初蛾 | 献食菜集

初蛾

ほうれん草を

熱湯に入れ


すぐ横の 窓を見ると
蛾が 台所の明かりに誘われて
じっとしている


寒い冬がおわり
蛾が 羽化し始めたのだ


それにしても 動かない


触角 目 はら 翅
顔を近づけ まじまじとみる

もう何万年も このかたち


蛾は 蛾を 繁殖し
ヒトは ヒトを繁殖する


何の ために 同じところに いて
何のために 生を 繰り返すのだろうか


あと数ヶ月すれば 暑い夏が
やってきて
君は もう死んで いないだろうが
私も 何をしているか わからない


この光は 贋物です


朝になったら 

太陽にむかって
飛んでいくように


本当の 

光に むかって
飛んでいくように