はじまる | 献食菜集

はじまる

鼓動の聞こえる 海の中に
うかんでいた ことを
私は 忘れてしまった

 

どこからか 私を 呼ぶ声を 
聞いていた ことも
私は 忘れてしまった


人間 から  もうひとり 
人間 が  まるごと出てきた 
それも 忘れてしまった


私は いつから はじまった


はじめに すべてが あった
私の からだも あった

すべてに 名前が あった
私にも 名前が あった


私は すでに はじまっていた


始まりの わからぬ
「わたし」 という 時間
その一端は たった 「今」
すなわち それは 「私」


思い返さねば 過去 は生まれず
思い返さねば 記憶 は生じぬ

思わねば 何も起こらず
思わねば 何処へも行けぬ


私は いま はじまった


はじまる 前から 在るものに
もういちど 名前を つけなおす

ともに はじまった ものに
うつくしい 名前を つける


自分の 細胞を ひとつ残らず かきまわし


私は なんども はじまる