『泣かない女はいない』長嶋有著 (赤
淡い 淡い 片想い。
伝わらないのは、伝えないから?
今の自分に満足してないわけじゃない。
穏やかだと、思う。
でも惹かれている。
どうしようもなく、惹かれている。
今夜のコトノ葉 in LIFE は、
「私、泣いたことないんだ」

ボブ・マーリーの名盤 『NO WOMAN NO CRY』。
直訳は 「女 泣くな 女 泣くな」 (これもどうかと思うけど)。
カラオケで歌った樋川さんは題名の意味を聞かれて
『泣かない女はいない』 と答えます。
印象的なタイトルはつまり、ここからきています。
泣かない女はいない
ねぇ ほんとう?
泣けないのではなく、泣かない。
可能かどうか、好きか嫌いかではなく、
だってそれは、ただの事実だから。
「睦美はほとんど泣いた記憶がない。
自分が泣かないということに自覚的になったのはつい最近だ」
件のせりふを、睦美は同棲する恋人四郎にいきなりいってみる。
すると「すごいな」という答えが返ってくる。
「すごいかな」
すべてのやりとりは、お茶をふうふうさましてすすったり
PCに向かったりというほんとに些細な日常のやりとりに交じり込んでいく。
何となく平穏で、何となく幸せな。
そんな空気の中で、淡々と、ただ淡々と、生活や思考が流れていく。
気がついたら、ただ泣いたことがなかっただけ。
泣いたことがないって言えるって、やっぱりすごいと思います?
いや、むしろ私たちが日々当たり前だと思っていることのほうが、
実はそんなに当たり前じゃなかったり。
私だって、世間で常識だと思われている「こういうときはこういう風に感じるべきだよ」という空気に、
どこかしっくりこないときがあります。
人は、悲しいとかムカつくとか嬉しいとか楽しいとか、感情も学んでいく生き物なのではないかと、
たまに思うのです。そしてそれは当然ひとそれぞれの感じ方です。
主人公睦美も、泣いたことがないだけで、
いつか泣くのかどうかも想定はできるけど想像はできないはずです。
そしてラスト、そのときは訪れます。
恋愛も感情であるなら、それは自分で学んでいく、知っていくものなのかもしれません。
睦美も自分なりの感じ方で、人を好きになっていく。
さて、彼女の心にわきあがった感情は、どんなものだったのでしょう?
本当に、淡々としたストーリーの中に、読み取るものはやはりひとそれぞれ。
共感するか、切り捨てるか。
お気に召すまま、どうぞ思考の海へ。
written by red