ボクの妻と結婚してください。/樋口 卓治 | Bon livre –いつか最良の一冊と出会う–


ボクの妻と結婚してください。


※ ネタバレふくみます。

癌が見つかり、余命6ヵ月を宣告された三村修治、45歳。
残された時間で、妻と息子にしてやれることとは…。

6ヵ月ってめちゃめちゃあっという間だよね。
いきなりそんなタイムリミットを告げられても、呆然としてしまう。
私は独身だから、とりあえずその日のうちに退職届だして、スキップしながら旅行いくけどね!
幸か不幸か、ちょうど半年も遊べばなくなる程度の貯金しかないぜ!1年はむりだぜ!先に餓死するぜ!

でも、家族がいたら。パートナーや子供をもつ人は、考えたくもない問題だろうなぁ。

三村の職業が放送作家ということで、仕事仲間と会っていくうちに妻子に贈る企画をひらめき、
成功へ向けて動き出すのだが、仕事人間つーのは、死にかけてても仕事から離れられないんだな…。

著者自身が放送作家ということだから、テレビ業界の描写はリアルなんだろうなぁ。

私はテレビっ子で、ほとんど一日中テレビを観てることもあったのだけど、
いま考えると、おもしろかったからじゃなくて、他にやることがなかったってだけなんだよね。
だから、一人暮らしを始めるときにテレビを買わなかった。観たい番組がないという以上に、
家族も友達もおらず、一人で淋しく過ごしてたころの気持ちを思い出すのが怖かったから。

『テレビはみんなで観るのが一番楽しいのだ!』という修治の信条がとてもよくわかる。
誰かとツッコミを入れながら観れば、たいしたことないバラエティでも笑える。

「出演者、制作者、視聴者が幸せじゃねー番組なんてクソだ!」
「どんな番組もお茶の間をイメージして作れ!」
という修治から後輩への指導も正しいと思うんだけどさ、それできてる?って話よ。

最近のテレビって、視聴者が求めてるものとちがう、視聴者をバカにしてるって批判が多いじゃない?

この小説のなかでも、業界人がおもしろいとしている話や企画のほとんどが笑えなかったし…
活字で読んでいるからで、実際に話で聞いたらおもしろいのかもしれないけど。
作り手と視聴者の感性の乖離をひしひしと感じますねぇ。テレビ離れもするわけですねぇ。

なので「おもしろくない?これおもしろくない?」って押しにうんざりしつつ、
ストーリー自体はとても楽しめた。自分の妻の結婚相手を探すなんてさ。

それより入院したら?ていうか早く家族に宣告してあげたら?ってこっちが心配になっちゃう。

私はなんだかんだいっても優しいから、心のほうがとてもきれいな仕様になっているから、
こういう家族ものに弱くてですね、まんまと泣かされてしまうのですよ。
息子に教えを与える父親。妻に敬愛を伝える夫。ずるいでしょ。泣くでしょ。

結婚ていいな、家庭っていいな、と思わせる戦略もあるのかな。
私はどっちかというと、自分には向いてないなという思いが強まってしまったけれど。

好きなタイプっつーのがねー。具体的にないからねー。
上司にも「条件がなさすぎるから見つからないんだよ」って言われたしねー。
じゃあ、私にぞっこんで他の女なんて見えなくて家事と子供が好きな岡田将生ください!

題材は重いけど、とてもライトな文章なので、すらすらと読みやすかったです。