PEは受けたくない! | マニュアル課 翻訳室

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フリーランスで翻訳と翻訳レビューをやっています。
以前はマニュアルのテクニカルライティングもやっていましたが、今では翻訳専業です。



IT翻訳といっても、さまざまな分野があり、また、対象の文書も、製品マニュアルだけではななく、さまざま。
最近、よく頂くお仕事が、販売促進などのマーケティング関連文書の翻訳。
マニュアルと違って、原文の英語のレベルも高めなので、当然難易度も高く、読み物としての完成度も求められる。いわゆる「読み物」なので、全新規。

この間、ポストエディット(PE)の仕事の依頼が来たが、ふたを開けてみてびっくり!なんと、このようなマーケティング関連の文書をポストエディットでという話だ。しかも、TMのマッチ率が80%くらいでも、セグメントが細かく分断されているものに対するマッチ率なので、まったく使えない。用語集もない。それでいて、機械翻訳(MT)された文章はどうかというと、用語の訳もめちゃくちゃ、構文解析もままならず、とても日本語とは呼べないレベル。これで、MT訳をどう利用しろっちゅうねん!

PEを受けるときの条件は、まず、MTが問題ないレベルであること。これが第一。次に、MTで訳されている用語が用語集に準拠していること。これも重要。この2点がクリアできれば、ペイします。もちろん、このようにきちんとしたMTを提供してくれるクライアントもいるので、誤解のないようにお願いします。一部のクライアントです。ひどいMTでPEしろという無理難題を突きつけてくるのは。

問題はお金。
こういう案件を全新規の普通の翻訳で受けるのならまったく問題ナシ。
でも、PEでこういう案件を受けるということは、通常翻訳と同じ手間がかかり、しかも難易度の高い翻訳を半額で受けるということ。

僕の断ったPE案件は、どんな人が受けるんだろう。
その人は生活していけるのか?心配だ。

もし、この形で通常翻訳と変わりない品質のものを納品するとどうなるか。
クライアントとしては、「なんだ、こんなに安く翻訳が上がるんなら、PEで十分。いや、PE最高!」となるのでは?

結果として、こういう案件は、めちゃくちゃ安い金額で受けられる翻訳者(翻訳会社も)のところに行き、それが常態化すると、IT翻訳市場で価格の下落が始まるのではないかと。

とうとうマーケティング関連など、ビジネス文書の翻訳にもPEが広がってきそうだ。どう考えても、この類の文書には向かないと思うが、コストダウンが至上命題の企業にとってはそうせざるを得ないのかも。

これは、翻訳者にとって、いや、翻訳会社にとっても危険な兆候。
何とか食い止めねば。

翻訳者のみなさん、あまりに安い翻訳やPEは自分の首を絞めることになりますよ。