前回はトライアルに受かるための心構えを説明しましたが、今回はそのうちの"Accuracy (正確さ)" を考えてみようとおもいます。
Accuracy (正確さ)
意味の追加/削除がないか (Addition/Omission)
原文の内容を勝手に変えてはいけません。翻訳者はライターではありません。あくまでも黒子に徹し、原文に忠実な訳を目指しましょう(逐語訳を推奨しているわけではありません)。万一どうしても追加したい情報があったとしたら、クライアントに問い合わせるべきでしょう。
これとは別に、自分では意識していなくても、原文の情報が抜けてしまうことがあります。いわゆる「翻訳もれ」です。レビューの仕事では、単語レベルで抜けのある訳文を何度も目にしています。納品前の見直しでは、原文と訳文を必ず出力してチェックしましょう。画面だけでチェックしているとどうしても抜けが出てしまいます。
・不用意な追加
原文にない情報が追加されていないか
・情報の不足
原文にある情報が削除 (省略) されていないか。
意味が異なっていないか (Meaning Incorrect)
いわゆる誤訳です。原文の意味を誤解したために、原文と異なる意味の訳文になっていないでしょうか。
ネイティブ/非ネイティブを問わず、わかりにくい英文を書くライターは必ずいます。いわゆる教科書的な英語であれば、意味をとりやすいですが、現実には、そういう英文ばかりではありません。また、特別難しくない英文でも、翻訳するとなると文の構造を読み誤ることがあります。たとえば、withやby、onなどの前置詞で構成される句などです。
取扱説明書などのマニュアルはテクニカルライターが執筆しているので、読みやすくわかりやすい英語になっていることが多いです。逆にホワイトペーパーやWebサイトの翻訳では苦労することもあります。では、原文の意味がわからないときに翻訳者はどうすべきでしょうか?
1. あきらめる(「わかりません」と謝る)
2. 想像して訳す
3. 調査して訳す
答えはおそらく「3」でしょう。技術面を調査することで、原文で伝えたいことがわかる可能性があります。さて、調査はどうしましょうか?私の場合は、類似の製品や技術の文献を日本語と英語で探して、同じような表現を探しています。または、翻訳中の文書に同じような表現が別の言葉で書かれていることもあります。
ただし、実際の作業では、調査は後回しにしています。わからない文章はとりあえず訳しておいて、見直しのときに調査して訳文を完成させます。わからないからといって、翻訳中に調査を始めると、時間があっというまに過ぎてしまいます。
人によってやり方はさまざまですが、私の場合はとりあえず訳文を仕上げます。どうしてもわからない場合は、クエリにその旨記載します。
原文をフィーリングで訳すのだけはやめましょう。英文の構造と意味を正確に理解できなければ翻訳は難しいです(自戒の念を込めて)。内容理解のためには、英文の構造を勉強し、いろいろな英文を読んでいくことが重要ですね。