壁の空 | 献食菜集

壁の空

壁

荻を薙ぎながら 電車が通り過ぎて行く


細い街道と 並行して走る線路の
消え行くところには
秋の青いそらが つよくひかり


その 逆光は
線路の土手に生える 雑草を 
すべて シルエットにしてしまった


川向こうの 街は
すべてが近景に なり


空が壁のようになり
街は壁に張り付いた絵のようだ


澄んだ空気は 光線の反射を
あますことなく 伝え


にぎやかで  また さわがしく
雑然として 多様な
見慣れた風景の

かくれたところまでを
つぶさに みせる


あらゆる場所を ヒトの欲望で
覆いつくそうとする世界に 
私は 生れ落ち

 
世界とはこういうものだと 勘違いしたまま
放置されている


こんなに 強い光に さらされ
こんなに あらわに 見えているのに

何も見たくない ために 
同じことを繰り返すこと を望む


そして 自分の体に 言葉を 
出し入れしながら
そのことに
気づかぬように するのだ