【3/16 地獄に仏】


親子の会話の後は、電話を変わってもらい

H君のお母さんと今後どうするか相談をした。


H君のお母さんは燃料が無くて動けないと言う。

避難先は三春。

じょにさんの家からは30分はかかる。




ひとまず電話を切って、出来ることを模索した。




私は、タクシー会社に電話した。


4件電話したのだが、どこも燃料不足で三春までは行けないと断られた。


三春なんて普段だったら、目と鼻の先なのに!

そこにH君の家族がいるのに!

逢わせてあげられないなんて!


しかし、茫然自失の一歩手前に事態は急変した。




「タクシー来てくれるって!」




じょにさんがタクシー会社に掛け合ってくれ、一台来てくれることになったのだ。


「やった~~~~~~~~!!!!!」




早速、H君のお母さんに連絡をして、住所を聞き、H君には急いで身支度をさせた。



H君は着の身着のままの薄っぺらい服の上、素足だった。


靴下と毛糸の帽子、綿入れ、手袋、マスク、

毛布も持たせたと思う。



まさか!と思う位滅茶苦茶なコーディネイトだったが寒さや被爆を思えば関係ない。






タクシーが到着したとき、雪は本格的に降っていた。



運転手さんに住所を伝えた。



「三春まで行ったら帰ってこれないかもしんねーけど

事情が事情だがらしかたねーべ。おれにまかせろ」



そのタクシー会社の名前は「十文字タクシー」だったと思う。



心からの感謝の気持ちを伝え、くれぐれも無事に送り届けてくれるようにお願いした。



雪はどんどん強くなっていたが、運転手さんの顔は自信に満ちていた。






それまでの数日間で、すっかり家族のようになっていたH君との別れは

とても寂しかった。



暫くして、H君の乗ったタクシーが無事に三春に着いたと連絡が来た。



H君のお母さんとは、その後、長電話になった。

それまであった色々なことを話して、必ずまた会おうと言い電話を切った。。



しかし、今後、それぞれの道のりが交差することはないだろう。



私の中でH君は一番大きな三男坊



いつでも、いつまでも、H君を応援している。








現在、H君は家族と共に鹿児島で暮らしている。





to be continued・・・