傷ついたひとたち、傷ついた過去、傷ついた土地、傷ついた時間‥等、がゆっくりと再生していくものがたりです。


登場人物の設定がシュールながらもそれぞれとっても魅力的。

主人公は、赤ちゃんの時に海辺に捨てられた遺棄児、

でものちに夢をみるという形で、中学生の実母が拾われるまでこっそり見守っていたエピソードがあり、少しだけ救われたような気持ちになります。

そして拾われた先の家族は、

超能力(?)のような不思議なチカラを持つ"おじいちゃん"、

モチーフは植物のみというこだわりの彫刻家である"パパ"、

ものがたりの序盤で交通事故に遭い入院中に気味の悪いウサギの夢を見る"ママ"、

隣りの廃墟ビルに引っ越して来る元幼馴染で傷心の"野村くん"‥

廃墟ビルの元オーナーの不気味なおばあさんや、B&Bの玄関に夜な夜な足を置いていく近所のおばさんについてもそれぞれ徐々に事情が明かされて、

その土地の悲しい過去を目の当たりにします。


もの悲しさに包まれたストーリーではあるけれど、その土地の懐の深さのようなものがとてつもなく大きな波みたいにざばーんと全てをのみこんで抱え、

またひとびとの営みが繰り返されていく‥


"花のベッドで寝転んでいるような生き方をするんだよ"

おじいちゃんの言葉が、このものがたりの芯みたいに最初から最後までまっすぐひとつの線として通っているように感じました。