110期決勝の感想および解説 | やうやう白く

110期決勝の感想および解説

はじめに

決勝の指揮は経験が物を言います。

しかし、君主あるいは指揮官として決勝の指揮に携われるのは毎期2人だけ。110期ともなればのべ220回の機会があるわけですが、重複を含めればその数は更に減ります。勝ち進めるかは様々な要素や運が絡むので、経験を積むと言ってもなかなか容易ではありません。

そこで、110期決勝で何が行われていたか、どのような意図が絡み合っていたのかを解説する事で、より深い理解を得るための一助となればと思いこれを書いています。

所属がパチモンだった為パチモン視点で、便利屋に関することは国宛や方々から聞いた話からの予測等が混ざる事もありますが、なるべく公平かつ客観性を持って書くつもりです。

 

拠点について語る前に、まずこのマップの重要都市である中央4都市について比較します。

①上庸

このマップの最強都市

夏口、新野のどちらと相対する事になっても北側からの打通はほぼシャットアウト出来るので北方面の後方防衛が非常に容易で打通戦に圧倒的に強い。

 

②夏口

上庸、江夏のどちらと相対する事になっても後方が深く、ある程度は後方を維持出来る。上庸に比べて打通ルートが多い為、上庸より一段落ちる。

 

③江夏

新野、夏口のどちらと相対しても打通に弱く後方が維持しにくい都市。唯一にして最大の利点は相手の拠点を上庸から引き摺り出す事が出来る事。逆転の余地があるという一点において新野に勝る。

 

④新野

中央4都市の中で最弱。上庸を抜けなければ負け

上庸、夏口が強い為、江夏と相対する可能性は除外する。

上庸と相対する場合、後方の巴蜀5都市となる上に容易に掘られる形。荊州は掘られやすく後方としては安定しない。更に涼州、揚州は掘れても冀州には手が届かない為、打通戦においてのメリットはほぼない。

 

パチモン側の拠点は中央4都市の内、上庸しか領有していなかったので自動的に上庸に決定。

便利屋側の拠点は前述の理由からほぼ夏口と予想していましたが、思い切りの良い便利屋の指揮官が新野を拠点に選択しました。

ゲーム終了後にその指揮官さんから聞いた便利屋側の作戦とその意図を紹介します。

 

【稼働率と人数に差があるので後方打通で視覚的にパチモン側のモチベを落とす事で稼働率を下げ、返す刀で上庸一斉を行い上庸を落として短期決着を目指す】

 

これを聞いた時、私は勝ち筋が見えないと評しました。何故かと言うと、対処があまりにも容易だったからです。

便利屋側が西を塗ってる間にまずは業周辺を塗って業の安全を確保して施設を建て直して後方拠点化。夏口から南東部を塗り変えれば後方徴兵地は容易に確保出来るし、東側をほぼ押さえているので視覚的不利もなくモチベーションも下がらない。残されるのは上庸対新野という圧倒的に有利な形での戦争に仕切り直す事が出来ます。

では実際にどうなったのか振り返ってみると、便利屋側の打通に対してパチモン側は打通阻止に動き、東部切り取りは遅々としていました。

もし便利屋の想定通りに北西部を一気に塗り替える事が出来ていたなら、慌てて東を塗りに行ったパチモンの隙を突いて上庸を落とす事も出来たかもしれません。

指揮というものは相対的であり水物でもあり、その時々で正解が変わるものです。今回は打通対応して足止めし、その間に東を塗り替えるという方法が結果的に最適解となりましたが、状況次第では最悪の対応になり得たし、あの打通は普通なら西涼まで掘れて当たり前のものでした。

勝ち筋の見えない作戦と思っていましたが、今一歩のところで決まりかけていたかと思うと、便利屋側の思い切りの良い指揮は流石の一言でした。

ちなみに西涼まで掘れていたとしても、独自で動いて業周辺を切り取り業の安全の確保に走った人達がいたので、結局は成功する事はなかったでしょう。気付かれにくい部分ですが、最悪を想定した隠れたファインプレイと言えます。

 

便利屋は稼働率に問題を抱えていたという言葉通り、本来なら決まって当たり前の打通が失敗に終わり、守備の薄さを突かれて新野が陥落します。

 

ここで選択肢。

便利屋の撤退先は何処?

当時の勢力図から候補地は江夏、襄陽、永安の3つで、最も逃してはならない場所は当然中央4都市の一つである江夏です。パチモンは真っ先に江夏を潰しに行きました。

壁が半壊していた事もあり江夏は早々に陥落し、便利屋は永安に撤退しました。

 

ここで次の選択肢が現れます。

便利屋が勝つ為にその日押さえなければならない都市は何処?

勿論、中央4都市の新野か江夏です。

新野or江夏をシンデレラ前の攻防で押さえるにはどうすれば良いか?

両睨みが出来る襄陽を持って最終ターンを迎える事が重要です。

パチモン側も襄陽を不安定に状況にする為、一度は落とす事に成功しますが、便利屋がカウンターから襄陽に守備を乗せ、安定させる事に成功。

こうなるとラストターンは読み合いであり、自国の事情の押し付け合いです。

パチモン側からすれば一点集中された場合、一都市に対する動員数で劣勢となる為、どちらを優先するかの選択を強いられました。

新野と江夏、優先すべきはどちらか?

便利屋は江夏を狙っていました。パチモンの国宛は江夏を優先すべし、という声が大多数でした。理由は前述の都市評価を見ての通り、江夏を相手に持たれてシンデレラに入った場合、翌日の朝から新野or夏口対江夏という、最強都市上庸から引き摺り出された状態での拠点戦となるからです。江夏自体はそれほど強くありませんが、万が一にも上庸に移住を許した場合、それが敗着となります。ほぼ追い込んだ状態から上庸を取られるというのはそれほどにメンタルダメージの大きな出来事なのです。

結果は江夏、新野両取りというパチモンからすると最高の結果となりました。

 

便利屋にとってはまたまた選択を強いられる事となりました。シンデレラ明けの拠点を何処にするか?

選択肢は永安、襄陽、江陵の3つ。

便利屋が勝つ為には中央4都市のいずれかを得る必要があります。

逆に言えば、パチモンは便利屋に中央4都市への進出を許さなければ勝ちです。その為、まず江夏、夏口、合肥を廃墟化しました。これで江陵拠点の選択肢が消えます。江陵拠点は合肥から江夏・夏口への連結が肝要なので3都市全てを潰された状態で拠点にする程の価値はありません。

次に宛、漢中の廃墟化を行ました。これで永安の選択肢が消えます。

結果、便利屋の拠点は襄陽となりました。こうなればあとは益州、荊州を掘って拠点を落とすだけの力押しで終わるので、事実上、シンデレラでの廃墟化作業で勝負は完全に決まっていたと言っても良いでしょう。

パチモン側のエラーに期待するしかない状況だった便利屋と、エラーを起こさずに押し切ったパチモン、という順当な結果となりました。

しかし、人数差がある中でパチモンがエラーを起こしていた場合、勝利を掴み取る可能性のある動きをしっかりとしていた便利屋は素晴らしい国だったと言えるでしょう。

もし初動の打通対応に失敗していたら?もしシンデレラで江夏を抑えられていたら?もし廃墟化に不足があったら?パチモンの敗着となったかもしれない場面は案外少なくありません。

 

 

ここからはifの話。

仮に上庸対夏口の拠点戦となった場合、戦力に大きな隔たりがなければ便利屋が勝つと思っていました。

上庸のストロングポイントは北からの打通に対しては鉄壁で、南からの打通に対しては新野さえ守れば防げるという形です。逆に言えば新野に守備を10枚積まれたら後方は簡単に掘られた事でしょう。宛と長安のカウンターに手間取っていたことからもそれは明らかです。

そうなると新野に守備を積ませない事が肝要となりますが、新野はカウンター徹底!程度の対応では間違いなくやられます。決勝の打通に際しては陥落の3分後に守備が10枚積んである事は往々にしてあります。新野を守りたいのであれば江夏を常に不安定な状況にする事です。打通対応は足場を崩すのが基本です。上庸対夏口で向き合った場合、打通の足場は新野ではなく江夏です。江夏に積んでから新野を攻めるのと、安定した江夏から新野に積むのでは1工程の差があり、非常に対応し易くなります。

打通対応に対しては足場を崩す事、足場が何処なのかを常に意識しましょう。

そもそもの話、打通で先手を取られないようにしましょう。

一生南から打通してたらそもそも新野に守備乗せられる心配はないので。