1999年、ボンディが宮城県南部の村田町に就農した頃、この地域で猪による農作物ヘの被害などほとんどありませんでした。 人々はだれも畑周りに柵を巡らす必要なく、「のんきに」農耕に勤しんでおりました。
しかし、地球温暖化による積雪量の減少、中山間地域の過疎化による、山仕事の減少、耕作放棄地の拡大、狩猟者の減少等々の時代背景の下、元々繁殖力の高い猪は、その後の20年で爆発的にその個体数を増やしました。(東日本大震災も大きく影響しました)
その間、山と里の間の不明瞭な境界を超えて里に下りてきた彼らは、次第に人々の暮らしに馴れ、先日のボンディ投稿「おしらせ三つ、たこ三つ」でも書きましたが、山より里で餌を探すことを好む個体も増えて、結果、農作物ヘの被害が年々甚だしいことなってしまいました。
中でも、ボンディファームは、自然農的価値観に基づいて営まれているので、その圃場は他の畑とは独立した山あいに位置していることも多く、又、野の草の鋤き込みを主体とする草生栽培なので、自然生態系ヘの親和性高く、猪も「安心して」畑を荒らすことが出来るようで、これまでも人様の畑より被害の程度が大きかったのです。
就農後、次第に増えた猪と彼らからの農作物の食害に対抗すべく、ボンディが最初に施したのが防獣ネットです。 その後何年かでネットを破って畑に入ることが度々起きるようになり、電気柵に切り替え。 そして今回、その電気柵でも最近はほとんど効果の無い有様だった、かぼちゃとじゃがいもの畑二ヶ所を、ワイヤーメッシュの柵で囲むことにいたしました。
ワイヤーメッシュとは、細い鉄筋を格子状に溶接した鉄筋製の網。コンクリートを打つ時の補強材となる建築資材です。 ここ数年、村田辺りでも、電気柵の次なるバリケードとして使われるようになりました。
畑二ヶ所、合わせて二反余り、1×2mのワイヤーメッシュ、計138枚、メッシュ間を繋ぐ鉄筋支柱と合わせて、760kgの重量、コメリドットコムで13万円もの出費と、友人と二人で述べ二日間の作業とで、先週末、三度目のバリケード完成、と相成りました。
さて、ワイヤーメッシュで囲ってから、かぼちゃ畑での被害はピタリと止みました。柵の周りでは、猪がうろうろしていた足跡が見つかるばかりです。 きっと、来年のじゃがいもの作付けも、割合安心して行えることでしょう。
しかし、ボンディは知っています。けもの達との智慧比べに終わりはないということを。 5年後か10年後か、きっといつかワイヤーメッシュ柵を破る個体が現れることでしょう。(踏み倒すのかもしれません。飛び越えるのかもしれません)
それでもやっぱり、その時も、ボンディずんつぁん(娘の歳を考えると、10年後はきっと「ずんつぁん」になっていることかと♡)は老体に鞭打って、第四のバリケードを施しているのでしょう。 自分のことですから明瞭に分かります。
天気とのかけひき、虫や目に見えないいきもの達とのかけひき、けものとのかけひき、、、
もっぱら自然の中での我々の農の営みとは、他者との「かけひき」の複合的連続体に他なりませんから、農の者は等しく、それらかけひきに飽くことは許されません。 かけひきに勝ったの負けたの、その度に一喜一憂することでしょうが、その一喜一憂すらも「愉しむ」のが、農の最大の醍醐味、と言えることでしょう。
農に携わる全ての方々、これからも、どうぞお励み下さいませ。
やはり、ここでも、
「ピンチはチャンス。
チャンスはピンチ。」
ゆえに。