道局、イベント事業部などに興味がある人

「あらすじ」

 

ある報道局に勤める守谷京斗(もりやきょうと)は報道部を外されイベント事業部に。そこで吾妻李久美(あづまりくみ)と出会い、無名の画家の一枚の絵の展示会がしたいと持ち掛けられる。絵の著作権の所在確認をするうちに、秋田で起きた事件に絵の作者が関わっている可能性が出てきたため調査をすることになる。

「見どころ」

 

なんといっても各登場人物の心理描写がとても丁寧で、思わず自分のことのようにのめり込んでしまいます。また、人物ごとの回想もありそこで読む描写はページをめくるのが怖くなるほどかつての戦争の状況を描き出し、渦中にいる人物たちの心理を細かく繊細に描いてあります。各人物の家族関係・そこに対する思いなどもとても他人事とは思えず、共感しのめり込んでしまいます。本当に生きているのだと思わされます。

「私の感想」

 

加藤シゲアキの小説は「オルタネート」が初めてだったのですが、その時と同様の恐ろしいほど緻密に描かれる人物の心情の描写がまるで私のことのようでのめり込まずにはいられない、自分と向き合う機会というのをまたいただいき読んでよかったと思いました。何かを追い続けるつらさも身にしみて感じました。

「この本を読んでみて」

注意:まだ読んだことがない人はここを読むことはお勧めしません。

 

「なれのはて」とあるタイトル、本文でしっかりタイトル回収をしてくれました。まさしく表紙のように真っ黒でしたが、私は「なれのはて」が本文に出てきた意味だけではないように思いました。それぞれの過去に生きた人物の「なれのはて」の姿が本文では描かれており、それを含めての「なれのはて」だったのではないかと思います。親よりも大きな成功をつかもうとした人、大切な人と生きたかった人、兄とまた仲良くしたかった人思わぬ殺人を犯してしまった人、友達の絵の具を作ってあげたかった人、それぞれの「なれのはて」の姿が本文に会ったように思います。様々な人の人生にこの一冊触れ、やりきれない気持ちになりました。また、本文ではあえて描かれていない真相も「どうしてこの人は…」と深く考えさせられました。

「まとめ」

 

今回は加藤シゲアキさんの「なれのはて」を紹介しました。読んでみたら分かります、面白いというより切ない、でもページをめくる手が止まらない一冊です。ぜひ読んでみてください。

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