「ナターシャ・グジーさんの歌声をを十和田で、、、」

これは、六ヶ所村ラプソディーに出演され、
十和田で天手子米(てんてこまい)と言う完全無農薬の米作りを続ける苫米地ヤス子さんの呼びかけで始まりました。

十和田には「かけはしの会」というのがあります。

これは、東日本大震災で被災し、十和田で避難生活をしている人々の為に、十和田の有志が立ち上げてくれた会で
避難生活を少しでも快適にして欲しいという気持ちで
様々なイベントを企画してくれています。

そして、ヤス子さん、かけはしの会、十和田市が協力し「ナターシャ・グジーコンサート@十和田」が開催されることになりました。

私に前座出演のお話があった時、何の躊躇もなく了解したのですが
その時、私にはバンドは無く
ゼロからのスタートとなりました。

しかし、その日から
ナターシャのコンサートに焦点を合わせたかのような不思議な巡り合わせが重なり
歯車が噛み合い出しました。

リハを数回重ねる内に段々と色が出てきて
本番では今までで最高の演奏が出来ました。

ホールでの演奏と、音響さんがナターシャ専属という安心感から
LIVEは本当に心地よく
音に身を任せる事が出来ました。

そして何より、メンバーのハートが一つになった音が、
会場に鳴り響いた感動は
上手く表現出来ないくらいの素晴らしいものでした。


薄暗いステージの上
第一声を上げた瞬間に
会場に張り詰めた空気が
溢れました。

シーンと静まり返った会場に
masaのコントラバスが静かに滑り出し
私はただ身を任せる。

歌は「寿」
浪江の地酒「磐城寿」に纏わる創作民謡です。

「磐城寿」を造っていた鈴木酒造店は請戸にある酒蔵です。
津波で跡形も無くなりました。
しかし、杜氏の鈴木さんは新たな土地で
また「磐城寿」を作るために奔走しているそうです。

そんな話を聞き、降ってきたのがこの曲でした。


続けて「ナニャドヤラ」

これは、旧南部藩領内の盆唄。
とても不思議な唄で、私は青森に来て、この曲を聞いた瞬間から大好きになりました。

意味を調べると「ヘブライ語由来」「祭りの夜の男女の唄」「なせばなるなさねばならぬなにごとも」
などなど、学者によって様々な説があります。

私には「なせばなるなさねばならぬなにごとも」と聞こえました。

被災してから数ヶ月。
私は、母として、
一人の人間として
様々な顔を持ち
その都度、心とは裏腹な表情で
前に進もうと、がんばり
そして、身動き取れないほどに疲れ果てました。

自問自答を繰り返していました。

でも、有る時
心の闇と戦う事をやめました。
流れに身を任せる事だけでも
前に進む事ができる。

私の周りの人は、いつも皆私を励ましてくれる。
別に何をいうわけでも無く
ただ、笑ってくれている。

それだけで充分なんだって事に気がつきました。

そんな気持ちを詩にのせての
「ナニャドヤラ」

yamさんのパーカッションととmeguちゃんのエレクトリックバイオリンも加わり
摩訶不思議な音の世界で
言葉に命を吹き込みました。


2曲歌い終わった処で、大きな拍手を頂きました。


mcを挟み
最後の曲は、ロシアの唄。

「ДОРОГОЙ ДЛИННОЮ」
(邦題「長い道を」「悲しき天使」)

むかし別れた友人の思い出にひたる歌。だそうですが
今回、ナターシャと私の共通点で有る「被爆者」をジプシーに擬えて作詞しました。

ドロドロと始まり
ロシアならではのリズムとメロディーはどんどんと加速して行き、最後には会場の皆さんから大きな手拍子を頂きました。

ロシア語の歌詞に
口は回らず、目が回りましたが
そんな事お構いなしに
ホールの中が一つになり
感動は頂点に達し、頭がボーッとして、正に「無」の境地でした。

どうやって、ステージを後にしたか覚えていないのですが
袖に戻るとそこに、ナターシャが居ました。

ロシア語の歌詞を歌った事を
とても喜んでくれました。

今まで長い間音楽に関わって来たけど
こんなに魂を込めたLIVEは
正直始めてでした。

皆に核の恐ろしさを知って欲しい。

二度とこんな事故が起きないように
全ての人にきちんと届いて欲しい。

まだ、終わっていない悲劇を
忘れないで、残されたものは
子孫に語り継いで欲しい。

そんな気持ちでした。

ヤス子さん、山端さん、梁田さん、ナターシャ、A+friendsの皆さん、スタッフの皆さん、こんなに素敵な機会を与えてくださり、ほんとうにありがとうございました。

それから、十和田市役所の皆さん、愛するマーズファミリーの皆、新藤さん、
応援に来てくれて本当にありがとうございました。

また、応援メッセージを下さった、福島の皆
愛してます!

そして、家族に心からの感謝を!!!

最後に、masa、megu、yamさん
本当にお疲れ様でした!
サイコーだったよ!!!
これからも摩訶不思議な世界を共に作りましょう♪

AISA



「ナニャドヤラ(終わりなき旅)」

真っ黒な闇が記憶を照らす

あの日、起きた事は夢ではない。



闇の主がそう嘲笑った

日は昇り
そして沈み
幾度くりかえそうとも
あの日には戻れない

昔の仲間は帰ろうと言った

私の口は空っぽだった



私には振り返りたくない記憶がある

朝になっても消える事の無い悪夢がつきまとう

私達には
帰りたい家がある

帰れない町の中に



「かわいそう」
と、誰かが言った

別に「かわいそう」ではない

何故なら、私は生きているから

あなた達と同じ生きているから

これからも生きていかなければならない道連れに

「かわいそう」よりも欲しいものがある

それはあなたの笑顔

疲れた時に
そっと微笑んでくれるだけでいい



根無し草になってしまった私達には、ジプシーの詩がよく似合う。

別に悲しくはない
別に悔しくもない

ただただ、
「何故」を繰り返えし
旅を続けるのだろう

答はどこにもなくて、どこにでもある。

心の中の闇がそう言った。

ナニャドヤラ ナニャドナサレノ ナニャドヤラ