ベランダで野菜づくりをしている人が増えているという。
ホームセンターには各種のプランター、用土、肥料、野菜苗
などの品揃えが豊富である。わが家の小さなベランダにも
レタス、チシャ、ピーマン、ツルムラサキ、ブロッコリー、
キャベツ、メキャベツ、ハクサイ、イチゴなどを植えている。
立派に育って食用になるのを期待しているが、残念ながら鑑賞
だけで終わってしまう場合もある。文字通り無農薬なのでちぎ
りたて、むしり立てをそのまま食べている。直売所で買ったも
のと比較しても鮮度は抜群である。
 このように自分で作った野菜を料理して食べるのを「自産自消」
という(新語アナリスト・亀井肇)。「地産地消」は1980年代
初期に農林水産省が「地域内食生活向上対策事業」として4年間に
わたって、地域で生産された農産物や水産物を、その地域内で消費
することが必要であると喧伝していた。しかし、85年のプラザ合
意よる円高とガットによる関税引き下げの圧力の強まりにより、
90年代初期には国内農産物より安価な輸入農産物がスーパーに溢れ、
「地産地消」は消えてしまった。その後イタリアから持ち込まれた
「スローフード運動」により再び復活したのである。
 「道の駅」等の直売所ではスーパーより新鮮な野菜が買える。
それよりさらに新鮮な「自産自消」は「百均」や「ユニクロ」、
「PB商品」などの低価格戦略とも共有する消費思想があるに
違いない。
 地元の農産物、海産物を直売している「道の駅」は1993年4月に国が道の駅の制度をスタートしてから16年を経た。現在は全国917カ所が登録されているという。道の駅は道路交通の安全確保や地域振興を目的に、市長村長らの申請を受けて、国土交通省が設定する。設置の要件は、24時間利用可能な駐車場、トイレ、公衆電話を備えることで、農産物直売所やレストランなど様々な地域振興施設を敷設する。設置主体はほとんどが市町村だが、都道府県や第3セクターが設置主体になっているところもある。「駅」部分を道路管理者、地域振興施設を市町村が分担して整備する方式は「一体型」と呼ばれ、すべてを市町村が整備する場合を「単独型」と言い、「一体型」が全体の半数以上を占める。
 日本で最初の道の駅は山口県の「道の駅 阿武町」。九州地域に設営されている道の駅を売上高でみると1位は熊本県の「七城メロンドーム」が1,334百万円、2位が福岡県の「むなかた」で1,280百万円、3位は福岡県の「歓遊舎ひこさん」の750百万円(日経グローカル10月5日号)。宗像市や商工会などが出資する第3セクター「まちづくり宗像」が運営する「むなかた」にはタイやアジ、ヤリイカなどの玄海灘の海産物や地元の農家が朝収穫したばかりの新鮮な農産物を目当てに訪れる買い物客139万人の6割は市外からだという。高速無料化の時代には地域特産の強さがさらに格差を広げるに違いない。
 「会社は社員の幸せのためにある」ことをモットーに50年間1度のリストラもなく、とことん環境に配慮した工場をつくり、「100年カレンダー」で遠くを見通す経営をしてきた企業がある。昭和33年に創業され、寒天メーカーという斜陽産業のなかで、創業以来48年間、連続増収増益という記録を打ち立てた「伊那食品工業」という会社である。寒天の国内マーケットの80パーセントのシェアを誇っている。48年間増収というのは、むずかしいとはいえ、あり得ることだが、増益というと、利益額そのものも伸び続けているということであり、かつ経常利益率は10パーセント以上という、まさに「奇跡の会社」だ。
 ここ数年、企業の不祥事が多くなっている。記憶にあるだけでも乳製品の雪印乳業、洋菓子の不二家、白い恋人の石屋製菓、赤福や吉兆、さらにはミートホープなどなどである。法政大学院の坂本光司教授は「法律はもとより、社会的ルールを平気で破るこれらの企業の不祥事は、社会のものである企業を私物化した結果」という。多くの人が勘違いしているが、会社は経営者や株主のものではない。その大小にかかわらず、従業員やその家族、顧客や地域社会などその企業に直接かかわるすべての人々のものであるからだというのだ。伊那食品工業の経営理念の補足には「企業は企業のためにあるのではなく、企業で働く社員の幸せのためにある」とある。