●尺八の師匠の言葉
生意気ながら、
「いや、音は出るし、自分でも練習できるから、
もうお稽古いらないか〜…」
と私は思っていたのですが、、、
ある時、
お師匠さんにこう言われます。
「お稽古は続けた方が良いよ。
尺八を“本当の意味”で吹けなくなる。
尺八に限らず、技術というのは、
日々誰かに教えてもらって、
正しい型を身につける、修正してもらう。
自分だけでやると、
我流になって、あっという間に総崩れになる。
それに、 お稽古の時間ってね、
技術を教えるだけの時間じゃないんだ。
尺八ってさ、正直、今の時代、
やらなくても良いでしょ?
他に楽しいことも、
優先すべきこともたくさんある。
でも、僕が伝えたいのは、
単に技術とか型だけじゃなくて、
1,000年以上前から続く
尺八、日本の歴史でもある。
大きいこというとね。
そこが楽しいし、大事だから。」と。
はっとした私はそこから、
時間の許す限り、
お稽古にも通うように。
お師匠さんのその言葉は、
尺八だけでなく、
現在の仕事にもいきています。
そして実は今回、
西先生から「日本の技術・伝統の継承」について、
興味深いお話を伺いました。
お師匠さんの話と
重なることが多く、
ぜひ皆さんにお伝えしたいと思ったので、
ご紹介します。
なぜ技術を“受け継ぐ”ことが大事なのか?
なぜ伝統儀式を数千年も“続ける”ことが大事なのか?
そのヒントは日本人と“クジラ”の歴史に
隠されていました。
ぜひお楽しみください。
***
技術の継承
日本 vs. 欧米
話は100年前にさかのぼります。
当時はアメリカもイギリスも、
ノルウェーやデンマーク、スウェーデンと同じように、
大西洋にてクジラを獲っておりました。
それは乱獲とでも言えるような状況でした。
その結果、クジラがいなくなってしまったのです。
困り果てた欧米諸国は、今度は太平洋に目をつけ、
どんどんと進出していきました。
そしてそこでもクジラの乱獲を行いました。
彼らの狙いはクジラの油です。
それをあらゆる機械の動力として、
またランプの燃料などとして使っておりました。
油だけ絞って、肉は捨てておりました。
一方、日本人はクジラの乱獲など行なっておりません。
またクジラを一頭捕まえたら、
それを余すところなく全て使いました。
油も肉ももちろんですが、
骨もヒゲも全て使い切って、
最後にはクジラに対して感謝するのです。
これが日本の捕鯨です。
日本と欧米とでは、
捕鯨に対する感覚や姿勢が全く異なるのです。
捕鯨技術
日本の捕鯨技術は世界最先端であり、
日本だけでなく、世界を救う技術です。
1つの産業が潰れると、
復旧させるには相当な労力がかかります。
資金だけの問題ではありません。
製造や加工、流通、販売網、人材など
様々な点に関連しております。
それぞれはまた独立して存在しているのではなく
「伝統」や「文化」として、存続しているのです。
伊勢神宮が20年単位で行う
式年遷宮がありますね。
あの儀式があるからこそ、
宮大工の技術が数千年続いているわけです。
何代にもわたっていきます。
捕鯨技術も似ています。
捕鯨をいったんやめてしまうと、
その技術は永遠に失われるでしょう。
遺産としては残りますが、
生きた文化ではなくなります。
タンパク源
捕鯨技術は人類の生存にとっても不可欠です。
今は何不自由なく、
当たり前に食糧がある時代だと考えられていますが、
それは一部の先進国だけの話です。
その先進国でさえ、
現在の途上国が豊かになり、
人口が爆発的に増えて行った場合、
どうなるかわかりません。
食糧危機はすでに起きていると言っても
過言ではないでしょう。
そんな時に注目されるのが
クジラのタンパク源です。
捕鯨技術を持っているか否かは、
国の食糧安全保障政策にとって
重大な意味を持つでしょう。
人々の生存にとって不可欠なのです。
危機を目の前にして、
クジラだけ獲ってはいけません、
というのは理想論です。
今、クジラを獲ることが出来る国は
ほとんどありません。
日本とあと数カ国でしょう。
海と接していない国々が多数決でもって
「捕鯨はダメだ」と言っているのです。
とてもおかしな話だと思います。