冬になると野菜が甘くなることは、どなたもご存知のことでしょう。

 しかし、何故甘くなるのか理解していらっしゃる方は、存外に少ないようですので、ここでごく簡単に解説してみましょう。

 
 植物はその体の細胞内に大量の水分を保持し、その資源を最大限に活用することで、その生命を維持しています。(これについては動物も同じ)
 
 しかし、水は氷点下で凍るものですから、植物の細胞内の水分が凍ることで、自身の細胞が壊れ、結果、枯れてしまいます。

 そこで、越冬性の植物は、あらゆる手段を構築して、自身が枯れることを防ごうといたします。

① 敢えて地上部を枯らす

 土の中に養分を蓄えた根を残すことで、冬を乗り切り、次の春に再び体を作る

② 体の形を変える

 例えば、ロゼッタ状に葉を展開して、強く寒い季節風をやり過ごそうとする

③ 細胞内の糖度を上げる

 ある植物は、一定程度の低温を幾度か感知すると、彼らの体内に「冬スイッチ」が入ります。

 その結果、でんぷん合成系が不活性化し、かつ、糖合成系が活性化します。 と同時に、光合成で蓄えたエネルギーを、寒さで衰えた自身の生長に、ではなく、細胞内に蓄積し始めます。

 この蓄積の末、細胞内では水分量が減り、糖が増え、又、ビタミン、ミネラルの量も増加します。

 これが、冬野菜が甘くなる仕組みです。

 勿論、限界があって、砂糖水でも凍る温度以下になれば、細胞も凍りますし、度々凍れば、矢張り、壊れてしまいます。

 ですから、品目それぞれに耐寒性の違いはあれど、凍み切る直前のどの野菜も、食物としての最大限のポテンシャルを発揮していることが多く、ボンディのお客さんの中にもチンゲン菜、春菊など、霜枯れ直前の葉もの野菜を殊更求めたがる食いしん坊なお客さんも多くいらっしゃいます。

 ついでに言うと、植物が寒さから身を守るための手立てはまだまだあって、葉の表面を覆うクチクラ層やアントシアニン系の色素の形成量の増大も、極めてポピュラーな方策ですので、冬になると、葉ものの葉っぱのテリ、赤や紫の色みがますます強くなってくるのは、そのせいなのです。

 毎冬、植物達の冬化粧の、その姿、その色、その味わいに触れるたび、ボンディは彼らの生命の健気さに心打たれます。

 脂の乗った魚を食べても、ですけど♡

 さて、昨日、夏ものの畑の片付けをしていて、レアなアイテムを見つけました。

 初夏に収穫を終えた後にひこばえを伸ばしたスイートフェンネルと、イタリアンパセリ。

 凍み切る直前の彼らは、実に、ど根性な姿っぷり。

 葉先を齧ってみると、フェンネルはまるでミントガム並みの甘さ! そのほろ苦さを楽しむイタパセですら、甘い!

 甘ーいフェンネルの葉やイタパセ、食べてみたい人、いますかー?

(最後の写真は、昨日うちの奥さんが作ってくれたフムスです。すごく美味い!)