懐かしい骨/小池 真理子 | Bon livre –いつか最良の一冊と出会う–


新装版 懐かしい骨 (双葉文庫)


※ネタバレふくみます。

一人暮らしだった母が急死し、古い実家を取り壊した。
すると物置の下から白骨死体が発見されて…。

事件自体は禍々しいけれど、犯人探しも被害者探しもない。
兄と妹は、どちらにも見当がついていたから。
仲のいい兄妹ではなかったけれど、
どうやって警察に“犯人”がバレないようにするか結託し始める。

出土したのは“20数年前の骨”なので、
素人の私からしても、そう簡単に身元は判明しないのでは、
と考えられたのであまりハラハラ感はないです。

家庭的で人気の歯科医だった父と、父を献身的に支えた母、
思春期だった真吾と子供だった早紀子、
広い家に陽当たりのいい庭、そんな家庭風景に
自分が経験したわけでもないのに懐かしさをおぼえる。

幼少の早紀子が父の歯科医院におもむいた時の行動が
子供っぽくていいなぁ。

小説に出てくる子って妙に賢いから、
事件のとっかかりをがっちりつかんだり、相手に何か仕掛けたりするのに、
どうしていいかわからなくて帰るっていう判断力の乏しさに逆に安心する。

あのとき自分がちゃんと確かめていれば…って歯がゆかっただろうけど。

私は歯並びがめちゃくちゃに悪いから、美和に憧れよりも嫉妬を抱くわ。
特徴的なぶん、白骨になってもすぐ見分けてもらえるけどね!
無縁仏にならないもんね…殺されて埋められても…心配ないもんね…

半分くらい読んだところで、兄妹がほぼ犯行の様子を確信していたから
ここからどう展開するんだ?とワクワクした。

全体的に大きな衝撃はない(白骨が見つかるという大ニュースの割に)。
犯人を見つけるっていう攻めじゃなく、犯人を隠すっていう守りの話だからね。
でも家族の機微っていうか、失われた日々への思いに浸ることができて、
ひとつひとつの家族に歴史があるんだなぁとしんみりした。

自分が今、これまで育った家族と離れ、新しい家族を作るスタート地点にいるから、
数十年の重みをもって感傷的になったのかもしれないなぁ。