<74> 「外科医ポン・ダルヒ」第7話「医者のプライド」
第7章「誘因」それぞれの重荷 3
コーヒーを飲みながら駐車場まで歩いて ふと澄み渡った夜空を見上げた
北斗七星が縦に並ぶ レグレスやオレンジ色に輝くアルクトゥルス 青白く光るスピカたちが春の大曲線をつくっていた
施設に居た頃はひとりで夜空を仰ぎ 星座表で位置を調べた
あの人が買ってくれた宇宙儀の模型 星座を覚えては紙で貼ったその球体に思いを馳せた
ただひとつあの部屋から持って行ったもの・・・
あの日・・・本当は置いて行こうと 子ども心にもうここには戻れないと感じて すべて置いて行こうそう思っていた
だが・・・門に近づいた時 俺は夢中で部屋に戻って宇宙儀の模型だけをカバンに入れていた
今でもその青い球体を眺めると あの日のことがつい昨日のことのように思い出される
あの人は・・・きっと覚えてはいないだろう・・・
俺が思うよりもずっと・・・記憶は彼方になり苦い過去となっているに違いなかった・・・
外科と胸部外科の部長回診の日 反対から外科の集団が渡り廊下の明るい天窓の下にやって来た
ソ「論文の準備はいかがですか?」
ソ部長が挨拶代わりに先制攻撃をかけた
イ「ええ順調に進んでます 第7世代ACE阻害薬の臨床試験はいかがですか?」
あの人がジャブで返した
ソ「はい第3相まで終了しました 満足な結果が出ています わずかに副作用が出たのは200名中3名のみです」
イ「そうですか」
ソ「次の学会で公表後 市販開始の予定です 発表はわがアン先生がします ご期待ください それでは」
ソ部長はあの人にパンチをしかけておいてガードを固めたらしい 勝ち誇ったように外科の集団の間を縫って行った
ゴヌクが俺を長い間睨んでいた 怒り?俺に対する敵意を剥き出しにしているのが気になった・・・
休めとムンギョンに言ったが たった1日休んだだけでまた出勤している
「どうして休まなかったんだ?」
ム「スンミンの傍に昨日は一日いたの そしたらね オンマどうしてお仕事しないのって言うのよ 白衣は?って聞くの 逆に心配されて・・・まったく情けないったら・・・」
「そうか・・・」
スンミンは母親の変化に敏感になっているのかもしれない 白衣のムンギョンがいるほうがいいのだ
ム「そうだ! 貸してほしい論文があってCTの読影に関するもの持ってる?」
「ああ あるよ」
ム「すぐ見たいの 今から借りてもいい?」
俺たちはスタッフルームの廊下にゴヌクとあの人がいるのを見かけて立ち止まった
あの人が戸籍をはずせと怒鳴っていた ムンギョンの顔も見たくないと 感情的なその物言いに胸が痛んだ
ム「戻らなきゃ 論文は今度貸してもらうわ」
俺はムンギョンに何か言わなければ・・・そう思ったが すぐにどう言っていいか言葉に詰まった
あの人は どうしてあんな惨いことが言えるのか・・・
ゴヌクが俺の部屋の前に立っていた・・・
いったい・・・俺に何の用だ・・・


