義理も人情もなく生への本能だけで生きている忍びたちと、

義理と人情、人道を重んじる戦国時代の武士たちが対照的に描かれていて、

どちらの登場人物もそれぞれが魅力的です。


主人公の無門は、無類の怠け者だが"絶人の域"の腕を持つ伊賀の忍び。

ダメっぷりが潔くて気持ちいいほどですが、忍びとして生きていくためには人らしさのほとんどを切り捨てていくしかなかったのだろうと悲しい気持ちにもなりました。


大好きな妻のお国が死に際に無門の本当の名前が知りたいと言うと、

「ー知らんのだ」と泣き出します。

赤ちゃんの頃に伊賀の国に買われ、忍びという兵器として育てられた無門。

唯一の愛着対象であるお国を失いつつあるときに、

故郷も名前も無用な忍びであり瀕死のお国の問いに答えを持ち合わせていないことを自覚して涙を流すのです。


それでも兵器としての人生は終わらない‥

後日譚の切なさにも泣けてしまいました。