不死身のマシンガンギターWILKO JOHNSON
ウィルコ・ジョンソン
初めて聞いたのはいつだか分からないけど、ちゃんと認識したのは大学の時、
毎日授業をサボってMFCの部室でズブロッカ飲んでたんだけど、
酔っぱらうことにも飽き、珍しく授業に出たら、机の下に何かあるから
なんだろう?と思って覗いたらレコードショップの袋があった。
たまには授業に出てみるもんだぜ!
と中を覗いてみると、Dr.Feelgoodの「Stupidity」と
MILK SHAKESの「Shimmy Shake」が入ってるアルバムと
あとなんか忘れたけどあと数枚あった。
なかなかマニアックなラインナップ。相当な好きものだなこの持ち主は。
家に帰ってレコードに針を落とした瞬間、ウィルコのギターのサウンドにぶっ飛んだ!
チェーンソーのようなのこぎりサウンドの今まで聞いたことないようなグルーヴ満点のギター。
どうしても映像観たくて、VHSをゲットしたら、ニワトリみたい顔して頭をカクカクさせながら
前へ後ろへ右へ左へ、天井からのカメラではまるどカールコードが伸び縮みしてヨーヨーのようだ。間奏では、ギターをマシンガンのように構えてオーディエンスを撃ちまくってる。
大股開きジャンプがまたカッコイイ!ヤッベエ!なんだこいつは!?
ギターは6弦を束で一本の弦のように弾いていて、肘からアップダウンを永遠に繰り返している。
和音だけじゃなく単音が出てる時もあるからほかの弦をミュートしながら弾いてるんだ!
だから空ピックの音と単音の音が混ざってあんなソリッドでグルーヴィーなサウンドが出るんだ!
としばらくはピックを捨てて真似した。多分みんなも真似してたと思う。
すっかり虜になった。MILK SHAKESにもはまり、万力で「Shimmy Shake」をカバーしたりした。
めんたいロックみたいなかっこいいロックンロールバンドがイギリスやアメリカにもいっぱいいるんだ!
とワクワクしたのを覚えてる。それからというもの、パブロックやガレージパンク、サイコビリーなんかを聴きまくった。
ぶっちゃけ、今までのミュージックは暫くどうでもよくなった。それくらいの衝撃だった。
それまでは、ストーンズやジミヘン、ドアーズにめんたいロック、ロンドンパンクにニューヨークパンク
もちろん彼らのルーツミュージックであるR&RにR&B、ブルーズやロカビリーなんかも聴いていたが
パブロックとガレージパンクはエアポケットのように未知の世界だったからマジではまった。
そういう音楽がかかるクラブに遊びにいくようになり、バンドも自然とそっちよりになった。
そんな出会いをもたらせてくれた机の下に忘れられたレコードに本当に感謝している。
あれは誰のだったんだろう?持ち主はバンドをやっていた女性の先輩だったような気がする。
返却して、自分で買いなおした気もする。が、当時はずっと酔っぱらっていたからよく覚えていない。
そんな大好きなウィルコはフジテレビに入ってから仕事でも絡むことができた。
僕がディレクター人生を捧げた「FACTORY」にはWilko Johnson Bandで出てくれた。
対バンは、シーナ&ザ・ロケッツ,デキシード・ザ・エモンズ,POLYSICS。
後に、ジョンスぺやホワイトストライプスなんかも出演したが、
多分、ウィルコが「FACTORY」に出演した初の海外アーティストだったと思う。
O-EASTのレッドシューズの周年ライブでも収録させてもらった。
新宿リキッドルームのワンマンライブを収録させてもらい、特番にしたこともあった。
これはロックなカメラマンを集めて、とても綺麗な映像に仕上がった。
2013年、すい臓癌を発表し、ウィルコが大好きな日本で最後にライブをやりたいと緊急来日し、
レッドシューズでシーナ&ロケッツや花田さんやプライベーツやベンジーやチバユウスケと共に
「トーキューセッション」をやった時も超満員で今にも割れそうなレッドシューズの中で
汗まみれになりながらライブ収録した。
そのあとにもグラスゴーとロンドンでライブがあるということで、どうしても最後まで見届けたくて、
ロンドン在住の女性ディレクターの家に泊めてもらい、二人で撮影した。
帰国して、京都磔磔のライブも併せて4時間の大作を作った。
数少ないロックのわかるフジテレビの男、「SMAP×SMAP」のプロデューサー黒木彰一も
大絶賛してくれ、「これなんか映画祭に出した方が良いですよ」と言ってくれた。
その年フジロックで元気な姿を見て、3キロもの腫瘍を除去し、手術に成功した、
と聞いてからというもの、ウィルコは不死身なんだ。ずっと生き続けるに違いない、と思っていた。
こないだこそウィルコは最近何やってんだろうな?
そろそろ日本来てくれないかな~なんて言っていたところにこれだ。
なかなかショックだ。
ずっと生き続けるような気がしていた。
ウィルコは不死身なんだと。
不死身のウィルコが死んだ。
あのマシンガンギターがもう見れない。
ギターソロで目をひん剥いてニワトリのように縦横無尽に炸裂する姿ももう見れない。
ステージを降りた時の気難しく思慮深くジェントルなありのままのウィルコももう見れない。
ただただ悲しい。
本当に多くのことを教えてくれ、新しいロックンロールの世界に導いてくれてありがとう。
お疲れ様です。安らかにお眠りください。
合掌