
あらすじ:明治40年、日本地図完成のために立山連峰、劔岳への登頂に挑む、陸軍測量手の柴崎芳太郎(浅野忠信)ら7人の測量隊。山の案内人、宇治長次郎(香川照之)や助手の生田信(松田龍平)らと頂への登り口を探すが、生田が足を滑らせけがを負ってしまう。大自然の厳しさを見せつけられた測量隊だったが、柴崎と宇治はある言葉を思い出し……。(シネマトゥデイ)
想像を絶する過酷な悪条件下においての北アルプス立山連峰ロケ。3000メートル級の北アルプスがそびえ立つ地を舞台にCGや空撮を一切使わずに「劔岳 点の記」は撮影されたといいます。数多くのメディアでこのことは紹介されていたので目にされたかたも多いのではないかと思います。
「八甲田山」「鉄道員」など日本映画界にその名を知られるキャメラマン木村大作氏の初監督作品です。原作は新田次郎。
香川輝之、浅野忠信をはじめ、松田龍平、仲村とおる、役所広司といった、今、旬の俳優陣の起用にもこの映画にかける意気込みの大きさを感じます。撮影隊はスタッフ、キャストともども山小屋に雑魚寝、そんな演技を越えたところにもリアリティを求めた木村氏。そんなものづくりへのこだわりはかつて助手として加わった黒澤組を彷佛とさせるものです。デジタル全盛の今、あえて現場にこだわった作り手の気概に期待はいやがおうでも高まります。
地図をつくるためだけに挑んだ男たちの前人未到であったはずの剣岳登頂。
「なにをしたかではない、なにをしようとしたかだ」
劇中幾度かくりかえされたこの名台詞は現在のフルデジタル時代を逆行してみせた、それこそ命を懸けた作り手の気骨あふれた情熱におきかえることもできます。もしかしたらこの作品を最後に今後このような作品は姿を消してしまうのかもしれない。そいう意味においても「劔岳 点の記」という作品は映画製作における真骨頂を垣間見せてくれた金字塔的作品といってもよいものでしょう。
木村監督をはじめスタッフや俳優陣の映画づくりへの迸る情熱と揺るぎない自信に限りない尊敬の念を抱かずにはいられません。監督をはじめスタッフ、キャスト、この映画づくりに関わったすべての人々、企業に対し「仲間たち」とだけクレジットしたエンドロールもまた彼等にはとてつもなく粋で名誉ある贈り物でだったにちがいありません。
そんな「意義」はじゅうぶんすぎるほどにに果たした作品ではあると心から思います。

しかしです。なぜか映画が終わってみてなぜか胸に迫ってくるものがさほど大きくはありませんでした。映像においてはほぼ完璧といってもよいものでしたし「そこにいてそこで撮った」ことによる言葉を失うほどの「本物の美しさ、凄さ」にはただ圧倒されるのみでした。
が、いざ話の展開に目を向けてみるとむずかゆいようなテンポの悪さはいかんともしがたく、随所において編集からくると思われるぎこちなさを感じていたのもまた事実です。では肝心の人間ドラマに関してはどうだったのかというとこれもまた満足できるものではないというのが個人的な感想です。極限状態における人間同士のガチなぶつかり合いや緊張感も希薄。たとえば若い測量隊員(松田龍平)の無謀な単独行動による遭難事件の前後においてもチームのみならず当の本人までがどこか他人事の様相。ときには鬼となってメンバーを殴り飛ばしてでも統率してゆかねばいけないはずの測量部リーダー柴崎芳太郎(浅野忠信)の謙虚でみょうに礼儀正しく飄々としたキャラは緊迫した物語を随所で盛り下げます。それに反して一人気を吐いていた地元の案内役長次郎(香川輝之)の泥臭い演技は好感持てたのですけれど、どうにもこうにも浅野忠信とのタッグがシンクロしていかない。上手い具合に凸凹コンビとして機能していればさらに心動かされるものになっていたかもしれません。
それとも有無をいわさぬ圧倒的な大自然の前には人間ドラマさえも小さく見えていただけということなのでしょうか。
クラッシック音楽を使ったサウンドトラックに関してもここぞという使いどころを外していた印象を拭えません。吹き荒ぶ風と深々と雪を踏み締める足音だけでじゅうぶんという場面もしばしば見られました。
スクリーン上ではじめて観た観客の心に震えるような感動をあたえることができ、観てよかった、素晴らしかった、泣けた、面白かった、笑えたと感じさせてくれるものであれば理屈なしによい映画なのだと評価できると思います。それが温かいお茶を飲みながら机上で造られたCG作品であろうと、極寒の吹雪の中死線を彷徨った撮影で紡がれた作品であろうとです。
たとえば山岳ものにはお約束の雪崩や崩落のシーンでは、本物にこだわりすぎたためあきらかに迫力不足。このあたりなどは百歩譲ってでもCGの多大な効果を利用すべきだったのではと素人ながら強く感じたことです。
感動を呼ぶ映画というよりは記録映画に近い余韻が今もぼくを包んでいます。
果たして「劔岳 点の記」という類い稀な作品、今後各方面でどのような評価を得てゆくのでしょうか。
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★★★
この映画に並々ならぬ情熱をかけたという浅野忠信の演技、あいかわらず重みが感じられませんでした。ぼくにはどうにも浅野忠信の魅力が理解できないようです。ファンのかたには申し訳なく思います。でもオマケのような宮崎あおいとの温いシーンは果たして必要だったのかな。はたまた余談ですが仲村とおる率いる山岳会のメンバーたちの身に付けていた衣装っていったいぜんたいなんなんでしょう(大汗)この過酷な山登りはあれでは到底無理でしょう。ピクニックじゃないんだから。これは観ていただければわかります、龍平くんの野球帽もね,要チェックです(滝汗)
しかしフィルムの威力は凄い。今までお目にかかったことのない神々しいまでの北アルプスの美しさは必見です。これだけでも観る価値はあるんですけれどね。
公式サイト/http://www.tsurugidake.jp/
監督:木村大作/キャスト:浅野忠信、香川照之、宮崎あおい、小澤征悦、井川比佐志、國村隼、夏八木勲、松田龍平、仲村トオル、役所広司
原作;新田次郎