トライアルに受かるために (3) | マニュアル課 翻訳室

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フリーランスで翻訳と翻訳レビューをやっています。
以前はマニュアルのテクニカルライティングもやっていましたが、今では翻訳専業です。

Readability/Clarity (わかりやすさ/明確さ)

いろんな意味に解釈できる日本語になっていないか (Ambiguity)


日本語の文章は、主語と述語の配置や修飾語句の位置、読点の使い方などによって意味が変わることがあります。文章は1つの解釈しかできないように書きましょう。


以下、ちょっと極端な例ですが考えてみてください(へんな例文で申し訳ありません)。


例) 私は砂浜でアイスコーヒーを飲みながらサッカーをしている少年たちを見た。


この例文の場合、いろんな場面を想像することができます。


1.少年たちがアイスコーヒーを片手にサッカーをしている様子
2. 「私」がアイスコーヒーを飲みながら、少年たちを見ている様子


まあ、文脈から推測できますね。答えは「2」ですね。でもこれが、「アイスコーヒー」ではなく「スポーツドリンク」だったらどうでしょう?そういうこともあるかもと思ってしまいますよね。


このように複数の意味にとれる訳文は、本当に「マズイ」です。


例文の場合は、次のように書き換えるだけで誤解はなくなります。


「私は砂浜でアイスコーヒーを飲みながら、サッカーをしている少年たちを見た」


これが、もし難しい内容の技術文書の翻訳だとしたら、どうなるでしょうか。契約関係の翻訳だったらどうでしょう。ちょっと怖いです。


日本語も英語も、実際に書くとなると本当に難しいです。ですから、訳文は見直す必要があるのです。

このように「複数の意味に解釈できる訳文」は、翻訳レビューでは減点対象になります。つまり、トライアルでも同様だと思います。


直訳すぎて不自然な日本語になっていないか (Unnatural Japanese)


学校で習った英文解釈のように、あるいは漢文のように返り読みして訳していないでしょうか。

前から訳すのが必ずしも良いわけではありません。また、後ろから訳すのが絶対にだめだというわけではありません。


ただし、後から訳すと、頭でっかちな(修飾語句が長い) 文になってしまうことがあります。こういう場合には、前から訳していったほうがいいと思います。


たとえば、 関係代名詞などを訳す場合がその典型です。関係代名詞節を学校で習った文法どおりに「~するところの~」のように後ろから訳すと、「~する」の部分(関係代名詞節)が異常に長くなってしまいますね。極端な例では、


「~は、~が~で(いつ)~を~に~したところの~を~します。」


のような訳文ができあがってしまうんです。

学校の英文解釈では正解をもらえるかもしれませんが、翻訳となると、受け入れられないでしょうね。


「日本語でこんな言い方するかな?」と常に考えてみるのが良いのではないでしょうか。
このあたりのことは、翻訳の参考書などに詳しく書かれていると思います。


この「不自然な日本語」は、「複数の意味に解釈できる訳文」に比べるとそれほど減点はされません。しかし、「自然なわかりやすい日本語」になっていると、翻訳者の評価は高くなります。つまり、トライアルでもポイントが高いのではないでしょうか。