さて、そこからはずっと目をつぶっているので、何が起きているのかは耳と感覚でしかわかりません。

歯茎の切開って、いわゆるメスで スーって切る感じかな?と思っていました。

でも、なんだかグイグイッって押し切られているような、そんな感覚です。

痛くはありませんが、押されているような感じでした。

周りに誰が何人いるのかもわかりません。

先生は、独り言なのか誰かに指示しているのか、聞こえても素人にはわからない言葉を発しながら続けています。


「あった、これだね。

 色の違うここが病気の部分だね」

いよいよ、腫瘍だか嚢胞だかに辿り着いたみたいです。

ここからは、まるで工事か大工仕事みたいに、ガンガンガン!

打ち砕かれる程ではないけれど、なんだかかなりの力で私の口の中で何かが行われています。

こりゃ、「ちょっと大変な歯の治療」じゃない。

検査と言う名の手術だ。

って、気付くのが遅すぎます、私。



途中で、先生が助手さんに色々指示を出します。

「そうじゃないよ、もっと近くに立って。

 手をもっと返さないと。そうじゃないよ・・・もっと。

 そうそう、それでいい」

忘れてました。(と言うわけじゃないけど、改めて認識しました)

ここ、歯学部附属病院でした。

ドクターがベテランで、研修医とかが見に来るわけでもないから気にしていなかったけど、歯学部で育てているのは歯科医だけじゃないんですね。

この助手の人たちも、先生が教育中だったんですね。

そう言えば、麻酔の前に汚れ防止のエプロンをかけられた時にも、

「衿が汚れないように、衿に折り込むようにかけ直して。

 エプロンする時は、いつもそうやるんだよ」

って教えられていましたっけ。




そんなこんなで手術?作業?は続いていましたが。

先生の独り言だか、確認だかの言葉の中に、

「・・・ん?」

と言う小さな疑問形が混じりました。

それからしばらくして、

「…袋の膜もないね」

と言う声も聞こえました。

(言葉は、うろ覚えです)

それでも、しばらくすると病変組織を取り終えたようです。

「終わりましたよ。あとは縫うだけだからね」



縫合がすんで、A先生に顎を両側から顎クイ、ではなく、ぎゅぎゅぎゅっと揉まれました。

それでおしまいでした。

ようやく目を開けると、

「少し休んでてね」

と言われ、先生は、カルテを書くためにパソコンに向かいます。

その間に助手さんに術後の注意を伝えるように指示します。

「お疲れ様でした。

 まだ麻酔が効いていますので、1時間から2時間くらいは・・・・」

「まず起こして。

 説明する時は、必ず起こしてからね」

あ、やっぱり附属病院だった。

この先生が育ててるのは、ドクターじゃなくてこっちなのかな。


椅子を起こして、説明の前にうがいです。

強いうがいはダメです。

軽いうがいも、2回終わったところで

「そのくらいでね」

と、止められます。


この時点で、時計は15時50分くらい。

麻酔から30分ちょっとと言うところでした。


うがいの後で、若い助手の女性から、

麻酔が切れるまでは飲食するな。

出血を招くから、入浴や飲酒、スポーツはダメ。

等々・・・一通りの注意を受けます。

その間にカルテ入力を終えた先生が、今日の説明をしてくれます。

それは、意外な内容でした。


「何もありませんでした」

え?


 も一度、続きます。