ネタバレのある、備忘録のような映画の感想です。


アキ・カウリスマキ監督の映画、今年は『枯葉』を劇場で鑑賞しましたが、作品を見る度にファンになっていきます。

映画に出てくるちょっとくすんだ色づかいの雰囲気も、素人のような役者さんも好きです。そして、何より監督の市井の人々への眼差しが温かい。

アキ・カウリスマキ監督はフィンランド人だけど、ル・アーヴルはフランスの都市なんですね。バゲットやバンドネオンを奏でるBGM、トリコロールカラーで縁どられたカフェが登場していたけど、そこにいる人たちは議論好きでおしゃべりなフランス人じゃなくて、やっぱりアキ・カウリスマキって感じの寡黙な人たちばかりでした。

ヨーロッパでは移民問題って深刻なんですよね。貧困故に海外から命からがら自由と安全を求めてヨーロッパに密入国する。そしてそれが犯罪に繋がる。でも、それでも、人種や国境を超えて人との繋がりに希望を持ちたいという監督の期待が感じられました。

アフリカからの密航船に乗ってル・アーヴルにたどり着いた少年イドリッサはロンドンにいるお母さんに会うため、警察官に包囲されても危機一髪逃げ出します。靴磨きを生業とするマルセルやそのご近所さんたちははイドリッサを匿うのですが、果たしてマルセルはロンドンにたどり着けるのでしょか?

マルセルの優しい妻は病気で入院しているのですが、病室に出て来る小説がフランツ・カフカの短編集でした。

入管に収監されているイドリッサのお爺さん(もちろんアフリカ出身)に会うために、マルセルが甥っ子になりすまし自らを「私はアルビノだから」と主張したり、職業を弁護士と偽るのはユーモラスだったなぁ。

それから、無表情で無口なのに、ライブの時にはキメキメのノリノリなこととか、モネ警視が果物屋さんに聞き込み調査するついでにパイナップル買ったりすることとか、クスッと笑えました。

このモネ警視、イヤな奴だなぁと思っていたけど、最後ナイスで、MVPあげたくなってしまいました。私もモネ警視が愛するカルバドス好きになりそうです(飲んだことないけど、笑)

マルセルが飼っているワンちゃんのライカがとってもかわいいんですが、調べるとカウリスマキ監督の愛犬だそうです。


控えめに美しく桜の木が、ささやかな幸せにピッタリなエンディングで、感動しました。奇跡って起こるんだ。今年亡くなられたフジコ・ヘミングさんがおっしゃっていた「私は今まで猫や犬に優しくしてきたから、彼らが恩返ししてくれたのかも。」というのをふと思い出しました。

ボン・ヴォヤージュ、イドリッサ!私もそう言いたいです。