『あなたには帰る家がある』山本文緒著 (赤
本当はずっと前に言わなければならなかったんだ。
あの時、見過ごされていった言葉たち。
今ならはっきりと分かる。
ここに立ち
ここから歩み出すことの意味を。
今夜のコトノ葉 in LIFE は、
さようならを言いに来たのだ。お嫁に行く時に言いそびれた、さようならを。
夫の不貞、妻の自立。男の純粋、女の拙さ。
これはある、二組の夫婦を通した夫婦考、家族考かもしれません。
平凡な主婦だった真弓のセリフには、胸をギュッとわしづかみにするような切ない悲しみがあります。
登場人物の彼女や夫をはじめとして、彼らを取りまく人々のエゴの強さといったらありません。
でも自分勝手に何をしても決して満たされることがない。
ある時満たされた、と思っても次の瞬間には突き落とされている。
夫婦不和、夫の心移り、不誠実さに直面し、物語はクライマックスそして修羅場も迎え最高潮に!
そうしてほとほと愛想が尽きたにも関わらず、真弓は両親に、自分が家族を経済的にも支えていくことを決心したことを伝えに行くのです。
両親の反対を背中に感じながらも実家を後にする時初めて、真弓は自分に問いかけるのです。
いったい、何をしに来たのだろうと。
そして、気が付きこのセリフなのです。
タイトルから想像するよりずっと骨太なストーリーで読み応えがありました。
果たして彼女が本当に「さようなら」を告げたかったのは、生まれ育った家だったのでしょうか、いや、もしかしたら過去の自分自身だったのかもしれません。
明るくはないけれど、ブラックユーモアに富んでいる本著。
男とは、女とは。そして家族とは何なのか。
今相手がいる人もいない人も、再度考えてみるきっかけになるでしょう。
written by red