【リセット】
浪江のある相双地区はサーフィンのメッカで四季を問わず全国からサーファーが集まる。
私が浪江に住み始めて数年経った頃、音楽仲間の誘いでサーフィンの世界大会でのLIVEに出させてもらった。
私を誘ってくれたのは、双葉に住んでいた「みーvo.」と言う人で、地元ではちょっとした有名人だった。
彼は50を過ぎてまだまだ現役のサーファーでミュージシャン。
自分で家も建てるし、車も直してしまう。
そんな、彼の作る曲には常に海があり、愛がある。
地震から3日目の朝、みーvo.さんから電話が来た。
彼は11日の夜に家族+1と飼っていた大型犬2匹と小型犬を連れて双葉を脱出したらしい。
車中泊しながら九州に向かうと言っていた。
私にも早く遠くに逃げたほうが良い。とアドバイスをくれたが何しろ燃料が入らない。
燃料の事を尋ねると
みーvo.さんのディーゼル車は灯油で走らせたらしい。
私は、ディーゼル車は灯油でも走ると言う事をこの時、初めて知った。
潤滑剤としてサラダ油を少々混ぜるといいとか、、、
安否確認の折に雑学がひとつ増えた。
日頃からサバイバルな生活を好んでいた彼は
「人生リセットだよ!リセット!」
と、明るい口調で言っていたが
これまで積み重ねてきた多くのモノを捨てての旅立ちは
相当辛かったろうと思う。
双葉、大熊、請戸、北泉、、、
相双の海で色々なイベントに誘ってもらい、一緒に歌わせてもらった。
本当にいつもいつも楽しかった。
みーvo.さんは
泳ぎが苦手な私に「サーフィンはイイよ。やりなよ」と言い、海の話をしてくれた。
海の話になると、みーvo.さんがなぜ、あんなにもストイックな生き方をしているのかなんとなくわかったような気がした。
怠けると自然のしっぺ返しにあうのだ。
海をよく知るみーvo.さんが海を甘く見る事は無かった。
生命の源である海は
時として命を奪いもする。
自然の脅威を知り、共に生きた先人の言い伝えが生きていれば守られる命がある。
しかし、そんな先人の知恵さえも生かされず、見切り発車で作られた原発。
その結果、放射能を方々に撒き散らしてしまった。
そして、地域に雇用と経済的な豊さをもたらした代償として残されたのは、人の住めなくなった土地。
7/4に一時帰宅の為、浪江に帰ったのだが、皮肉な事に人の住まなくなった町には、緑が生き生きと育ち、花は咲き乱れ、鳥の声は遠くまでこだましていた。
私は、人の居なくなった浪江町を見て回り思った。
人は地上で一番迷惑な生き物なのかもしれない。
地球に生かしてもらっているんだと言う事を忘れて
我が物顔で母なる地球を穢していると。
自然に対する「恐れ」と「愛」を忘れ、「奢り」と「願望」で騙し騙される世の中。
それが、現在私達が暮らす世界。
福島の原発事故をきっかけに人は本気で考えを改めなければ、必ずまた同じ事が繰り返される。
その為には、まず原発に頼った生活から脱しなくてはならない。
この際少々の不便さは甘んじて受けよう。
to be continued...
p.s.
海を愛したみーvo.さんの自宅は
東京電力福島第一原子力発電所から4km程の緑豊な場所にある。
4月に入ってからチャリティーソングを作ったと連絡があった。
どうやら、彼のリセットは順調にいっているみたいだ。
[we can stop it FUKUSHIMA]
http://www.youtube.com/watch?v=fkjIBgWYUUQ&feature=youtube_gdata_player