ぐっすり寝てたのだが、
母に呼ばれたので起きたのだ。
それはちょっと切羽詰まったような声で、
父が倒れたときにや、
私が倒れてるんじゃないかと心配して呼ぶ時の声だった。
かなりはっきりと聞こえたのだけど、
目覚めるのにやや時間を要した。
起き上がって「はいはい」と返事をしながら表に出たのだけど、
母の姿はなかったのだ。
いくら多少時間をかけたとはいえ、
姿が見えなくなるほどの時間ではない。
裏を確認しに行ったがいない。
おかしい。
母屋に確認に行くと、
母はテレビを見ながら昼ご飯を食べていた。
「呼んだ・・・?」
「ううん、そっちに行ってもない。」
「・・・・・あ、・・そう・・・。」
めっちゃはっきり聞こえたんだけどなぁ・・・。
どこからの声だったのか。
普通なら、ただの夢か勘違いで終わらせるところだ。
それは記憶が蘇るときに似ていた。
20代前半までは、私は母が大好きだったのだが、
それ以降はどんどん煙たい存在になっていった。
父に対しては愛しいかわいい大好き全開なのだが、
母に対しては全く愛情を持てないでいた。
いずれ母が亡くなった数十年後の自分が聞いた声。
母に対する何もかもが風化した後に思い出す、
なにもかもをひっくるめて思い出す残像のような感じだった。
そういう存在がいた、という懐かしい感じ。
親に対する子供の愛情も、
その後の重さや煙たさも、
全てがリセットした感じがした。