ひょっとしたら その時 蚊の気持ちを理解できたかもしれない | 海の向うはお祭り騒ぎ

海の向うはお祭り騒ぎ

海外の日常になっている場面の中から日本人が見ると笑えるものを描きます

F氏は会社から指名され、上海で語学留学中の男性。30代。


深夜、F氏は、燃え盛る火と煙に巻かれている夢を見ていた。

苦しい、煙ばかりで息が出来ない、俺はこのまま死ぬのか?!

・・・目が覚めて、ガバッと身を起こしたら、現実の世界もまた

白い煙だらけだ。 炎は全く無い。火事では無いらしい。

なんだ、この煙は? ゴフォ、ゴフォ い、息が出来ないぃ と

F氏は部屋を飛び出した。

外の廊下でやっと息ができるようになったF氏は、扉の隙間から

もうもうと流れ出てくる白煙を眺め、原因に首をひねった。


「!」 F氏が就寝前に焚いた蚊取り線香が原因だった。日本で

蚊取り線香と言えば、日本の夏、金鳥の夏、という名コピーで

有名な大日本除虫菊株式会社製が約120億円の蚊取り線香市場の

シェア70%を持ち 市場を席捲している。 信頼のブランド、

「金鳥」と書かれた蚊取り線香をF氏は買ってきたのだが、偽物

だったのである。

もし目を覚まさなければ、翌朝F氏は、首を締められた跡もない、

謎の窒息死状態で発見されていた。多数の蚊の死体に囲まれた

状態で。