テギョンの隠し事
｢もしもし～！オッパー！愛しのジアよ！｣
ミニョの携帯を奪い、話し始めたジア。
テギョンは、急にジアの声が聞こえ、眉間にシワが一気に寄った。｢な、なんで、お前が出る！｣
テギョンは驚いた。
｢ん、もう！昨日携帯忘れたから、わざわざ届けに来たんじゃない！オッパー、早く来て！それともそっちに行っていい？｣
｢来るな！ミニョに携帯渡しておけ。｣
｢オッパ～、嫌！｣
｢ジア！｣
ミニョは、電話越しでもテギョンの苛立ちが分かった。しかも"ジア"と聞いて、ようやくテギョンのドラマのヒロインだと分かった。だからって、どうして携帯を忘れたんだろうて疑問に思った。
"テギョンさんは几帳面だから、滅多に忘れたりしないのに…やっぱり多忙だから疲れてたのかな？"
そんな事を考えていると、憮然としたジアが携帯をミニョに差し出した。
｢オッパーが、あなたに代われって。｣
ミニョはなんだかドキドキしてきた。
｢はい、代わりました。｣
｢ミニョ、すまん、ジアから携帯を預かっておいてくれ。｣
｢でも今日は必要なのでは？｣
｢もうすぐ撮影だろ、俺は午後からだから、行く前にお前の所寄る。｣
｢でも…｣
｢それに…その、テジトッギの顔もみたいし…。｣
｢テギョンさん…｣
テギョンからそんな事を言われたミニョは、つい嬉しくなり顔がほころんでいた。
｢分かりました、預かっておきますね。では後で。｣
｢すまないな。｣
そう言って、電話を切った。
ジアはミニョ様子を見ていて、いらついていた。しかし、最後に見せたミニョの笑顔で、ミニョとテギョンの関係を察し、気にくわなかった。
｢すみません、ジア…さん？私が携帯を預かる事になりましたので。｣
ミニョは何となく弱気に言った。ジアは憮然としたまま、携帯をミニョに渡した。
｢あなた…誰！？｣ジアが聞くと、ミニョは慌てて答えた。
｢すみません。コ・ミニョと言います。｣
｢ミニョ…？ミニョ…。もしかしして一時期A.N.JELLと一緒にいた？｣
｢はい、そうです。｣
｢どうして？あなたテギョンさんと何かあるの？じゃなきゃ、辞めたはずの人がどうしてテギョンさんの周りをうろつくのよ。｣
突然の対抗心を向けられミニョは、びっくりし縮こまった。
｢それは…その…｣
ミニョはなんて言って答えたら良いのか困った。
｢あなた、テギョンさんとコネがあるんでしょ？寝たの？｣
｢？なんて！｣
｢じゃなきゃ、あなたみたいな人側に置かないでしょ！｣
｢テギョンさんはそんな人ではありません！｣
｢うそよ！ねぇ、どんなのが好きなの？今度ベットシーンだから、参考に教えなさいよ！｣
｢…えっ？ベット……｣
｢あら？聞いてないの？マネージャーなら当然知ってるでしょ！ねぇ、だから、教えなさいよ！｣
｢…すみません…私…もう行かないと。｣
そう言って、ミニョはその場所から早く立ち去りたかった。けど、思うように体が動いてくれなかった。まるで足枷を付けているようだった。
そんなミニョの後ろで、今だにマネージャーだと思い込んでいるジアが騒いでいた。
"こんな業界だし、シナリオなら尚更仕方のない事なのに…"
ミニョは自分に言い聞かせていたが、頭と心がばらばらに、働いていた。
"仕方がないって…分かってるのに…なんで胸がチクチクするの"
ミニョは握った右手で自分の胸をトントンと叩いた。ふと気付くと、目からは涙がこぼれていた。
ミニョの携帯を奪い、話し始めたジア。
テギョンは、急にジアの声が聞こえ、眉間にシワが一気に寄った。｢な、なんで、お前が出る！｣
テギョンは驚いた。
｢ん、もう！昨日携帯忘れたから、わざわざ届けに来たんじゃない！オッパー、早く来て！それともそっちに行っていい？｣
｢来るな！ミニョに携帯渡しておけ。｣
｢オッパ～、嫌！｣
｢ジア！｣
ミニョは、電話越しでもテギョンの苛立ちが分かった。しかも"ジア"と聞いて、ようやくテギョンのドラマのヒロインだと分かった。だからって、どうして携帯を忘れたんだろうて疑問に思った。
"テギョンさんは几帳面だから、滅多に忘れたりしないのに…やっぱり多忙だから疲れてたのかな？"
そんな事を考えていると、憮然としたジアが携帯をミニョに差し出した。
｢オッパーが、あなたに代われって。｣
ミニョはなんだかドキドキしてきた。
｢はい、代わりました。｣
｢ミニョ、すまん、ジアから携帯を預かっておいてくれ。｣
｢でも今日は必要なのでは？｣
｢もうすぐ撮影だろ、俺は午後からだから、行く前にお前の所寄る。｣
｢でも…｣
｢それに…その、テジトッギの顔もみたいし…。｣
｢テギョンさん…｣
テギョンからそんな事を言われたミニョは、つい嬉しくなり顔がほころんでいた。
｢分かりました、預かっておきますね。では後で。｣
｢すまないな。｣
そう言って、電話を切った。
ジアはミニョ様子を見ていて、いらついていた。しかし、最後に見せたミニョの笑顔で、ミニョとテギョンの関係を察し、気にくわなかった。
｢すみません、ジア…さん？私が携帯を預かる事になりましたので。｣
ミニョは何となく弱気に言った。ジアは憮然としたまま、携帯をミニョに渡した。
｢あなた…誰！？｣ジアが聞くと、ミニョは慌てて答えた。
｢すみません。コ・ミニョと言います。｣
｢ミニョ…？ミニョ…。もしかしして一時期A.N.JELLと一緒にいた？｣
｢はい、そうです。｣
｢どうして？あなたテギョンさんと何かあるの？じゃなきゃ、辞めたはずの人がどうしてテギョンさんの周りをうろつくのよ。｣
突然の対抗心を向けられミニョは、びっくりし縮こまった。
｢それは…その…｣
ミニョはなんて言って答えたら良いのか困った。
｢あなた、テギョンさんとコネがあるんでしょ？寝たの？｣
｢？なんて！｣
｢じゃなきゃ、あなたみたいな人側に置かないでしょ！｣
｢テギョンさんはそんな人ではありません！｣
｢うそよ！ねぇ、どんなのが好きなの？今度ベットシーンだから、参考に教えなさいよ！｣
｢…えっ？ベット……｣
｢あら？聞いてないの？マネージャーなら当然知ってるでしょ！ねぇ、だから、教えなさいよ！｣
｢…すみません…私…もう行かないと。｣
そう言って、ミニョはその場所から早く立ち去りたかった。けど、思うように体が動いてくれなかった。まるで足枷を付けているようだった。
そんなミニョの後ろで、今だにマネージャーだと思い込んでいるジアが騒いでいた。
"こんな業界だし、シナリオなら尚更仕方のない事なのに…"
ミニョは自分に言い聞かせていたが、頭と心がばらばらに、働いていた。
"仕方がないって…分かってるのに…なんで胸がチクチクするの"
ミニョは握った右手で自分の胸をトントンと叩いた。ふと気付くと、目からは涙がこぼれていた。
初対面
"皆さん食べてくれたかしら？"
そんな事を思いながら、イ室長の運転する車で事務所に向かっていた。
事務所に着き、社長室のドアをノックした。
｢Come In！｣
｢おはようございます。｣
｢やぁ、朝から済まないね。撮影は順調か？｣
｢はい。もう少しで、クランクアップです。｣
｢そっかぁ。まぁ、座って。｣
ミニョは座りながら、いつもとはなんだか空気が違うような気がした。
｢先日の事故は聞いたよ。まぁ、軽い怪我で済んで良かったな。｣
｢ご心配とご迷惑をおかけしています。｣
｢ん。まあ、気にするな。向こうもなんとか使えるって喜んでいたしな。それより、制作発表が、テギョンとシヌ達と一緒になってしまってな。｣
｢テギョンさんとシヌさんが一緒にですか？｣
｢あぁ、同日同時間帯で、テレビ局が火花散らしてな。まぁパフォーマンスだな。｣
時々、ミニョはこの業界の考え方についていけない事がある。なんでテレビ局同士で張り合うのだろうかと思った。
｢それで、うちの事務所としては、お前も出ている映画も一緒に一気に宣伝してしまいたいと思い、掛け合った所、ＯＫがでたんだ。今の所３番組から特集オファーがあるから、テギョン、シヌ達と一緒に収録してくれ。｣
と言われ、企画書をポンと渡された。ミニョは急に言われ戸惑っていた。さらに社長は続けた。
｢その制作発表が終わったら、お前は二日Offにした。だから検査入院しろ。｣
｢検査…入院ですか？べつに私どこも…｣
｢ナ先生からの指示だ。今後の撮影等に影響するかもしれないからな。念の為だ。分かったか。｣
｢は…い。分かりました。｣
｢よし！Grate！今日も頑張れよ。｣
ミニョは時計を見ると、出発が近い時間だったので、企画書を持ち、一礼して部屋を後にした。
ミニョは大きなため息をついた。なんだか色々大事になってきている気がした。それが少し重荷にも感じてた。しかし、ここで弱音を吐いている場合じゃないと思い、小さくガッツポーズをして、気合いを入れ直し、歩き出した。
ふと、前から女性が歩いてきた。白いコートに大きなサングラスをかけていた。ミニョは、なんだかヘイみたいな人だと思った。その横を通り過ぎようとした時、声をかけられた。
｢ねぇ、あなたファン・テギョンさんどこにいるか知らない？｣
｢えっ？｣
｢ねぇ、教えなさいよ！｣
そう言って、サングラスを取った。なんとジアだった。しかし、ミニョは気付くはずもなく、ただ困っていた。
｢あの…テギョンさんなら、まだ合宿所にいるかと思います。｣
｢あなた、連絡つかない？｣
｢急ぎですか？｣
｢べ…べつに…いいから連絡しなさいよ。マネージャーなら知ってるでしょ。早くしてよ！｣
ミニョは、マネージャーと言われ少しビックリしたが、言われるがまましたがった。実はジアもミニョの事は全く知らなかったのだった。
｢あっ。携帯はダメだからね。｣
と、ジアに言われた事が理解出来なかったミニョ。しかし、ジアの手に見覚えのある携帯が握られていた。テギョンのだった。
｢それ…テギョン…さんの？｣
ジアはくるっと背中を向け、にやっと笑った。
｢そうなの～、彼ったら～、つい部屋に忘れて行っちゃって。困ってるかなと思ったから、早く届けてあげたいの。だから…早く連絡してよ！｣
ジアは急かした。ミニョは合宿所の電話にかけた。
｢もしもし。｣
最初に出たのはミナムだった。
｢兄さん。テギョンさんって、まだいる？｣
｢なんだ、あいつがどうかしたのか？用があるなら、携帯にかければ良いだろう。わざわざこっちにかけて…｣
｢兄さん！違うの。その携帯の事だから。｣
｢分かったよ、待ってろ。｣
ミナムはそう言って、テギョンを呼びに行った。
しばらくして、テギョンが出た。
｢テジトッギ、どうした？｣
｢テギョンさん、あの…｣
ミニョが言いかけたその時、ジアが電話を横取りした。
そんな事を思いながら、イ室長の運転する車で事務所に向かっていた。
事務所に着き、社長室のドアをノックした。
｢Come In！｣
｢おはようございます。｣
｢やぁ、朝から済まないね。撮影は順調か？｣
｢はい。もう少しで、クランクアップです。｣
｢そっかぁ。まぁ、座って。｣
ミニョは座りながら、いつもとはなんだか空気が違うような気がした。
｢先日の事故は聞いたよ。まぁ、軽い怪我で済んで良かったな。｣
｢ご心配とご迷惑をおかけしています。｣
｢ん。まあ、気にするな。向こうもなんとか使えるって喜んでいたしな。それより、制作発表が、テギョンとシヌ達と一緒になってしまってな。｣
｢テギョンさんとシヌさんが一緒にですか？｣
｢あぁ、同日同時間帯で、テレビ局が火花散らしてな。まぁパフォーマンスだな。｣
時々、ミニョはこの業界の考え方についていけない事がある。なんでテレビ局同士で張り合うのだろうかと思った。
｢それで、うちの事務所としては、お前も出ている映画も一緒に一気に宣伝してしまいたいと思い、掛け合った所、ＯＫがでたんだ。今の所３番組から特集オファーがあるから、テギョン、シヌ達と一緒に収録してくれ。｣
と言われ、企画書をポンと渡された。ミニョは急に言われ戸惑っていた。さらに社長は続けた。
｢その制作発表が終わったら、お前は二日Offにした。だから検査入院しろ。｣
｢検査…入院ですか？べつに私どこも…｣
｢ナ先生からの指示だ。今後の撮影等に影響するかもしれないからな。念の為だ。分かったか。｣
｢は…い。分かりました。｣
｢よし！Grate！今日も頑張れよ。｣
ミニョは時計を見ると、出発が近い時間だったので、企画書を持ち、一礼して部屋を後にした。
ミニョは大きなため息をついた。なんだか色々大事になってきている気がした。それが少し重荷にも感じてた。しかし、ここで弱音を吐いている場合じゃないと思い、小さくガッツポーズをして、気合いを入れ直し、歩き出した。
ふと、前から女性が歩いてきた。白いコートに大きなサングラスをかけていた。ミニョは、なんだかヘイみたいな人だと思った。その横を通り過ぎようとした時、声をかけられた。
｢ねぇ、あなたファン・テギョンさんどこにいるか知らない？｣
｢えっ？｣
｢ねぇ、教えなさいよ！｣
そう言って、サングラスを取った。なんとジアだった。しかし、ミニョは気付くはずもなく、ただ困っていた。
｢あの…テギョンさんなら、まだ合宿所にいるかと思います。｣
｢あなた、連絡つかない？｣
｢急ぎですか？｣
｢べ…べつに…いいから連絡しなさいよ。マネージャーなら知ってるでしょ。早くしてよ！｣
ミニョは、マネージャーと言われ少しビックリしたが、言われるがまましたがった。実はジアもミニョの事は全く知らなかったのだった。
｢あっ。携帯はダメだからね。｣
と、ジアに言われた事が理解出来なかったミニョ。しかし、ジアの手に見覚えのある携帯が握られていた。テギョンのだった。
｢それ…テギョン…さんの？｣
ジアはくるっと背中を向け、にやっと笑った。
｢そうなの～、彼ったら～、つい部屋に忘れて行っちゃって。困ってるかなと思ったから、早く届けてあげたいの。だから…早く連絡してよ！｣
ジアは急かした。ミニョは合宿所の電話にかけた。
｢もしもし。｣
最初に出たのはミナムだった。
｢兄さん。テギョンさんって、まだいる？｣
｢なんだ、あいつがどうかしたのか？用があるなら、携帯にかければ良いだろう。わざわざこっちにかけて…｣
｢兄さん！違うの。その携帯の事だから。｣
｢分かったよ、待ってろ。｣
ミナムはそう言って、テギョンを呼びに行った。
しばらくして、テギョンが出た。
｢テジトッギ、どうした？｣
｢テギョンさん、あの…｣
ミニョが言いかけたその時、ジアが電話を横取りした。
過去のつながり
公園前ではジヌクが、車のボンネットに腰掛けていた。そこにライトが当たった。シヌがやってきた。シヌは車から降りると、真っすぐミニョの所へと向かって行った。ドアを開け、ミニョに声を掛けるが、寝たままだった。
｢一体、彼女に何をした。｣
シヌがジヌクに問いただした。
｢何もしてません。ただ一緒にカクテルを数杯飲んだだけですよ。｣
ジヌクは両手をあげ、降参というポーズで言った。
｢とにかく彼女は連れて帰る。ここまで世話になった。有難う。｣シヌはそう言うと、ミニョを抱き上げ、自分の車まで歩いた。
ジヌクは、その姿を鋭く睨んでいた。
シヌは、助手席にミニョを座らせ、ドアを閉めると、ジヌクの前に立った。
｢ジヌク…だっけ。もうこれ以上彼女に関わるな。｣
それだけ言うと、運転席へ向かった。
｢ソン・サラ…｣
突然、ジヌクが呟いた。すると、シヌの足が止まり、驚いた顔をした。振り返り、ジヌクを見た。ジヌクはシヌの顔を見て、鼻で笑った。
｢なんだぁ、シヌ先輩覚えていたんですね。てっきり忘れているかと思いましたよ！｣
｢…どうして、その名前を…ま、まさか、君は彼女の…｣
｢僕の姉さんだ。｣
シヌは絶句していた。ジヌクはそれ以上言うことはないという態度で車に乗り込もうとした。
｢待ってくれ。君に…｣
｢俺は許さない。絶対にな！｣
ジヌクは鋭く睨み、車を走らせた。シヌはただそれを見送る事しか出来なかった。
｢シヌ…さん…｣
突然の声にシヌは我に返った。振り返ると、ミニョが立っていた。シヌは思わず、ミニョを抱きしめた。
｢ミニョ、もうジヌクに近づかない方がいい。いや、これ以上関わってはダメだ。｣
｢シヌ…さん。痛いです…｣
ミニョが訴えても、シヌは離さなかった。
帰りの車中は、妙に重くなっていた。ミニョは、ジヌクとシヌが何か深く関わりがあるのは分かったが、聞いてはいけない気がしていた。合宿所についてもシヌは何か思いふけっていた。
｢あの…シヌさん？｣
｢あ？あぁ、ごめん、今日はもう休むよ。｣
そう言って、部屋に上がって行った。そんな後ろ姿を見送るしか出来なかった。
すると、ミニョの携帯が鳴った。
｢もしもし。社長。はい。えっ？明日ですか？分かりました。伺います。｣
そう言って、電話を切った。
｢朝時間なくなっちゃった。そうだ！｣
そう言って、いそいそと台所に向かった。
部屋に戻ったシヌは、ドアを背にそのまましゃがみ込んでしまった。
｢どうして…｣
左手で頭を抱え込んだ。
｢今になって…どうして…｣
ふと、ベットの側にある一つの写真立てに視線がいった。高校の制服を着た、シヌと一緒に男女が肩を組みながら、笑顔で写っていた。
｢…サラ、俺はどうしたらいいんだ。｣
シヌの目からは一筋の涙がこぼれた。
ジヌクは、車の中でいらついていた。そして、時計を見ると急いで、電話をかけた。
次の日の朝、
｢よし！出来た。あっ、行かなきゃ。｣
ミニョは、テーブルに四人への朝食を用意し、そそくさと合宿所を後にした。
それから１時間後。
バラバラにメンバーが降りて来た。それぞれは、美味しそうに食べはじめた。
テギョンは、あれからジアに付き合わされていた。なんでも突然キャンセルされたと泣きだし、一緒にいなきゃいやだと大騒ぎしたからだった。帰っては来たが、ミニョはすでに寝ていた。しかしも、朝には顔が見られると思ていたのに、ミニョは出掛けてしまっていたのがつまらなかった。しかし、トーストサンドイッチにテジトッギが頑張れと旗を振っているのを見て、口を尖んがらせていた顔は崩れていった。
シヌは、少し疲れていた。しかも、ミニョが出掛けてしまった事に不安も覚えた。ジヌクの側に彼女を置かないようにする対策を立てないと、と思っていると、トーストサンドイッチに、うさぎが無理しないで！と言っているイラストが書かれていた。シヌはふっと笑った。そして隣にあった紅茶のポットのフタを開けるとよい香りがした。そばにはメッセージカードに"ミニョオリジナルブレンド"と書かれていた。シヌは腰をおろし、紅茶を飲みながら、思っていた。
"やっぱり彼女は…手放せない。"
｢一体、彼女に何をした。｣
シヌがジヌクに問いただした。
｢何もしてません。ただ一緒にカクテルを数杯飲んだだけですよ。｣
ジヌクは両手をあげ、降参というポーズで言った。
｢とにかく彼女は連れて帰る。ここまで世話になった。有難う。｣シヌはそう言うと、ミニョを抱き上げ、自分の車まで歩いた。
ジヌクは、その姿を鋭く睨んでいた。
シヌは、助手席にミニョを座らせ、ドアを閉めると、ジヌクの前に立った。
｢ジヌク…だっけ。もうこれ以上彼女に関わるな。｣
それだけ言うと、運転席へ向かった。
｢ソン・サラ…｣
突然、ジヌクが呟いた。すると、シヌの足が止まり、驚いた顔をした。振り返り、ジヌクを見た。ジヌクはシヌの顔を見て、鼻で笑った。
｢なんだぁ、シヌ先輩覚えていたんですね。てっきり忘れているかと思いましたよ！｣
｢…どうして、その名前を…ま、まさか、君は彼女の…｣
｢僕の姉さんだ。｣
シヌは絶句していた。ジヌクはそれ以上言うことはないという態度で車に乗り込もうとした。
｢待ってくれ。君に…｣
｢俺は許さない。絶対にな！｣
ジヌクは鋭く睨み、車を走らせた。シヌはただそれを見送る事しか出来なかった。
｢シヌ…さん…｣
突然の声にシヌは我に返った。振り返ると、ミニョが立っていた。シヌは思わず、ミニョを抱きしめた。
｢ミニョ、もうジヌクに近づかない方がいい。いや、これ以上関わってはダメだ。｣
｢シヌ…さん。痛いです…｣
ミニョが訴えても、シヌは離さなかった。
帰りの車中は、妙に重くなっていた。ミニョは、ジヌクとシヌが何か深く関わりがあるのは分かったが、聞いてはいけない気がしていた。合宿所についてもシヌは何か思いふけっていた。
｢あの…シヌさん？｣
｢あ？あぁ、ごめん、今日はもう休むよ。｣
そう言って、部屋に上がって行った。そんな後ろ姿を見送るしか出来なかった。
すると、ミニョの携帯が鳴った。
｢もしもし。社長。はい。えっ？明日ですか？分かりました。伺います。｣
そう言って、電話を切った。
｢朝時間なくなっちゃった。そうだ！｣
そう言って、いそいそと台所に向かった。
部屋に戻ったシヌは、ドアを背にそのまましゃがみ込んでしまった。
｢どうして…｣
左手で頭を抱え込んだ。
｢今になって…どうして…｣
ふと、ベットの側にある一つの写真立てに視線がいった。高校の制服を着た、シヌと一緒に男女が肩を組みながら、笑顔で写っていた。
｢…サラ、俺はどうしたらいいんだ。｣
シヌの目からは一筋の涙がこぼれた。
ジヌクは、車の中でいらついていた。そして、時計を見ると急いで、電話をかけた。
次の日の朝、
｢よし！出来た。あっ、行かなきゃ。｣
ミニョは、テーブルに四人への朝食を用意し、そそくさと合宿所を後にした。
それから１時間後。
バラバラにメンバーが降りて来た。それぞれは、美味しそうに食べはじめた。
テギョンは、あれからジアに付き合わされていた。なんでも突然キャンセルされたと泣きだし、一緒にいなきゃいやだと大騒ぎしたからだった。帰っては来たが、ミニョはすでに寝ていた。しかしも、朝には顔が見られると思ていたのに、ミニョは出掛けてしまっていたのがつまらなかった。しかし、トーストサンドイッチにテジトッギが頑張れと旗を振っているのを見て、口を尖んがらせていた顔は崩れていった。
シヌは、少し疲れていた。しかも、ミニョが出掛けてしまった事に不安も覚えた。ジヌクの側に彼女を置かないようにする対策を立てないと、と思っていると、トーストサンドイッチに、うさぎが無理しないで！と言っているイラストが書かれていた。シヌはふっと笑った。そして隣にあった紅茶のポットのフタを開けるとよい香りがした。そばにはメッセージカードに"ミニョオリジナルブレンド"と書かれていた。シヌは腰をおろし、紅茶を飲みながら、思っていた。
"やっぱり彼女は…手放せない。"
ジヌクの行動
｢ミニョ、ミニョ！｣
｢んっ、ん～。｣
ジヌクが揺すっても、ミニョは起きなかった。
｢本当に弱かったんだな。マスター、悪い今日はこれで。｣
そう言って、ジヌクはミニョを抱えて、車に乗り込み走り出した。
一方、テギョンはジアが無理矢理連れて来たクラブで憮然としていた。幸いVIP席だったので、周りから騒がれずに済んでいたのは有り難かったが、ジアと二人っきりも疲れていた。
｢テギョンさん！せっかく来たんだから、水ばかりじゃなくて飲みましょうよ！｣
｢俺に構うな。それよりまだ来ないのか！｣
｢そんなに怒らないでよ～。良いじゃない、今を楽しめば…ね！それにもうすぐだとは思う…から。｣
そう言って、泣き顔に変わりそうなジアをギロっと横目で見ながら、水を口にするテギョンだった。
そのテギョン達のいるクラブの横道に一台の車が止まった。
車から出てきたのはジヌクだった。そして、一人で裏口へと歩いて行った。
｢よう、遅かったなぁ。｣
突然、暗がりから声が聞こえてきた。
｢悪い。ちょっと用が合ってな！｣ジヌクは平然と返した。
｢なんだよ。女か？｣
｢違ぇーよ。それより例の手に入ったか？｣
｢あぁ。これだ。｣
暗がりにいる人物は、ジヌクに銀色のカンケースを渡した。
｢お前、急にどうしたんだ？こんな物用意させて。｣
ケースを渡した人物は心配そうに聞いた。
｢ちょっとな。｣
｢まさか、まだ引きずってるのか、姉さんの事。もう５年だぞ。｣
｢判ってる。判ってるよ。けど…もう戻れないんだ…｣
ジヌクはケースを見つめながら、拳を固くした。
｢…ごめん。けど、俺はお前の友達だよ。忘れるなよ｣
｢有難う。｣
｢ところで、お前、彼女出来たのか？｣
｢なんでだよ？｣
｢だって、助手席にいるのって…｣とミニョを指していた。ジヌクはとっさに彼から見えないように体を盾にした。
｢ただの友達だ。お前には関係ない。わざわざ悪かったな。｣
そう言って、車に戻ろうとしたジヌクに声が飛んできた。
｢ジヌク、一つ言っておく！決して量を間違えるなよ！｣
｢解ってるよ。｣
そして、車に乗り込んだ。
まだミニョは寝ていた。ジヌクはそっとミニョの顔に触れた。その温もりは懐かしさを思い出しさせるものだった。
｢姉ちゃん…｣
その時、携帯がどこからかなった。
一方、シヌは順調に撮影が終わったので、車を取りに事務所へ戻ってきた。階段を下ってると、丁度リンとイ室長が戻ってきた。
｢リンさん！｣
シヌが声をかけた。
｢あら？シヌさん。もうあがりですか？お疲れ様です。撮影順調そうですね。｣
｢えぇ、お蔭様で。ところで…｣
シヌはそう言いながら、辺りを見渡した。リンは気付いたらしく、
｢ミニョですか？彼女なら今日は現場解散しましたよ。｣
｢どうしてですか？｣
シヌは珍しいと思った。
｢それがね、どうも彼から誘われたみたいで…読み合わせだって言ってたけど、いまいち胡散臭いのよね。｣
｢彼って…ジヌクの事ですか？｣
｢そうよ。他に誰がいるのよ。｣
リンの答えを聞いた瞬間、シヌは携帯を出し、ミニョにかけた。
ジヌクは、ミニョの鞄からひょこっと出ていた携帯をそっと取り出した。着信はシヌからだった。今まで穏やかだったジヌクの顔が、一転して険しくなり、おもむろに電話に出た。
｢ミニョ！今どこにいる？｣
シヌが心配しているのが分かった。
｢ミニョ…？｣
｢シヌ先輩、ジヌクです。すみません、ミニョは少し酔ったみたいで寝てるんですよね。これから家まで送るのでご安心を。｣
シヌは、ミニョの携帯からジヌクの声が聞こえた事にとてつもない怒りと恐怖が襲った。とにかく二人きりにさせてはダメだと心が警告していた。
｢では先輩、失礼し…｣
｢待て。俺がそっちに行き、ミニョを引き取る。今どこだ。｣
｢大丈夫ですよ。｣
｢いいから教えろ！｣
シヌは珍しく声を荒げた。
｢おぉ、恐いですよ！じゃあ275号線のロッテ公園で待ってます。｣
｢分かった。15分で行く。｣
シヌはそう言って切った。
ジヌクはミニョの携帯を強く握りしめていた。
｢んっ、ん～。｣
ジヌクが揺すっても、ミニョは起きなかった。
｢本当に弱かったんだな。マスター、悪い今日はこれで。｣
そう言って、ジヌクはミニョを抱えて、車に乗り込み走り出した。
一方、テギョンはジアが無理矢理連れて来たクラブで憮然としていた。幸いVIP席だったので、周りから騒がれずに済んでいたのは有り難かったが、ジアと二人っきりも疲れていた。
｢テギョンさん！せっかく来たんだから、水ばかりじゃなくて飲みましょうよ！｣
｢俺に構うな。それよりまだ来ないのか！｣
｢そんなに怒らないでよ～。良いじゃない、今を楽しめば…ね！それにもうすぐだとは思う…から。｣
そう言って、泣き顔に変わりそうなジアをギロっと横目で見ながら、水を口にするテギョンだった。
そのテギョン達のいるクラブの横道に一台の車が止まった。
車から出てきたのはジヌクだった。そして、一人で裏口へと歩いて行った。
｢よう、遅かったなぁ。｣
突然、暗がりから声が聞こえてきた。
｢悪い。ちょっと用が合ってな！｣ジヌクは平然と返した。
｢なんだよ。女か？｣
｢違ぇーよ。それより例の手に入ったか？｣
｢あぁ。これだ。｣
暗がりにいる人物は、ジヌクに銀色のカンケースを渡した。
｢お前、急にどうしたんだ？こんな物用意させて。｣
ケースを渡した人物は心配そうに聞いた。
｢ちょっとな。｣
｢まさか、まだ引きずってるのか、姉さんの事。もう５年だぞ。｣
｢判ってる。判ってるよ。けど…もう戻れないんだ…｣
ジヌクはケースを見つめながら、拳を固くした。
｢…ごめん。けど、俺はお前の友達だよ。忘れるなよ｣
｢有難う。｣
｢ところで、お前、彼女出来たのか？｣
｢なんでだよ？｣
｢だって、助手席にいるのって…｣とミニョを指していた。ジヌクはとっさに彼から見えないように体を盾にした。
｢ただの友達だ。お前には関係ない。わざわざ悪かったな。｣
そう言って、車に戻ろうとしたジヌクに声が飛んできた。
｢ジヌク、一つ言っておく！決して量を間違えるなよ！｣
｢解ってるよ。｣
そして、車に乗り込んだ。
まだミニョは寝ていた。ジヌクはそっとミニョの顔に触れた。その温もりは懐かしさを思い出しさせるものだった。
｢姉ちゃん…｣
その時、携帯がどこからかなった。
一方、シヌは順調に撮影が終わったので、車を取りに事務所へ戻ってきた。階段を下ってると、丁度リンとイ室長が戻ってきた。
｢リンさん！｣
シヌが声をかけた。
｢あら？シヌさん。もうあがりですか？お疲れ様です。撮影順調そうですね。｣
｢えぇ、お蔭様で。ところで…｣
シヌはそう言いながら、辺りを見渡した。リンは気付いたらしく、
｢ミニョですか？彼女なら今日は現場解散しましたよ。｣
｢どうしてですか？｣
シヌは珍しいと思った。
｢それがね、どうも彼から誘われたみたいで…読み合わせだって言ってたけど、いまいち胡散臭いのよね。｣
｢彼って…ジヌクの事ですか？｣
｢そうよ。他に誰がいるのよ。｣
リンの答えを聞いた瞬間、シヌは携帯を出し、ミニョにかけた。
ジヌクは、ミニョの鞄からひょこっと出ていた携帯をそっと取り出した。着信はシヌからだった。今まで穏やかだったジヌクの顔が、一転して険しくなり、おもむろに電話に出た。
｢ミニョ！今どこにいる？｣
シヌが心配しているのが分かった。
｢ミニョ…？｣
｢シヌ先輩、ジヌクです。すみません、ミニョは少し酔ったみたいで寝てるんですよね。これから家まで送るのでご安心を。｣
シヌは、ミニョの携帯からジヌクの声が聞こえた事にとてつもない怒りと恐怖が襲った。とにかく二人きりにさせてはダメだと心が警告していた。
｢では先輩、失礼し…｣
｢待て。俺がそっちに行き、ミニョを引き取る。今どこだ。｣
｢大丈夫ですよ。｣
｢いいから教えろ！｣
シヌは珍しく声を荒げた。
｢おぉ、恐いですよ！じゃあ275号線のロッテ公園で待ってます。｣
｢分かった。15分で行く。｣
シヌはそう言って切った。
ジヌクはミニョの携帯を強く握りしめていた。
すれ違い
最初に沈黙を破ったのは、ジヌクだった。
｢ごめん。ちょっとあたっちゃった。困ったよね。ごめん。｣
ミニョは首を横に振った。そんなミニョにジヌクはそっと触れた。
｢なんか、ミニョって浄化槽だね。｣
｢えっ？｣
｢ミニョ見てると、気持ちが綺麗になっていくみたいだよ。｣
｢だったら、良かったです。もう落ち着きましたか？｣
｢あぁ。なんとか。後少しだけだし。｣
その時、スタッフから声がかかったのでミニョは向かおうとした。｢ミニョ。その…今日、終わったら少し付き合ってくれないか？困らせたお詫びに…｣
｢少しなら良いですよ。ほら行きましょ。｣
ミニョもなんだか真っすぐ合宿所に帰りたくないと思い、すぐに返事をしてしまった。が、良かったのか？と思うとテギョンの顔が思いだされた。
"テギョンさんも遅いって言ってたから、ちょっとくらい大丈夫よね。"そう言い聞かせた。
｢お疲れ様でした。今日はアップです！また明日１０時に｣
スタッフの声が響く。テギョンはペットボトルの水を持って、控室に向かった。
｢テギョン！私明日の衣装を確認してもらうから、先に行ってて！｣
ワンが後ろから叫んでた。そんな声を聞いているのかいないのか、テギョンは携帯をチェックしていた。ふと手が止まり、急いでボタンを押した。
『テギョンさん！お疲れ様です。もう撮影終わりましたか？私は終わったのですが、少し寄り道して帰りますね。そんなに遅くなりませんから ミニョ』
｢寄り道だと！ふん、テジトッギのやつ随分言うようになったな！｣
と、少しムッとしていたテギョンだったが、内心はミニョに会えないのが寂しくて堪らなかった。
｢帰ってもあいつがいないなら、意味がないし。事務所に行くか。｣
そう考えたテギョンは、着替えて車のキーを持ち、控室を出た。
その次の瞬間、
｢テギ～ョン～さ～ん！｣
ジアがテギョンに抱き着いて来た。テギョンはいい加減うんざりだった。
｢お前、マジでいい加減にしろよ！｣
｢お前だって！なんか恋人みたい～。｣
｢ふ、ふざけるな！｣
そう言って、逃げようとしたテギョンの腕をがっちり捕まえたジア。
｢待ってよ。今日友達がどうしても来てほしいって場所があるんだけど、私一人じゃ心細いの。だから、テギョンさん一緒に来て！お願い。｣
｢誰が行くか。他の奴にでも頼め。｣
すると急に泣き出したジア。
｢だって、あんまり男の人でこんな事頼める人いないんだもん！｣
そんな二人をすれ違って行く人々がジロジロと見て行く。テギョンはこのままでは誤解されそうだと思い、仕方なく行く事を伝えた。
｢テギョンさん！有難う。｣そう言って、ジアは腕にギュッとしがみついた。
ジヌクがミニョを座らせた。
二人はとっても落ち着いたバーに来ていた。後ろでは、グラスを片手に、ダーツやビリヤードをやっているお客がちらほらいた。ジヌクはマスターと顔なじみらしく、座っただけで、さっとカクテルが出てきた。ミニョも進められたが、断ってたが、マスターから｢特別だよ｣と勧められたカクテルを飲んだ。意外に口に合い、ミニョにしては珍しく自ら進んで飲んでいた。
｢ここにはよく来るの？｣
｢僕の安らぎ場所。｣
｢こんな所来るのね。意外かも。｣
｢さ迷ってた僕をマスターが助けてくれたんだ。それ以来来てるかな。｣
｢さ迷ってたって？｣
｢自分を失った？って感じかな。もうなにもかもが幻に見えて、信じられなくなって、逃げ出した。｣
｢なんだか、解るかも…。｣
と言いかけているミニョは、段々と眠そうにしていた。
｢ミニョ？大丈夫？｣ジヌクが声をかける。
｢う…ん。なんか…飲み過…ぎたかも…｣
と言いながら、伏して寝てしまった。
｢ごめん。ちょっとあたっちゃった。困ったよね。ごめん。｣
ミニョは首を横に振った。そんなミニョにジヌクはそっと触れた。
｢なんか、ミニョって浄化槽だね。｣
｢えっ？｣
｢ミニョ見てると、気持ちが綺麗になっていくみたいだよ。｣
｢だったら、良かったです。もう落ち着きましたか？｣
｢あぁ。なんとか。後少しだけだし。｣
その時、スタッフから声がかかったのでミニョは向かおうとした。｢ミニョ。その…今日、終わったら少し付き合ってくれないか？困らせたお詫びに…｣
｢少しなら良いですよ。ほら行きましょ。｣
ミニョもなんだか真っすぐ合宿所に帰りたくないと思い、すぐに返事をしてしまった。が、良かったのか？と思うとテギョンの顔が思いだされた。
"テギョンさんも遅いって言ってたから、ちょっとくらい大丈夫よね。"そう言い聞かせた。
｢お疲れ様でした。今日はアップです！また明日１０時に｣
スタッフの声が響く。テギョンはペットボトルの水を持って、控室に向かった。
｢テギョン！私明日の衣装を確認してもらうから、先に行ってて！｣
ワンが後ろから叫んでた。そんな声を聞いているのかいないのか、テギョンは携帯をチェックしていた。ふと手が止まり、急いでボタンを押した。
『テギョンさん！お疲れ様です。もう撮影終わりましたか？私は終わったのですが、少し寄り道して帰りますね。そんなに遅くなりませんから ミニョ』
｢寄り道だと！ふん、テジトッギのやつ随分言うようになったな！｣
と、少しムッとしていたテギョンだったが、内心はミニョに会えないのが寂しくて堪らなかった。
｢帰ってもあいつがいないなら、意味がないし。事務所に行くか。｣
そう考えたテギョンは、着替えて車のキーを持ち、控室を出た。
その次の瞬間、
｢テギ～ョン～さ～ん！｣
ジアがテギョンに抱き着いて来た。テギョンはいい加減うんざりだった。
｢お前、マジでいい加減にしろよ！｣
｢お前だって！なんか恋人みたい～。｣
｢ふ、ふざけるな！｣
そう言って、逃げようとしたテギョンの腕をがっちり捕まえたジア。
｢待ってよ。今日友達がどうしても来てほしいって場所があるんだけど、私一人じゃ心細いの。だから、テギョンさん一緒に来て！お願い。｣
｢誰が行くか。他の奴にでも頼め。｣
すると急に泣き出したジア。
｢だって、あんまり男の人でこんな事頼める人いないんだもん！｣
そんな二人をすれ違って行く人々がジロジロと見て行く。テギョンはこのままでは誤解されそうだと思い、仕方なく行く事を伝えた。
｢テギョンさん！有難う。｣そう言って、ジアは腕にギュッとしがみついた。
ジヌクがミニョを座らせた。
二人はとっても落ち着いたバーに来ていた。後ろでは、グラスを片手に、ダーツやビリヤードをやっているお客がちらほらいた。ジヌクはマスターと顔なじみらしく、座っただけで、さっとカクテルが出てきた。ミニョも進められたが、断ってたが、マスターから｢特別だよ｣と勧められたカクテルを飲んだ。意外に口に合い、ミニョにしては珍しく自ら進んで飲んでいた。
｢ここにはよく来るの？｣
｢僕の安らぎ場所。｣
｢こんな所来るのね。意外かも。｣
｢さ迷ってた僕をマスターが助けてくれたんだ。それ以来来てるかな。｣
｢さ迷ってたって？｣
｢自分を失った？って感じかな。もうなにもかもが幻に見えて、信じられなくなって、逃げ出した。｣
｢なんだか、解るかも…。｣
と言いかけているミニョは、段々と眠そうにしていた。
｢ミニョ？大丈夫？｣ジヌクが声をかける。
｢う…ん。なんか…飲み過…ぎたかも…｣
と言いながら、伏して寝てしまった。