『ガール』 奥田秀朗著 (赤 | bombernet☆

『ガール』 奥田秀朗著 (赤

顔で笑って心で泣いて。

バカバカバカバカあんたなんて大っ嫌い。


女は気づかれていないと思い

男は見透かしていると勘違い。


理解という名の拘束。

感情という名の自由。


今夜のコトノ葉 in LIFE は

奥田英朗さん『ガール』 より。



「女と仕事をするのがいやなら、

相撲協会にでも勤めるといいよ。

どこへ行っても女はいるからね。

女の子じゃない、女がね」


ガール


聖子、35歳。元クラスメイトの夫はいるが、子どもはいない。

大手不動産会社の開発局の課長に抜擢され、初めて部下を持つ。

戸惑いながらもなんとかやっていこうとする聖子の前に立ちはだかるのは、

年上の部下、今井。

仕事はできるのに、生意気な女に敵意を燃やし、ことあるごとに足を引っ張ろうとする。


あるとき、今井に任せていた大きなプロジェクトの客先での重要な会議で

今井が聖子に恥をかかせようとする。

ぷちっと何かが切れた聖子は、逆に今井に恥をかかせることに成功するが、

待っていたのはふてくされた今井の大仰な姿。


「ああ、それ、これまでの資料だから。北村に聞いたけど、おれ、外れるんでしょ」

今井が聖子のほうを見ることもなく、投げやりに言った。

「あーあ」わざとらしく欠伸をした。「さてと、暇になったから、別の仕事にでも取りかかるかな。

課長様の許可がいらない仕事となると・・・」

聖子の頭の中で、何かがプチンと切れた。「ねえ、今井さん」静かに言った。

「ゲームしようか。コイン・トスのゲーム」


驚く今井に、聖子は続ける。

「表か裏かを当てるの。それでね、負けたほうが会社を辞めるの。行くよ」

聖子は一方的にコインを投げ、パンプスで踏む。

「先に言っていいよ」と促す聖子。

「何言ってんだ」「ふざけるな」「なんの冗談だよ」と拒否する今井。

「は、や、く」

「いやだって言ってんだろう」

オフィスのすべての神経が、ふたりのやり取りに集中するのが伝わってくる。

これは、そんな空気が頂点に達した場面での、聖子の言葉だ。


そう、会社でのし上がっていく時には、女は女なのだ。

女の子、では決して得られない地位も経験も感情もある。


聖子は今井を見ていて、あるとき気がつく。

ああ、この男は、女房とホステスと部下しか女を知らない。


まったく、若い世代からみたら嘘みたいな話だけど、

現実に、まだまだこんな会社、社会は腐るほどある。

派閥だ出世だ、男だ女だ。

小せえ、と思う。


聖子の言葉はズンと心に落ちてきました。

「どこにいたって女はいるよ、女の子じゃない、女がね」


まったくその通り。



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