秋は旅行が多い。団体で行く企業や○○の会などの研修・視察・懇親・慰安旅行などの宿泊施設は都市や新興観光地等はホテル型、地方の温泉地は旅館型(名前はグランドホテル等だが)が大半だ。
 団体につきものの宴会は旅館が大広間、ホテルはパーティー会場、2次会は宿泊施設内のクラブ・スナックまたは歓楽街へ繰り出る。また、個人の場合は地方でも最近はビジネスホテル等に泊り、夕食は外に出て地元の郷土料理というスタイルが多いのではないか。
 現在の若い人のライフスタイルから将来は絶滅するのではないかと思われる団体温泉旅行もシニア世代には非日常性に捨てがたい郷愁がある。㈰旅館に到着する前にバスの中で酔える。㈪浴衣(寝巻き)に着替えてから大浴場に行く(自宅では風呂に入ってから着替える)㈫夕食前に入浴、大腸菌の濃いお湯を浴びる(子供の頃、お風呂に入る前によくお尻を洗えと教えられたが、大浴場の浴槽に入る前に身体を洗う人3割、桶で浴槽のお湯を汲んで身体に掛けるだけの人が4割、脱衣して乾燥した身体のままザブンと入る人が3割いるため大腸菌濃度は測定不可能な程濃い)㈭寝巻きを着たまま朝ごはんを食べる(病気の時以外は親から怒られた。ただし、料金の高い旅館では新しい浴衣に朝起きて着替える)。㈮朝から酒を飲める(自宅で朝から酒を飲んでいたらアルコール依存症と見られるか、家人から見放される)などである。
 本誌「地元昆虫記」の梅山秀人さんは7月19日号で「今の日田がその多さで一番多いセミになっている。また、沖縄でも大型で一番多いセミはクマゼミ。この蝉は南国の種なのだ。ひと昔前まで、東京にクマゼミはいなくミンミンゼミが都内の蝉だった。最近、東京にもクマゼミが進出してきた。分布の北限が北上している」と地球温暖化によるクマゼミの北上について触れている。日経新聞8月2日号にも生息地の北上についての記事がある。大阪府の調査によると市内に生息するセミのうち9割がクマゼミでアブラゼミは1割にすぎなかった。1980年ごろを境に逆転したという。気象情報会社ウェザーニューズが昨年、調べたところ茨城や栃木県といった関東北部や新潟県、北陸地方からも目撃情報が寄せられた。ところが大阪市立自然史博物館の初宿成彦学芸員が和歌山、福岡、鹿児島の複数地点で調べたところ場所によってはアブラゼミの方が多く見つかった。セミの天敵であるヒヨドリなどの野鳥の増加を都市緑化が招いたのが原因という考えがある。アブラゼミは襲われそうになると近くの木に隠れるのに対し、クマゼミは遠くに飛び去る習性を持つ。都市の緑化設計の空間がクマゼミに逃げるスペースを提供する一方、アブラゼミには隠れ場所がないという状況を生んだ。結果アブラゼミだけが鳥に食べられやすくなったという。複雑で繊細な生態系は人の手で簡単には作れないのだ。
 日田ではお盆の13日は、仏前にらくがんや果物、野菜、そうめん、盆だごなどをお供えし、ご先祖様を迎えに行く。盆の間中、そうめんや盆料理をあげる。だごは、盆の期間中は、もち米だけの粉で作り、豆の粉をまぶしてお供えするが、15日には、白い長だごを作って供える。また、ささげ、いもの茎もお供えし、精霊様送りをする。
 「たらおさ」は、魚のたらの胃とえらの部分を干したもので、一見、食べ物には見えない。これを水でもどして、お盆の前日、どこの家でも甘辛く煮付ける。大鍋でじっくり時間をかけて煮るので、えらの部分もたいへん柔らかくなり、干物特有の匂いも気にならなくなる。魚本来の味と干物特有の太陽のうまみとがないまぜになった味わい深い食べ物である。北前船に乗せられて博多から日田に運ばれ、日田独自の「たらおさの煮付け」として根付いた。大分市近郊では13日のお迎えの日は酒饅頭をつくる。14日はやせうまを仏壇に供える。15日は仏壇にやせうまともち米の粉のにぎりだんごを供える。にぎりだんごをやせうまでくびっておみやげに持ってお帰りになるという(日本の食生活全集大分の食事)。筑紫野市では13日は迎えだごをつくり、もちを搗く。仏さまにらくがん、梨、ぶどう、盆柿、なすび、きゅうり、豆、そうめん、迎だご、盆料理などを供える(同福岡の食事)。
 食文化には地域交流の実態がある。継承したい生活史である。