マイ・フェイバリット・アルバムであるカクタスの4thアルバム「汗と熱気」。私にとっては、モントローズ1stと並ぶ70年代前半のアメリカン・ハード・ロックの最高峰のアルバムなんです。1972年8月にリリースされましたアルバムです。
  

 

 

カクタスはデビュー以来、同じメンバーで3枚のアルバムを制作しますが、ギターのジム・マッカーティーがティム・ボガートのリード・ベースぶりに嫌気がさして、ついに脱退。ヴォーカルのラスティ・デイも素行の悪さで脱退というか首に。バンドに残ったティム・ボガートとカーマイン・アピスが新たなメンバー3人を加え臨んだアルバムです。

レコーディング・メンバーは

Carmine Appice・・・Drums, Percussion, Backing Vocals

Tim Bogart・・・Bass, Backing Vocals

Werner Fritzschings・・・Guitar

Peter French・・・Lead & Backing Vocals

Duane Hitchings・・・Keyboards, Organ, Electric & Acoustic Piano

プロデュースは Geoffrey Haslam です。他にはヤン・アッカーマン(フォーカス)のソロアルバムやベッド・ミドラーなどのプロデュースをしています。
新メンバーのデュアンは元バディ・マイルス・エクスプレス、ブルース・イメージ、ピーター・フレンチは元リーフハウンド、アトミック・ルースターです。ギターのワーナーは新人?かな。

A面はライブ(1972年4月のマリーソルポップフェスティバルでの演奏)、B面はスタジオ録音という変則アルバム。しかし、どちらも遜色ない素晴らしい演奏。また、新加入のデュアンとピーターは曲が書けます。それまでのカクタスの欠点を補えるアルバムとなりました。デュアンの作曲としては、ロッド・ステュワートの“Do Ya Think I'm Sexy? (アイム・セクシー)”が有名です。


A-①Swim (Carmine Appice, Tim Bogart, Rasty Day, Jim McCarty)
もともとは1stアルバム収録の “Let Me Swim” という曲。第Ⅰ期カクタスのライブ・ヴァージョンも聴くことができる時代になりましたが、比較するとまったく別なアレンジ。第1期かスタスではアップテンポのブルースロックなのに対してこの第2期カクタスでは、乗り一発のハードなロックンロールとなってます。エレクトリック・ピアノがあるだけでこうも違うものなのでしょうか。また、ベースのティムのハーモニー・ヴォーカルもきれいにハモってます。

第2期カクタスのライブ演奏です。

 

第1期カクタスの演奏です。

 

A-②Bad Mother Boogie (Appice, Bogart, Peter French, Werner Fritzschings, Duane Hitchings)

1曲目と切れ目なく続くロックンロール大会。2ndアルバムの “Big Mama Boogie” の改作ヴァージョン。ブルースっぽさが無くなってます。カーマイン・アピスがとてもバンドを引っ張っていて彼の全盛時のドラミングが堪能できます。


A-③Our Lil Rock 'n' Roll (Appice, Bogart, French, Fritzschings, Hitchings)
チャック・ベリー風イントロのギターからまたまたハードなロックンロールになります。最後のほうでは、ヴォーカルとギターのコールレスポンスがあり、その後、曲調が変わります。
ライブの3曲を聴いてると、一度は観てみたかったバンドですね。


B-①Bad Staff (French, Johnson)
ジミ・ヘンドリクス風のイントロからオルガンがうなりをあげて弾いてます。かなりヘヴィな曲調で最もハードロックな作品です。ピーターの曲ですが、そういえばちょっとアトミック・ルースター風なオルガンですね。

 


B-②Bringing Me Down (Appice, Bogart, French, Fritzschings, Hitchings)
ヴァニラ・ファッジ仕込みのティムとカーマインのコーラスが美しいアメリカンな曲。第1期カクタスでは考えられなかった作品です。ただ、けっして軽い音楽ではなく、ずっしりとした曲になっているのがカクタスらしいです。

 

B-③Bedroom Mazurka (French, Hitchings)
この曲大好きです。この乗り、スタジオ録音とは思えない。ドラムのカーマインのリズムが実にファンキーだね。いなせなピーターのヴォーカルもいいね。



 

B-④Telling You (French, Hitchings)
出だしのオルガンが雰囲気抜群。どういう展開になるのかと思っていると普通のアメリカン・ハード・ロックになっていきます。このバンドは一人一人のパワーがすごいと思います。力技でねじ伏せるROCKですね。

 

 


B-⑤Underneath The Arches (Connelly, Flanagan, McCarty)</p>
最後は1930年代の古い歌で、酔っぱらいのコーラスみたいな感じの短い曲で終了します。

このメンバーでのアルバムは最初で最後。いい感じになってきたところにティムとカーマインがジェフ・ベックからの引き抜きにあってしまった、とピーターは後にインタビューで語ってます。そのインタビューによると、二人の脱退後、カクタスの名前を引き継いだデュアンのマネージメントからピーターもカクタスに残るよう依頼があったそうです。しかし、ピーター本人も、もともとアトミック・ルースターズ時代にカクタスと一緒にツアーをしている最中にティムから一緒にやろうと誘われ、二人のリズム隊を見て一緒にやりたいと思ったのがカクタス加入の動機だったようで、その二人のいないカクタスには魅力を感じず、脱退したようです。
一緒にツアーをしていたフェイセズのロッド・ステュワートにも、こんないなせなバンドは続けるべきだ、とティムやカーマインに忠告したそうですが、二人はジェフに誘われたら断れないと言ったそうです。

そうして、結成されたベック、ボガート&アピスですが、その唯一のアルバムには、ピーターが2曲で作曲(と本人は言ってますがクレジットには3曲)、デュアンが1曲キーボードで参加してます。そのアルバムを聴くにつけ、せめてもう1枚カクタスでアルバムを発表してほうが、ずっと良かったのに、とついつい思ってしまいます。誘ったジェフも後にこのバンドは失敗であったと認め、多くを語ろうとはしません。だったら、誘うなよ、ジェフ!