和菓子のアン/坂木 司 | Bon livre –いつか最良の一冊と出会う–


和菓子のアン (光文社文庫)


※ネタバレふくみます。

和菓子が大好きだから、読んでて楽しかったなぁ。
季節ごとの和菓子の意匠の凝り方やこめられた意味、
見えなくても浮かんでくるきらきらつるつると美味しそうなお菓子たち。

地元の商店街より都会の百貨店のが働きやすいと考えた理由が謎だし、
そんなことで辞めてちゃどこでもバイトなんて出来ないよ!って箇所もあるけど。

まー、販売の仕事を1ヵ月でクビになった私が言うなってかんじ?

私だってみつ屋で働きたいよ!
株に魂を注いでようが、オトメンだろうが、元ヤンだろうが、みんないいひとじゃん。
他のバイトがギャルとチャラ男ばっかりで、
彼氏がいないことを陰でバカにされて笑われた私の話でもしようか?

私だったら立花くんとめっちゃ仲良くなりたいしね。
和菓子のバレンタインていうのも素敵ねー!なんて盛り上がりたいわ。

同僚と話してたんだけど、「自社製品を愛せる」って、働くうえですごく大きい。

うちの会社は請負みたいな業種なので、「自社製品」というものがなく
こだわりなんか捨てて言うとおりに作って早く終わらせたいみたいな、惰性で仕事してるもん。

親譲りのあんこ好きで子供の時から和菓子ばかり食べている。
そんな甘党坊ちゃんの私ですから、和菓子屋さんだったら楽しく働けるだろうなぁ。
またクビになるかもしれないけど。計算できなさすぎて。
今年の父の日も、両口屋是清のささらがたと千なりを父に贈ったよ。

デパートの飲食売り場にいくと、確かに洋菓子屋さんのほうがにぎわってる。
和菓子の奥深さも味わい深さも、この小説を読んだひとに伝わるといいね。

杏子は、和菓子の専門用語や由来に「それダジャレじゃん」とかツッコむけど
縁起や験担ぎなんて、ダジャレやこじつけばっかりだよね。
何百年も前から日本人はそんなふうに言葉遊びをしたり、
小さい幸せを感じたりしてきたんだなぁってすごくおもしろい。
師匠の回が大好き!もっと知りたいわぁ。

これを読んだのと同じ頃、書店で『一日一菓』という本を見つけた。

一日ひとつ、365日の和菓子と器が大きな写真で載っている。とてもきれい。
派手じゃないけど、このちょこんと盛られたお菓子が
ひとつひとつ大きな意味をもっていると思うと、食べるときに背筋が伸びるね。

ちなみに12月24日はクリスマスツリーを模した上生菓子だったから
あっ、これが自由なやつだ!って思わず笑った。


一日一菓